第108話 王都ダンジョンその4

 ダイミョウ。日本では公領や荘園領主から田んぼの経営や税の管理を任された階層のこと名主といい、やがてその規模が大きくなったモノを大名と呼ぶようになった。まぁこの世界では侍の上位種をそういうらしい。ちなみにレア種にミフネというモンスターもいるらしい。どちらかというと称号だよね?


「どりゃあ!」


 紅桃がダイミョウの刀を真剣白刃取りしているのが見える。

 どうやらそれで戦局が止っているらしい。


「横槍入れようか?」


 疾風が十字槍を振りながらこっちを見る。


「聞いてからねー」


「解った!」


 トテトテと紅桃の方に歩いて行き、攻撃して良い?と尋ねる。


「いいぞ!遠慮すんな!」


 紅桃が実にいい笑顔で許可する。


「わんぉ!」


 疾風が嬉々として十字槍を突き入れる。

 よし。自分も茶々を入れよう。毒のポーションをどばどばと注ぐ。

 この毒はスイセンの毒成分を精製したものだ。

 スイセンはどこにでもあるので皆さんも注意してね。


「ぐは。ゲホ」


 ダイミョウが容赦なく注がれる毒ポーションにえずくえずく。

 そして普通なら数時間かかる症状が即座に出る。


「ぐおぉ腹がぁ」


 身を捩るように悶えているダイミョウ。


「せいや!」


 紅桃が掴んでいた刀を捻るようにして奪い取る。

 腹を下したダイミョウに抵抗する力はなかった。


「無念!」


 それが最後の言葉だった。


 ボフン


 魔石と刀と金箱を残しダイミョウが消える。まずは金箱を鑑定。罠はトリガー式の転移。転移がぁ・・・やはり下手すると石の中に飛ばされたりするのだろうか?取り敢えず罠を解除。

 中味はスクロール三本と金貨20枚。兜に小刀。

 刀は鑑定すると胴太貫という名前が・・・いや、多分ダンジョン産胴太貫という意味だろう。

 日本でもダンジョン産の胴太貫は何振りも存在しているからね。

 兜は本多忠勝兜。そう鹿の角が生えたヤツだ。小刀は相模守政常。病気に耐性があるようです。嫌だな・・・この先、病気付与してくるモンスターがいるってことでしょ?

 ちなみにスクロールは侍、戦士、鍛治士。サブ職スキルが来ましたよ!


「兜は疾風に小刀はカイヤ。刀はシャーロッテさんでいいかな?」


「はぁい!あと侍のスクロールを所望しまーす」


 シャーロッテさんがそう希望するので、取り敢えず刀とスクロールを引き渡す。


「次の玄室に向かいましょう」


 と、歩きだす。第2の玄室はすぐに到着する。


「吶喊!」


 部屋の中に突入すると、巨大な三匹の蝙蝠と一人のタキシード姿の男性が・・・


「バンパイアかな?」


 いままで散々和風なモノを見て来ているので、違和感が半端ない。


「バンパイア!」


 シャーロッテさんも驚きの声を上げる。


「シャーロッテさんは蝙蝠を攻撃して!」


 バンパイアは物理攻撃を無効化する。銀か魔法の武器か魔法でしかダメージが与えられない。


「バンパイアは通常攻撃無効化がある!紅桃。武器を構えて付与するから!」


「おう!」


 紅桃が腰に吊っている金棒を構えてこちらにくる。取り敢えず雷属性を付与する。


「いくぜ!」


 金棒が、パチッと帯電しているようなエフェクトを発している。


「わんぉ!」


 疾風が十字槍で蝙蝠を攻撃する。


「ぴぃ!」


 カイヤがクナイを構えて蝙蝠に飛びかかる。

 ザクと羽を切り裂き早々に飛行能力を奪う。


「わふっ!」


 疾風が蝙蝠の顔に十字槍を突き入れる。


「インドラの指!」


 紅桃の指先から雷が発生し蝙蝠を貫く。雷の直撃を受けた蝙蝠が地面に落ちる。


「どっせい!」


 紅桃の金棒が蝙蝠の頭を潰す。パチッと電気が走り蝙蝠の体が震え動かなくなる。


 キィ!


 蝙蝠がストーンゴーレムに飛びかかる。まぁストーンゴーレムに物理攻撃は大幅減衰するんだけど・・・


「ま゛!」


 ストーンゴーレムは蝙蝠を掴んで地面に叩きつける。


 ズシッ


 ストーンゴーレムが蝙蝠を踏みつける。

 それで蝙蝠は動かなくなる。


「ヘィ!美里!ゴーレムに属性魔法を付与出来ない?」


 シャーロッテさんが思っても見ないことを提案してくる。


「へぇ?や、やって見るよ!」


 素早くストーンゴーレムの背後に回り、その腕に属性魔法を付与する。


「おぉ!帯電している!」


 パチッパチッとストーンゴーレムの体が帯電しているのが解る。


「おぅ!私も付与師になります!」


 シャーロッテさんが大喜びをする。確かにストーンゴーレムに付与師・・・凶悪なコンビになりそうではある。

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