第42話 J隊の人に夜襲に誘われる

 鬼ヶ島ダンジョンの攻略組が準備を終えて出発した。

 自分たちは時間を置いて補給物資をもって合流する予定だ。

 出来れば今日のうちに3つの拠点を落とし、明日には小学校を落としておきたいところ。


「おお流石に第一拠点は攻略済みか!」


 地図に示された場所に到着すると、拠点と書かれた建物は見るからに幼稚園といったジャングルジムや砂場。滑り台を擁した建物のある場所だった。

 まぁ攻略される前は砦らしい構造物が建っていたらしいけど。


「補給隊かい?」


 幼稚園の建物から鎧姿の男性が姿を現す。


「はい。攻略完了ということは第二に向かった方がいいですかね?」


「いや、第三でいいと思うよ。砦の戦力は予想より大分弱かったからね」


 鎧姿の男性は肩をすくめてそういう。まぁ相手はゴブリンとその上位種である。ギルドの声掛けでレイド戦に参加するような人間にはあまり脅威にはならないだろう。


「では予定通り小学校の攻略は明日と?」


「う~ん。このままだと、夜に一当てするんじゃないかな?夜襲される前に叩いとけ!みたいな?」


 ダンジョンの中には光源のないものもあるので、暗視ゴーグルなど手軽な値段で買えるほどには普及している。


「夜襲は鬼の専売ではないということですね」


 軽く頭を下げて、地図にある第三砦に向かうことにする。果たして第三砦は、おどろおどろしい岩の砦からコンクリート製の建物に変化していく真っ最中だった。


「ここまで簡単だとこのダンジョンは中級なのかな?」


 出現する敵がオーガキングなら、流石に初級ではなく中級以上だ。となると小学校、中学校の砦は激戦が予想される。


「おーい。後続の人か?」


 第三砦から声が掛かる。


「はい!食料の配達です!」


 疾風やチビ、ペンタントちゃんを召喚し、スペースに収納しているサンドイッチやおにぎり、仕出し弁当の入ったコンテナを出していく。

 ついでに熱々の豚汁の入った寸胴やお茶の入った薬缶も。


「食料の配布だ!並べ」


 砦から出て来た皮鎧の男性が音頭を取って、コンテナの食料を配り始める。


「テイマーの嬢ちゃん。ちょっといいか?」


 全員に弁当が行き渡ったころ、迷彩服に身を包んだ男性が声を掛けてくる。あ、この人、本職J隊の人だ。迷彩服の着こなしが自然である。


「あのコボルトとケット・シーとデビルは君のテイムモンスターだろ?」


「はい・・・」


「そうか。ひとつ提案があるのだが、緊急クエストを受けるつもりはないかい?」


 迷彩服の人はニッコリと笑う。


「えぇっと・・・詳しいお話を聞かせて貰っても?」


「あぁそうだね。立ち話しもなんだこちらに来てくれ」


 迷彩服の人に連れられ大人しく近くに設営されたテントにドナドナされる。

 テントの中には同じ迷彩服の人が七人ほどいて、こちらを見ている。

 はい。個人的に参加している人たちではありませんね。J隊の中の人として参加しています。


「初めまして。クランK田駐屯地隊の田中といいます」


 八人の中でも一番偉そうな人が小さく頭を下げる。


「テイマーやってますQドラ権といいます」


 挨拶を返す。


「はい。存じておりますよ。広島で期待のテイマーさん」


 田中さんは小さく笑う。


「まぁ、話題性のありそうな市内在住の人を可能な限り追っかけているだけですが・・・」


 田中さんは苦笑いを浮かべる。

 現役J隊の人ということはどちらかというとギルド側の人間だ。その辺の情報は集め易いのだろう。


「さて、今回お声を掛けさせて貰ったのは、小学校砦への夜襲に参加して欲しいのです」


 田中さんは前置きなく切り込んでくる。どうやら夜目が効く疾風とチビを斥候、その中継役として自分を雇いたいということだ。

 テイマーと使役モンスターの間では、少し離れていても意志疎通が可能である。

 例えドローンやネットで不自由なく意志疎通が出来る今の環境下であっても異なる監視手段は確保しておきたいのだろう。


「同行するだけで15万。ドロップは均等割でどうだろう?」


「あ、はい。引き受けさせていただきます」


 はい。長いモノには巻かれることにしています。

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