第28話ハーフエンジェルの不思議

「闇よ集え!視界を閉ざせ。シャドー」


 ペンタントちゃんが呪文を唱えると、オークから視線が消える。というか瞳が消えて白眼である。

 闇魔法は闇とついているけど、大半は神経とかに影響を及ぼす魔法だ。

 ちなみに初級の闇魔法であるシャドーは、辺りが暗くなるのではなく、敵の視神経に作用して見えなくなる状態異常で、かけられると真っ暗になる。闇落ちするので闇魔法と呼ばれ、以降は精神異常系は総じて闇魔法と呼ばれるようになった。

 攻撃力は低いけど、広範囲に複数のモンスターを相手に出来るので重宝されている魔法でもある。

 アンデット系には効かないけどね。


「にゃあ!」


「わんぉ!」


 すかさず疾風とチビがオークの足を斬りつける。

 迎撃される心配がないなら更なる危険を取り除くために足を攻撃するのは間違ってない。ハズ。

 地に伏せたオークをタコ殴りにして、ペンタントちゃんに止めを刺させて魔石とオークの皮に変換する。


「おふっ」


 ペンタントちゃんが両手で自らを抱えて唸り声を上げる。


「大丈夫?」


「はひ。レベルが10になったことによる反動ががが」


 ペンタントちゃんがぷるぷると震える。


『もしかして!』


『なに?知っているのか雷電!?』


『誰が雷電やねん!』


『いいから話せ!』


『ハーフエンジェルはレベルが10を越える度にもう片方の親の種族に変化するとかしないとか』


『なんだって!』


 リスナーがコメト欄で漫才を始めてる・・・そして何だその設定?


「はう!」


 ペンタントちゃんが一際大きな声を上げ、ぺかーと光る。


「はぁはぁ」


 光が収まると、そこにはぷにっとした体型に黒い蝙蝠の翼にレオタードっぽい服を着たペンタントちゃんが・・・まじか・・・


「ハーフインプのペンタントです。今後ともよろしく」


『あぁ、天使が小悪魔に!』


『いい・・・』


『ロリコンどもめ・・・』


『バク○アードさま光臨!』


 リスナーがコメント欄で暴れ始める。いや、まあペンタントちゃん小悪魔でも可愛いよ?


「ペンタントちゃん。ハーフインプにチェンジして何か変わった?」


「見た目だけですね。あ、槍術が生えてますね」


 多分、小悪魔の象徴である三つ叉の槍・・・トライデントが使えるのだろう。


「ジョブは?魔法使いなの?」


「はい。そのままですね」


 もしかしたらと思ったけど・・・いや、知られてないだけかもしれないので、帰りに職業部屋に寄ってみよう。


 第20階層のボスはオークの上位種であるレギュラーオーク。体格が1.2倍位大きくて武器のほかに武具も装備している。

 大体数匹のオークを率いていて、ちょっとした集団戦を仕掛けてくる。

 ただ、魔法攻撃には激弱だ。


「ペンタントちゃんは全体にスリープ。疾風とチビはレジストしたヤツを優先して倒す。いいね?」


 三体は小さく首を縦に振る。


「Go!」


 ボス部屋の扉を開き、突撃する。部屋の中ぐらいの所で天井から三体のオークが降ってくる。


「ボスは?」


 ちらりと上を見たら、目の前のオークより1.5倍の大きさの鎧を纏ったオークが続けて降ってくる。レギュラーオークだ。


「ぶもっ!」


 レギュラーオークは巨大なメイスを肩に担いでこちらを睥睨してくる。


「眠れ眠れ瞳を閉じよ。スリープ!」


 ペンタントちゃんが杖を振るう。


「んごぉ」


 バタバタと三体のオークが崩れ落ちる。


『わぁ幼女強い』


「わんぉ!」


 疾風が腕を翳すと、火の球が発生しレギュラーオークに直撃する。


「にゃあ!」


 チビが腕を翳すと、尖った岩が生まれレギュラーオークに直撃する。


「オークは自分が始末するよ!」


 足音を殺しつつ眠り込んでいるオークに近寄り、首にショートソードを差し込む。


「我が敵に苦痛をもたらせ!ペイン」


 ペンタントちゃんが聖魔法ヒールの反転魔法を唱える。


「ぶもっ!」


 レギュラーオークは、ポロリとメイスを取り落とす。


「足を狙って!」


 いつものように足を攻撃するように指示する。相手に下段攻撃する手段が無い。防御力が低いなら足を攻撃するのは基本だよね。


「ぶもおぉ!」


 足を斬られ、レギュラーオークが崩れ落ちる。


「突け!」


 疾風とペンタントちゃんが遠巻きにレギュラーオークを突く!突く!突く!

 やがてレギュラーオークは黒い塵と魔石。銅の宝箱に姿を変える。

 宝箱の罠は警報。サクッと解除して中味を取り出す。


「おぉ・・・」


 出てきたのは鉄ではない金属性の胸当てと2枚の秀吉コイン。そしてヒールポーション。ヒールポーションは色が濃いのでレベル2以上のちょっとお高いやつだ。


「じゃあ今日はこれで引き上げますね」


『了解』


 ボス部屋から第1階層へと戻る部屋に入り第1階層まで戻る。


「ペンタントちゃん。帰る前に職業部屋で第二ジョブが習得出来ないか確認してみて?」


「はい・・・」


 ペンタントちゃんが職業部屋に入って行く。


「マスター・・・なんか魔法使い以外に戦士のジョブが取れるんですけど・・・」


 う~ん。やっぱりそうか・・・これは伝言板案件だな。

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