第26話 天使と悪魔と・・・

 原爆ドームダンジョンは、広島にある上級ダンジョンのひとつで、西日本でも数少ない天使とか悪魔とかによく似たモンスターが徘徊するダンジョンだ。

 基本的に階層の右半分に天使が、左半分に悪魔が陣取り、互いに陣取り合戦をしている。

 しかも天使同士、悪魔同士でも陣取り合戦をするというから少しややこしい。

 そして、彼らは人間とも積極的に交流を持ちたがる。人間との間で共闘関係になると、領地は失うが、領地よりも潤沢な魔力と力が手に入るからだ。(関係を解消したら領地は0からのやり直しだが、ランクは上がっているので領地の回復はし易いらしい。)


「契約者探しですか?」


「はい」


 原爆ドームダンジョンの冒険者ギルドの受付の人の問いにそう答える。

 ちなみに原爆ドームダンジョンの第1階層はモンスターが出没するが戦闘になることはない。

 人間との間で共闘関係を結ぶのを望む天使と悪魔がマッチングする場所だ。


「お嬢さんレベルとステータスは?」


 ゲートをくぐり抜けるとすぐに、4羽の白い羽を持つ天使らしき男性が声を掛けてくる。


「レベルは25。MPは50。テイマーのテイムレベルが8あって、スペースの提供出来ます。希望は純魔で、出来れば長期をお願いします」


「うん。レベルはちょっと足りないけど、MPとテイムレベルは十分だ。純魔のテリトリーは天使はNフィールド、悪魔はWフィールドだね。あぁ、新入りは外周でたむろっているよ」


「ありがとうございます」


 礼を言ってNフィールドいわゆる北の地域に向かって歩く。

 天使は白い鳥のような羽を背中に生やした人型の種族で、最初から聖属性とその他の属性の魔法を行使できる。

 このうち無属性の使い手は身体強化で武器を持って近接攻撃してくるのを武闘派。魔法攻撃をしてくるのを純魔派と呼び区別している。

 一方悪魔は背中に蝙蝠の羽と動物の角を生やし闇魔法とその他の属性の魔法を行使できる種族だ。

 ここで注意することが一つある。それは性格。

 基本は善と中立と悪だが、天使と悪魔はこれに秩序と混沌が加わる。

 ちなみに善と悪の区分だが、ダンジョンが出現してからは、他人が優先か自分が優先かになっている。汝の隣人を愛せよという奴だ。

 そして秩序と混沌は、法を守るか否かである。ここでいう法とは、刑法ではなく自分よりも上位者が定める規律だ。

 よくヤーさまは不法の輩とか言われるが、彼らにも守るべき規律はある。そして戦争にでもなれば人を殺しても法で裁かれる範囲は緩くなり善人と呼ばれる人間も人を殺すようになる。


「純魔のエリアにようこそ」


 タキシードを着た羊の角と蝙蝠の翼を持つ灰色の肌の女性がペコリと頭を下げる。

 ここの担当は悪魔な人のようだ。


「レベルは25。MPは50。テイマーのテイムレベルが8あって、スペースの提供出来ます」


 先ほどの天使の人に言ったことを繰り返す。


「希望の魔法は何かありますか?」


「特にありませんが、範囲攻撃持ちならいいですね」


「レベルに希望は?」


「気にしません」


「性格は?」


「秩序であれば」


「性別と種族に指定は?」


「性別は女性。種族は特に・・・」


 悪魔さんはふむと考え込む。


「13番から14番。23番。あと99番来なさい」


 彼女が額に指を当てて呟くと、Wフィールドから1人。Nフィールドから2人。そしてものすごくおどおどした幼女が1人やってくる。


「13番アルファ。クラスはエンジェル。得意は風魔法です」


 緑色の髪の少したれ目気味の女高生っぽい天使がペコリと頭を下げる。


「14番の楓と言う。クラスはエンジェル。火魔法の使い手だ」


 紅色のウルフカットの髪の女子中学生っぽい天使がウィンクをしながら自己紹介する。


「ラングレー。プチデビル。雷系の魔法が使える」


 烏頭に蝙蝠の羽を持つ女子高生っぽい悪魔がペコリと頭を下げる。


「あ、あのぉペンタントと言います。ハーフエンジェルで聖と闇魔法が使えますが、ペーペーです。ごめんなさい」


 白と黒のツートンカラ一のおかっぱ髪の幼女はビクビクしながら自己紹介する。


「ペンタントは、レア種族?」


「は、はい・・・ですので、成長も遅く・・・」


 モンスターだから自然発生じゃないの?って思ったけど、まぁ、そこを突っ込むのも野暮だなって思った。

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