第136話日本にもあればいいのに・・・

 マカハドマのダンジョン第三階層は一面の砂浜だった。そのまま砂浜をごそごそと動いているのは体長がーメートルはあろう巨大な蟹。

 右の爪は大きく巨大なシオマネキと言っていいだろう。


「明らかに視線がこっちに来てるけど、襲って来ないな」


 紅桃が断言する。蟹の視線とか判るんだ。


「まぁいい。狩ろうか」


 紅桃は金棒を疾風が十字槍をチビが槍を構えて蟹に向かう。


「てぃ!」


 上段からゆっくりと金棒を振り下ろす紅桃。

 蟹はその大きな爪で受け止める。


「ほれ」


 受け止められているのに紅桃はぐいぐいと上から圧をかける。


「ほい!」


「にゃあ!」


 疾風とチビが槍で横から大爪の関節部分を衝く。

 元よりいざという時には自切する爪である。切り離されて地面に落ちる。


「そい!」


 そのまま紅桃の金棒はぐいぐいと押し込まれ、蟹の脳天に落ちる。


「グギ」


 べしゃりと地面に縫いつけられた蟹に疾風とチビとペンタントちゃんが襲い掛かる。


 ボフン。


 やがて蟹は魔石とバラバラのパーツになって地面に転がる。

 どうやらここの蟹はあますことなくドロップ品になるようだ。中味は食用に殻は防具の材料だね。


襲って来ないノンアクティブ集まって来ないリンクされない、ドロップ品は豊富。美味しい狩り場では?」


「五体ぐらい狩っておこう。今夜は蟹パーティーだ!」


 サーチアンドデストロイ!見つけるなり蟹を狩っていく。目標の五体は直ぐに狩りさらに五体を狩ることにする。


 次の第四階層は僅かな砂浜と大きな潮の湖でした。潮だと解ったのは水をなめたから。


「おぉ、ちゃんと海してる」


 ダンジョンドローンを少し沖に出て水中を観察すると、そこには日本近海でも見れる海中の風景が・・・

 なんか小魚が群れで泳いでたり甘藻が揺れていたりする。

こちらの海藻は昆布かな?あ、海栗だしかもサッカーボールぐらいの大きさがある。


「モンスターが・・・居ないな・・・」


 モニターを見ていた紅桃が唸るようにいう。

 ダンジョン中にモンスター以外の生物か・・・まぁイナゴも魔石もドロップも無かったということはモンスターでは無いのだろうから不思議ではないのだろう。まぁダンジョン中であって生態系が成立しているのは不思議だが。


「もっと水深が深くならないと出ないかもね」


「まぁそうかもな」


 いずれにしても漁具がない現状でこの階層での活動は難しい。次の階層への階段はすでに見つけているので先に進むことにする。


 第五階層は鬱蒼とした森だった。しかも地面がゆっくりと傾斜している。


「ここは山の幸ですね」


 ペンタントちゃんが足元に転がっている栗の毬を足で踏んづけながら指摘する。


「ボア系のモンスターに注意が必要か・・・」


 対峙してからの戦いなら兎も角、出会い頭だと危険だ。


「カイヤ。空からの警戒をお願い」


「はい」


 カイヤがふわりと空に飛び立つ。そして周囲を警戒しつつ山の幸を収穫する。

 流石ダンジョン。植生がバラバラで、いろんな果物が手に入る。


「ピィ!」


 果物を食べにきていた大型の鳥や立派な角の鹿も狩っていく。

 この階層に生息する鳥や鹿からも魔石は採れずそして死体も残った。ここの鳥と鹿もモンスターでは無いのだろう。

 しかしここまで動物が多いとは思わなかった。まぁ豊富な餌場と天敵の少ないという環境だからなんとかなるのだろう。


「こういうダンジョンもあるんだね・・・」


いつまで経っても敵対してくる生物が出てこない。


「まぁ、狼だか野犬っぽいのはいるんですけどね・・・」


 自分の言葉にペンタントちゃんが苦笑いする。そう。遠目にだけど犬っぽい動物は見たんだ。でも向こうもこっちに気付いたらしくあっという間に逃げて行った。


「日本のダンジョンにもこういうのがあれば有用なんだろうけどなぁ・・・」


 思わず本音が漏れる。ここまでダンジョンの難易度が低くければ、農業するより安定して食料自給率を上げられるだろう。

 日本にもあればいいのに・・・

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