第84話海よ!儂の海よ!

 冒険者ギルドでゴブリンの耳50個、オークの犬歯10本、角兎の角10個。雉のような鳥の尾羽10枚を納める。

 これでF級のノルマどころかЕ級への昇級条件を満たして自分と疾風、チビ、ペンタントちゃん、紅桃、カイヤはE級冒険者になった。

 ゴブリンの集積地コロニーを壊滅させることが出来るパーティーをいつまでもF級に留めるのは勿体ないと言うことだった。

 なお、剥ぎ取った証明部位とオークの皮は全部で銀札7枚になった。肉も売っていたら金貨1枚に届いていたよ。

 そして帰りにハカタヤに寄って屋台を受け取る。

 うん。和風の家屋に提灯に暖簾。木製の椅子が三脚・・・時代劇に出てくる屋台っぽい。


「よう。これでいいのかい?」


 厳つい体にキュートな熊頭のおっさんが店の奥から出てくる。


「ええバッチリです」


 ビシッと親指を立ておっさんに見せる。


「アキツの長屋風って聞いたときには変わったヤツが来たなと思ったが、意外と面白かったぜ?だが、いいのかい?女の子が引くには意外と重いぞ?」


 バンバンと屋台を叩きながらおっさんは尋ねる。


「ちょっと紅桃!こっち来て」


 少し離れていたところにいた紅桃がつかつかとやってくる。


「これ、大丈夫?」


「あぁ楽勝だぜ」


 紅桃は屋台を力を入れた風でもなく簡単に片手で引く。


「おぉ凄いな!」


 おっさんは目を丸くしていう。まあそれほどじゃないけどね!

 屋台を受け取り、しばらく練り歩いてから異次元の扉の中に仕舞う。



「海よ!儂の海よ♪大きなそのアイーンを♪」


 という訳でやって来ました海です。結構大きな港でちょっとびっくり。

 港で軽く現地の調査。しばらく進むと岩場になって、そこにタコ頭の人型モンスターや上半身が魚の人型モンスターが出るという。

 絶対ヤバい。日本では邪神とその下僕モシベ認定されてしまう・・・まっいいか。


「ぎょぎょ!」


「てぇめぇ魚〇んか!」


 紅桃が普段暇つぶしに普段見ているネット動画が何なのかが偲ばれる言葉を吐きながら魚の上半身に半ズボンを履いた半魚人に襲い掛かる。


「そい!」


 三つ叉の槍をかわし懐に潜り込み腹パン。くの字になった半魚人の頭を疾風が手加減してぶん殴ってダウンさせる。


「テイム!」


 あ、失敗した。

 即座に回復ポーションを投げ、疾風に合図を送る。


「わんぉ!」


 素早く槍を構え、半魚人の頭に振り下ろす。


 ポコッ


 かなりいい音がして半魚人が地面に突っ伏す。


「テイム!」


『半魚人が仲間になりたそうに見ている。』


 おぉ・・・こちらの世界でもテイムする手順は一緒かぁ!もちろんイエスを選択する。


 三つ叉の槍と回復ポーションを渡し、スペースに退避させる。よし!次はタコ人だな・・・


 ふらふらと海岸沿いに散策する。さすが異世界の海である。波打ち際なのに体長二メートル級の魚が飛び出してきてこちらを襲ってくる。

 打ち上げられたあとピチピチと砂浜を跳ねて海に帰ろうとしたので慌ててボコったよ。

 種類はシャチっぽいなにかとコチっぽいなにかとマグロっぽいなにか。


 一番怖かったのは水中から砲弾のように飛び込んできたマグロっぽい何か。

 まぁ、狙いが外れたマグロっぽい何かはそのまま砂地を跳ねて海とは真逆の方に飛んでいってボコる前に動かなくなったけどね!

 紅桃がエラ横の動脈と尾を切り落としたので清水精製で作った水で血抜き。脊髄の中枢神経を破壊し、えら、ひれ、内臓を取り除く。

 あまりにもスムーズに行うので紅桃に尋ねると、何か身体が勝手に動くという。恐らく解体スキルが生えたのだろう。

 ちなみにどの魚からも心臓付近から魔石が出てきた。魚の魔物かぁ・・・


「ギギッ」


 マグロっぽいなにかを解体し終えたころ、波打ち際からタコ頭の人間が上陸してくる。

 武器はなし。人の体にトカゲのような尻尾。腕と尻尾には鱗があるが、他は人間っぽい。というかタコ頭と言ったが、タコなのは頭だけだ。タコの足がメデューサの頭部の蛇のように蠢いているだけで顔はしっかり人間している。そしてなにより豊かな胸部装甲の持ち主である。


「助けて下さい。助けて下さい」


 そう呟くように叫んでタコ人間はバッタリと倒れてしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る