第55話 暴君竜の杖
「ふう」
ボス部屋を前に一息付く。まあ初級ダンジョンの第20階層だ。多少の強化があってもスケルトンメイジがせいぜいだろう。ゆっくりと扉を開けて部屋の中に入る。
「ヨクキ・・・タ」
部屋の中央で佇んでいたのはホロいローブに身を包んだ眼窩に赤い光を灯す骸骨。
「ヤバいヤツ来た」
心ちゃんが息を呑む。
『リッチかな?』
コメント欄からあまり聞きたくないコメントが入る。
『さすがQドラ権。イレギュラーきたコレ』
『イレギュラーかどうか分からないだろう!』
擁護は嬉しいけど間違いなくイレギュラーです本当にありがとうございます。
「魔法詠唱は出来るだけ阻止するから一気にたたみかけて!」
そう言うと了承の声が返ってくる。自分はスペースからパチンコとスライム飴を取り出して狙いを付ける。
「わんぉ!」
回復ポーションを十文字槍の穂先に振り掛けた疾風が、まず先陣を切る。
「我ガ眷族ヨ我ガ声ニアイタッ!」
リッチが呪文を唱えているのを見て、パチンコに装填したスライム飴を射出する。
「でりゃあ!」
紅桃が拳に雷を纏わせてリッチに殴りかかる。
リッチには高い魔法耐性と高い物理耐性があるが、同時に両方の攻撃を叩き込むとダメージが通るのだ。
無論、聖属性や回復属性を付与したものが一番効果が高いが、その他の属性でも一定の効果がある。
「ていや!」
心ちゃんが魔法のステッキ・・・を模したメイスで殴りかかる。無論、メイスもといステッキは神々しい光を放っている。心ちゃんは今、太陽の化身なので攻撃に聖の属性が乗るのだ。
「にゃあ!」
チビが聖属性が乗っている聖騎士のスキル攻撃を放つ。確かジャッジメントという名前だ。
「キェ~呪文を唱エサセロ!」
「嫌なこったです!」
マジックキャスターを相手にするには呪文を封じてなんぼである。呪文が唱えたいなら前衛のタンクを揃えるべきだ。
いや、やっぱりいいです。今のままでいてください。
「ていや!」
濃縮した回復ポーションを投擲する。今回寺院系ダンジョンに潜るに当たって用意したアイテムで、最近生えてきた薬師中級スキルである濃縮で普通の回復ポーション10本を濃縮したものだ。
ただ、濃縮しても回復ポーションとしての効果は5本分とかなり回復ポーション的には残念な性能だが、不死者に対しては中級攻撃魔法並みの効果があったりする。
「ぎょえぇ~!」
リッチは黒い塵に返り、魔石と銀箱に変化する。ほぼ完封である。
『ほぼノーダメとか・・・』
『まぁ、全員が魔法や回復が使えるからな』
『紅桃姐さんがいるのは反則』
リスナーの一人が指摘するように紅桃というB級のオーガプリンセスというモンスターがいるというのはEランクの開拓者には過ぎた戦力なんだよね。ただ、少し前にFからEに上がったから当分ランクが上がることはないだろう。
例え前回の鬼ヶ島ダンジョンのレイドで貢献度を稼いだとしてもだ。
「鑑定!」
銀箱に鑑定をかける。罠は毒ガス。ちゃっちゃと解除して中身を確認する。
秀吉コイン2枚に回復ポーション3本。あと巨大生物の大腿骨のような形の杖。
『お、あの形状にあの大きさ。暴君竜の骨杖だ』
『骨杖?』
『鑑定しなくても判るの?』
『骨杖は見ただけでも判る。能力は毛が生えた程度だけどドロップ率が低くて見た目もいいからコレクターもある程度いるのよ』
なるほど・・・と頷きながら骨杖に鑑定をかける。
暴君竜の骨杖
力+5
知恵+5
恐怖耐性5%
杖なのに力に補正が入るのか・・・スペースに骨杖をしまい込む。高く売れるといいな。
「じゃあ先に進みますか」
次の階層を目指して進む。第20階層のボスにリッチが出たのが例外だったのか、最下層の第30階層のボス部屋にたどり着くまで魔法を行使するモンスターは出なかった。
そして第30階層のボス部屋の主も、体長3mぐらいのジャイアントスケルトンという暴君竜の骨杖を持った骨の巨人だった。・・・うん。杖なのに力の補正にプラスとか笑ってごめんなさい。
十分に鈍器として驚異でした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます