第54話 問診と言うか診断

「はい、あーん」

 指示に従って口を開ける

「ん? 腫れてる? だから言わんこっちゃ無い」

 少し愚痴混じりの診断だった。



「本日はようこそいらっしゃいました、院長の海野トキと申します」

 やたらと丁寧に挨拶された。

「いえいえ、こちらこそお世話になってます」

 思わず丁寧に挨拶を返す。

「所で、海野って多いんですか?」

 思わず聞いてみた。

「ミサゴの祖母ですので」

「へ?」

 思わずポカンとした声が出た。

 若目に18と18で産んだとして36?

 いやいや、ミサゴはどう見ても成人済みぽいのでプラスの18?

 単純計算50越え?

 思わず混乱して頭がぐるぐるするが、歳を聞くのはマナー違反だろうと思い止まる。

 目の前の女性、トキさんは見た目年齢が30行くかどうかと言った所の妙齢の女性だ、髪は白いが、かなりの美人さんで有る。ヤタちゃん同様見た目詐欺か?

「あれ? ヤタちゃん?」

 あっちもお祖母ちゃん呼びだったはずだが……?

「アレは私の母です」

 思わず口をついて出た疑問に、特に考えるまでも無く答えが返ってきた。

「わぁ…………」

 思わず変な声が漏れた。

「うちのミサゴが世話に成ってます」

 ぺこりと頭を下げられる。

「いえいえこちらこそ、危うい所を助けられたので、感謝するのはこちらの方です」

 感謝こそすれ、世話に成ったと言われる筋合いではないと思う。

「ソレを含めても、男性でないと、出来ない事。貴方じゃないと、満たせない事です、とても大事なんですよ」

 難しめに言われているが、どうやらミサゴを相手にハッスルしたことを感謝されているらしい、まだまだ違和感ばっかりだ。

「そこまで大げさな事ですか?」

「ええ、だから、無理の無い範囲で、沢山相手してあげてください」

 推奨されてしまった。


「サンプルは……鼻水か痰でも出ますか? 出なかったらコレが鼻の奥に突っ込まれますよ?」

 嗜虐的な笑みで、シャキーンと構えられる綿棒……

 何故か脅し混じりに鼻をかまされた。

 卓上の顕微鏡に乗せらせたシャーレに、鼻水をサンプルとして乗せられる。

 顕微鏡の画像がモニターに写り、勝手にズームしつつ、移動して、焦点距離のピントを合わせて行く。

 最終的に、検索候補が幾つか表示された。リアルタイムで機械的に検索しているのだろうか?

「こっちのライノウイルス系? まあまあ安心枠ですね?」

「確かに割と安心枠ですね?」

 雑な所感に、思わず合わせる、確かにコロナやインフルエンザ、溶連菌よりは安心だ。

 と言うか、倍率幾つだこの顕微鏡?

 細菌通り越してウイルス見えるのはエグいと思うのだが、万倍クラスの電子顕微鏡の卓上機? 高そうだなあ。

「コレ、微妙に合う薬無いんで、痛み止め系ぐらいしか出ません、残念ですが諦めて下さい」

 鎮痛な面持ちで頭を下げられた。

 何だか大袈裟だ。

「なあに、かえって免疫になると?」

 おどけてみる。

「何もしなくても二、三日で治るとは思いますが、貴方の様な稀人だと、獲得免疫が効かず、多少悪くなる事が有るので、しばらくゆっくりお休み下さい」

「はい」

 今夜のハチクマさんの約束とかどうしようとか一瞬考える。

「ハチクマさん、我慢できますよね?」

 後ろに居たハチクマさんに飛び火した。

「はい!」

 一瞬でビシッと返事したのが分かった。

「あ、となるとミサゴと……」

 キスはうつるんじゃなかろうか?

「ミサゴとツブリに関しては、平気だと思われます、ライノ程度うつるような軟な免疫してませんから、ご安心を」

 それはやたらと自信に満ちていた。と言うか、やはり把握されているらしい、素通しって怖いね?

「あれ? それだったら?」

 ハチクマさんも平気なのでは?

「彼方の身体の負担です!」

「ひゃい!」

 ギロッと睨まれてしまって、思わず姿勢を伸ばす。

 美人に睨まれると独特の凄みを感じるなあと、変な方向で感心していた。

「要観察で、これ治り次第、予防接種は一通り受けてもらいますからね?」

 かなり本数多そうだった。


 帰った頃に、言われた通りに熱が出て、少し寝込むことに成った。


 追伸

 ライノウイルスは一般的に軽い風邪のウイルスです、38℃ぐらいの発熱で勝手に治る系の代表格。

 後述しますが、この世界ではあんまり感染しても発症するのが稀、それぐらい雑魚ですが、抗生物質が効きにくく、特効薬が無い、この時点で常在菌とか獲得免疫の世代とか色々違う翡翠に対しては特攻なので、お察しです。

 翡翠側で持ち込んでた菌やウイルスの場合、かなり面倒な事に成って居たので、医者としてはあるまじき事ですが、内心でかなりホッとしてます。

 ついでに、免疫サンプルとして大便とかも画面外で採取済みという事で。


 男が安定したハーレム形成してて、相手が居る場合、大抵は産める年齢に成った時点で産んでるので、そういう意味では若め。それを含めてもトキとヤタに関しては、ファンタジーですので。


 

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