第21話 立ち位置が解りません

「ところで、あなたのお名前は?」

 雑談の体で話が切り出された。

「海野翡翠と言う事で、後は秘密です」

 両手のひとさし指でバッテンを作って苦笑して見せた。

 考えてみたらコレしか答えられないので、困ったものだ。

「うっ.....」

 何だか胸の辺りに手を当ててのたうち回ってるのが数人いた。

 逆流性食道炎? 胸焼けでも流行ってんのかな?

 アレきついんだよなあと、他人事として考える。

 と言うか考えてみたら、現状自分は何者だ?

 自分自身でよく解らないのだ、多分文化圏的に、世界線的に、時代的に余所者感がある。

 自分の常識的に世界男女比は5:5か体感的に6:4ぐらいだったはずだ。

 気持ち男が多いので、男女ペア作るとあぶれるし大事にされない。妖怪フェミモドキが男は死ねと言っていた図が思い浮かぶ。

 向こうの世界、ろくなもんじゃねえな?

 雑誌や新聞の見出しみたいに1:100とかは先ず無いので、理解の外だ。

 創作界隈では流行っていたが、それだけなので。

 考えてみたら身分証も戸籍も無さそうだ、保険証や免許証が入って居た筈の財布もそもそも持っていないのだし。

 となると財産はこの身、両の手足に頭の五体のみと。

 まあ、どうにかなるかなあ?

 内心で首を傾げた。

「どうしました?!」

 裸足の全力疾走でミサゴが現れた、少し上がった息遣いと、血行が良くなってピンク色に上気した肌、浴衣が走った影響か少し着崩れていて、色々きわどい事に成っていた。

 ほわぁと、胸元とか太ももの隠れている境目あたりに視線が吸い込まれる。

 裸はもう見たけど、着衣の崩れてるのも良いもんだよなあ。

 あほな事を考えた。

「ほらほら、崩れてます、まったくそそっかしいんだから」

 一拍遅れて、どこからともなく表れた仲居さんがミサゴに上着を被せる、ミサゴは自分の現状を確認して、少し赤くなった後に、後ろを向いて色々ごそごそ身なりを整え始めた。

 あまり恥じらいは無い様子だ。

 よし、おっけーと言う感じに身なりを整えたミサゴがくるっと振り向く。

 皆、生暖かい目で見ていたのは言うまでもない。

「えーっと、先ほどマスコミの方に色々写真撮影されまして、これを全国紙面で大公開して良いかと許可を求められて居ます。私、こういったものはとんと疎いので、ミサゴさんをとっさに呼んだ次第であります」

 簡潔に説明して、後はお願いしますと、ミサゴさん宛に頭を下げた。

「つと、お願いされるまでも無いですね、分かりました、呼んでくれてよかったです」

 少しあわあわした気配の後に、ミサゴがすっと目を細めた、そのままソファーの隣席に腰かける。

「で、何処の記者さんですか?」

 お仕事モードらしい、まじめな口調で交渉が始まった。


 追伸

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