第52話 オーガジェネラル討伐

「よもや我が一人で戦うことになろうとはな」


 オーガジェネラルが嗤う。


「これでも喰らいなさい!」


 毒ポーションをオーガジェネラルの顔目掛けて投げる。


「ははっ!当たらなければどうってことない」


 流石赤い人だ。説得力が違う!


「なら当たるまで投げる!」


 次から次へと毒ポーションを投げるが、ヒョイヒョイ躱わす。


「疎かだぜ!」


 躱わした瞬間を狙って紅桃が拳をオーガジェネラルの顔面に入れる。


『お、いいパンチが入った!』


『鼻血ブーだ』


 コメント欄が大騒ぎだ。


「女のクセにいい拳だ!」


 ペッとオーガジェネラルは何かを吐き出す。折れた歯だ。

 まあ、棘つきメリケンサックだから威力あるよね。


「わんぉ!」


 疾風の十文字槍が鳩尾に刺さる。腹筋が緩んだスキを狙っていたようだ。


「えぃ!」


 ペンタントちゃんの右手の人差し指からダークライトニングが放たれる。


「喰らえ!」


 怯んだところに毒ポーションを投げつける。


 パシャン


 ポーション瓶が砕ける音がして、中身がオーガジェネラルの顔面に掛かる。


「うげぇ!」


 オーガジェネラルは口の中に入った毒ポーションのために激しくえずく。


「くそっ!毒か!舐めるなよ!アイアンレバー」


『うわぁ・・・鬼だけに肝臓は強いってか?』


「マジですか?」


『ダメージ入ったし、累積させればワンチャン!』


「いや、もう飲ませられないでしょ」


 ツッコミを入れる。そう。服用タイプの毒は胃に落ちてなんぼである。

 次に口に入っても吐き出されるだけだ。


『お、筋肉萎んだ!チャンス!』


 コメント欄が指摘するようにオーガジェネラルの体が小さくなっている。


「畳んでしまえ!」


 紅桃が一気に拳でラッシュをかける。

 なのでこっそりオーガジェネラルの背後に回る。


「急所攻撃!」


 オーガジェネラルの背後から肝臓目掛けてショートソードを突き立てる。

 そして、ぐりっとショートソードを捻る。


「ぐはっ!」


 ショートソードを引き抜くと同時に、傷口から血が吹き出し、オーガジェネラルは口から大量の血を吐く。

 テイムしたらどうなるかな?と思うが、ダンジョンのボスがテイム出来るという話は聞いた事がないのを思い出す。


「仕留めて!」


「わんぉ」


「にゃあ!」


「了解!」


「判った!」


 指示とともに四人の攻撃がオーガジェネラルを襲う。


「がはがは・・・見事なり!次に進め」


 オーガジェネラルはそのまま黒い塵となり、牙と魔石と白金の宝箱が残る。


『おお、ダンジョン攻略おめでとう!』


『おめでとう!』


『白金の宝箱とか初めて見た』


『何が出るかな?何が出るかな?』


 コメント欄が大騒ぎである。


「ええっと・・・鑑定」


 白金の宝箱を鑑定する。罠は・・・ランダムボックス!

 罠の解除に失敗すると複数の状態異常を付与してくる罠だ。

 薄い金属板を差し込み、箱に仕掛けられている罠のトリガーピンを作動させないように固定していく。


「よし・・・」


 罠を封じ込めたので、ゆっくりと宝箱の蓋を開ける。


「家康コインが10枚と、金棒。そして・・・これは鍵?」


 出てきたのはコインと武器とインテリアっぽいデザインの鍵。

 正直、あまりのしょぼさにがっかりだ。


『あらら意外にショボい?』


『鍵がな・・・どこで使うんだって話』


『宝物殿の鍵ならワンチャン!まぁそれらしい報告は聞いたことがないが』


 そう。県内はおろか国内でもなんなら世界中でも鍵で開きそうな扉というのは確認されていない。単なるアクセサリーだ。

 更に鍵に鑑定をかける。


「へぇ。ふうん。そうか・・・開けゴマ」


 おもむろに鍵を空中に差し出し時計回りに回す。


『おぉ?空中に扉。そして扉の奥に謎の空間が?』


 コメント欄がざわつく。


「この鍵は、異次元のドアを開く鍵という、まあ簡単にいうとスペースの魔法を行使するアイテムですね」


 空間の中に入って行く。広い・・・小学校の体育館ぐらいはありそうだった。


『Qドラ権、輸送業者待ったなし!』


 コメント欄からツッコミが入る。

 まぁ中規模の流通業とかの在庫は余裕で抱えられるだろね。


「まぁ、もう引き上げますか・・・」


 徐々に砦っぽい外見から鉄筋コンクリートの校舎っぽい外見に変化している建物から脱出する。

 山を下り、最前線だった小学校まで戻ってくる。


『おぉ随分残ってるねぇ』


 コメント欄が指摘するように、小学校には食糧や消耗品といった、このまま放棄しても構わないという物質がかなり残っている。


「持っていっていいのかな?」


『いいんじゃない?このままだと、リセット時にロストしている物質だし』


 コメント欄から持って行けという声がする。なので、可能な限り物資を回収していく。返却を求められたらそのときはその時だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る