第58話 またまたイレギュラー
最終16階層。階段を登るとすぐにボス部屋前の広間に出る。
「HPとMP・・・回復は済んでいる?」
心ちゃん、紅桃、チビ、疾風、ペンタントちゃんをぐるりと見回すと、全員が小さく頷く。
ボス部屋の扉を開けて中へと侵入する。
ボス部屋は一見すると武術系の道場のようで、板張りの床に武者鎧と刀が飾られた床の間。壁には神棚がしつらえてある。
「おぅ!道場」
紅桃が嬉しそうに手を叩く。
『へぇ・・・こんなボス部屋があるんだ』
コメント欄に感心したようなコメントが埋まる。
『ボスは四天王だっけ?』
『持国天、増長天、広目天、多聞天のいずれかだね。ヤバいのは多聞天こと毘沙門天』
毘沙門天・・・確か戦国時代の上杉謙信が信仰していた天部の仏神で夜叉や羅刹といった鬼神を従える武神でもある。
「よく来た。挑戦者よ」
少女のような声が響き、神棚の扉がゆっくりと開くと、光の塊が出現し、ゆっくりとボス部屋の中央に降り立つ。
『またQドラ権がイレギュラーを引いたな・・・』
『しかりしかり』
コメント欄が騒がしい。いやマジで勘弁して欲しいのだが・・・
しゃん
光の球が人型に人型が人に変化する。と、同時に表われたのが四天王で無いことは直ぐに判った。
仏像には珍しい痩身。そして三面六臂の異形・・・
『阿修羅王だ・・・』
『阿修羅・・・』
『八部衆バージョン』
コメント欄がいつも以上にざわつく。
『阿修羅光臨と聞いて!うわぁマジだ。興福寺ダンジョン以外にも出るんだ』
『ありがたや~』
いや、ありがたくないし!
「おぉ・・・本当に鬼姫がいますね」
阿修羅は微笑を浮かべる。
「いや、ダンジョンモンスターなので珍しく無いでしょ?」
とりあえず突っ込んでおく。
「オーガプリンセスがテイムされるのは天文学的な確率だし、ゴブリンから育成してもオーガプリンセスには進化しないよ」
阿修羅は苦笑いする。実に人間臭い。
「まぁ、四天に無理を言ったかいはありました。この我が身は分身体とは言え、あの鬼姫と戦える」
なんだか不穏な言い方をしている。
「さあ殺り合いましょう」
阿修羅は空中の穴から六本の細剣を取り出すと、手のそれぞれに装備する。
「あの・・・1対1をご所望でしょうか?」
一応聞いてみる。
「ははっ。ボクは一応は八部衆だからね。1対多は得意だし、六人ぐらいはハンデだよ」
実に爽やかな微笑みを浮かべて阿修羅は剣を構える。
「そうかい!」
スッと阿修羅の懐に入り込み、拳を繰り出す紅桃。
「おぉ失礼。力を見誤っていたようです」
カランと剣の一本を落として、阿修羅は紅桃の腕を掴んでいた。剣で払っても剣を折られたうえで腹に一撃を喰らうと判断したようです。
「ふむ」
バックステップで距離をおいた阿修羅は、再び空間に手を入れて何かを引き出す。
手には金属製の手甲が装備されており、簡単な防具となっている。
「これなら粉砕されることは無いでしょう」
そういう問題なのかな?
「わんぉ!」
「にゃあ!」
疾風が十文字槍をチビが剣を叩き込む。
「おっ!」
阿修羅は器用に剣を操って疾風の十文字槍とチビの剣をいなす。
「ダークライトニング!」
ペンタントちゃんの杖から漆黒の雷が放たれる。
「はっはっは!ボクは雷神帝釈天とタイマン張った事もあるのだよ?この程度の雷なんて何でもないね!」
手甲をした手をかざしてペンタントちゃんの攻撃を防ぐ阿修羅。
うわぁボス強い!
「このぉ!」
心ちゃんが間合いを詰めて杖で殴り掛かるのと同時に紅桃も間合いを詰めて殴り掛かる。
心ちゃんの攻撃はいなされるが、紅桃の拳は阿修羅の脇腹に突き刺さる。
「くはっ!」
僅かに阿修羅の身体が折れる。
「そこっ!」
自分はすかさず毒のポーションを阿修羅の顔目掛けて投げる。
「くぉ!」
口に入ったかは怪しいが、目には入ったらしい。目元を拭っている。
「なんだこれは!」
「旨いでしょ!」
再び毒ポーションを投擲する。
「ちいっ」
手をかざしてポーション瓶を弾こうとした阿修羅の脇に入って紅桃が拳を叩き込む。
「ぐはっ!」
阿修羅は血へどを吐く。
「所詮は仮初めの肉体ですね・・・耐久力が圧倒的に低い!」
阿修羅の泣き入りました。というか、興福寺ダンジョンでも暴れているじゃないんですか?まぁ神様スペックで暴れるなんて無双が許される訳が無いじゃないですか!
「興福寺ダンジョンの素体はもっと丈夫だぞ?」
知りませんよ。というか素体って・・・
「ボクのような
何か語りだした・・・
「並列思考の進化したやつですね」
はぁ・・・何かダンジョンの秘密みたいな事を言っているような気がしますが、阿修羅の言ったことの証明のしょうが・・・いや、ペンタントちゃんと同じか?
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