第103話 政府からの依頼

 もう冬休みである。なので、今日は異世界で屋台を開きます。


「ありがとうございます」


 オクトが商品であるおにぎりとオークの味噌煮込み汁(とん汁)をトレイに入れてお客さんに渡し、頭を下げる。

 なお、屋台のメニューだが、最近はおにぎりと味噌汁を銀札1枚で販売して、そこそこの売り上げを上げている。

 おにぎりは海苔巻き、味噌焼き醤油焼きの三種類から。味噌汁は日替りで海鮮汁とオーク肉と野菜のごった煮汁を販売している。

 味噌焼きとオーク汁が人気である。


「ポーション三本くれ」


「銀貨31枚です」


「銀札で」


「はい銀貨19枚のお返しです」


 最近は回復ポーションの売れ行きがいい。まぁ、値段は他より少し高いが、効果はそれに見合うものだから当然である。あと他の店よりうちの回復ポーションは美味しい。これ重要。

 怪我を治すのだから少々不味くても我慢しろという回復ポーションが美味しい。だから多少高くてもうちのは売れるのだ。

 もちろん競合他社さんからの文句もない。だって他の店の回復ポーションよりは高いんだもの。ちなみに味がいいのはダンジョン産スライムの粘液のおかげである。

 だからこちらでは再現が出来ない。ほぼ独占である。


「なぁ店主。この回復ポーションは味がいいんだが、コツはあるのか?」


「さぁ?ポーションの作り方なんて他人に公開するようなものじゃありませんし、どう違うか?と言われても・・・」


 聞かれても教える訳ないでしょ?とかわす。

 回復ポーションのレシピ自体は技術者ギルドが公開している。それ以外の工夫は基本的には制作者による門外不出の技術だ。ちなみに技術者ギルドが公開しているレシピは回復草を乾燥させ乾煎りして清水で煮出して布で濾して濃縮することです。まぁ、単に草を濃縮するだけなので苦いのは当然ですね。


「弟子でもない人間に秘伝を教えるとでも?」


 にっこり笑うと聞いてきた人も肩を竦めた。


「貴殿がクリュウ殿で間違いないか?」


 なんか凄くビシッとした男の人が声をかけてくる。


「はい。自分がクリュウです」


 スキルのレベルアップの為に弄っていた木像をテーブルに置いて男の方をみる。どうみてもお役所関係の人です本当にありがとうございます。


「ふん・・・」


 なんだか値踏み去れてますね・・・


「お役所関係者さまが何の御用ですか?」


 そう言うと男の顔が怯む。いやダメでしょ?女の子の指摘くらいで怯んじゃ・・・使いっパシリですか?


「ん、ふん。仕事を依頼したい。王都の商業ギルドに書簡を二通」


「期限は?」


「4日で・・・物と報酬は商業ギルドで聞いてくれ」


 ほん・・・本当にお兄さん使いっパシリですか。


「解りましたすぐに向かいます」


 そう言ってオクトに店を任せると商業ギルドに向かう。


「神無月さん。仕事請け負いに来ました」


 窓口の神無月さんに挨拶する。


「クリュウさんいらっしゃい」


 ニコニコ笑いながら机の引き出しから二通の書簡を取り出す神無月さん。


「ギルドマスターは?」


「ようやく引き継ぎを終えて、今は引っ越しの準備とやらで有給をとっています」


「このまま有耶無耶にして逃げる気ですか・・・なら王都ギルドの方を締めますか・・・」


「え?あの」


「ギルド職員の不始末ですよ?上が説明して詫びの一件ですから、神無月さんに謝ってもらっても意味ないんですよ」


 作ったような笑顔で説明すると神無月さんもそれ以上は言うことも出来ない。そそくさと二通の書簡を差し出す。


「-通はギルド宛。一通は宛先不明・・・おそらく商業ギルドからの転送ですね」


「転送?」


「政府と商業ギルドの間で頻繁にやり取りをしているのでこの手の手紙のやり取りを誤魔化すことは容易なんです」


 あぁ、なるほど。ということは、手紙を狙っているー団がいるってことですね?


「自分である必要が・・・」


「無論、ギルドとしても航空郵便や早馬での配達も行っています。基本ですよね」


 まぁ当然といえば当然の手配である。


「結果として王宮に書簡が届けばいいと・・・」


「期日以内にですが」


「報酬は?」


「1年間のCランクでの納税免除」


 神無月さんは笑うけど、一年間は政府の監視下。守秘義務もあるぜってことじゃ無いですか!

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