第69話街に入る

 異世界探索のために魔石電動バギーを買いました。免許?免許は要らないです。異世界は公道ではないので・・・

 そして、それはJ隊の人たちも同じだったようで、J隊の拠点に行くと6台ほどのバギーが鎮座していました。


「道が見つかったって聞いたからね。君を置いて街に行くのも違うと思うし」


 田中さんはニヤリと笑う。まあ、そういう事にしておこう。異世界に残ったJ隊の人がこっそり街に行ったとしても確かめようがないもんね。


 最前線基地に物資を届け、そこからインップ村へ至る支道に異世界への扉を開き、そこから更に東へバギーを走らせること四時間。遠目に見ても堀と城門らしき建物が見えてくる。

 堀は石垣と漆喰の壁。そして瓦の屋根。石橋の向こうにある門には木の扉がありその上に櫓が鎮座している。見た目は完全に日本の城である。


「門の番人は・・・コボルトと人間ですね」


 双眼鏡で観察していた一ノ瀬さんが田中さんに報告する。


「門に入って行く人間は・・・この時間では少ないか」


 田中さんは腕時計を見る。時計は昼を過ぎている。


「バギーは異次元の扉に仕舞いましょう」


 自分の提案で、乗ってきたバギーを異次元に待避させる。


「これで最前線基地と地球には一瞬で戻れるというのは便利だよな」


 田中さんは唸る。自分もそう思う。

 さて、堀にかかる橋を通って壁の中に入って行く人間だが、人が6割。獣人が2割。エルフとドワーフぽいのが1割背の低い人間が1割と人種はかなり多様であった。

 服装は大半がズボンやスカートに襟付きシャツ。シャツの上に法被のようなものを着ていた。

 髪の色と髪型は色々で丁髷はなかった。日本的なのは建物だけのようだ。いや法被は辛うじて日本的かな?

 更に観察していると、門番に札のようなものを見せたりお金を払っている人を見かける。どうやら入場料のようなものが必要っぽい。


「行きますか」


 早速、橋を渡り門番の前に立つ。


「旅の者です。3人の入場料はいくらでしょうか?」


 田中さんが代表して門番さんに話しかける。


「1人銅貨50枚だよ」


 はい。と銀貨2枚渡す。コボルトの門番さんが銀貨を受け取り、三枚の木札と銅板5枚を返す。おそらく銅板1枚が銅貨10枚なのだろう。まあここで50枚の銅貨を返されも数えるのが大変よね・・・・おそらく銀貨の上に銀板というのもあるのだろう。


「ちなみにギルドとかあります?」


「あぁ。冒険者ギルドと商人ギルド。それと技術者ギルドがあるよ。それぞれ剣、金袋、ハンマーの看板が出ている。ギルドに所属する特典はギルドで聞いてくれ」


「ありがとうございます」


 田中さんは丁寧に礼をいう。


 門をくぐり抜けてまず待ち構えていたのは広い道路。道路の脇には瓦拭きの木造2階建ての建物が規則正しく並んで建っている。

 何というか、江戸時代にタイムスリップしたような街並みである。これで闊歩しているのが黒髪丁髷の着物姿なら江戸時代なのだけど、ザンハラ頭に赤や緑の色のカラフルな髪とくると違和感が酷い。


「すみません。冒険者ギルドはどこにありますか?」


 道行く茶虎のケット・シーに尋ねる。


「冒険者ギルドですか?それならあの背の高い建物がそうです」


 茶虎のケット・シーはある建物を指差す。なるほど・・・あれか。


「ありがとうございます」


 礼を言って指差された建物を目指す。

 建物は街の中心にある広場の一角にあり、建物の入口には剣を象った看板が掛かっている。


「ファンタジーっぽい・・・」


 そう田中さんが呟くぐらいその建物は異彩を放っていた。

 まず木造ではなく石造りの三階建て。漆喰が塗られているので遠目には違和感がなかったけど、近づくとだんだん違和感が出てくる。

 多分周りが屋根瓦の建物なのにこの建物が真四角の豆腐みたいな外見をしているからだろう。

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