第53話 訴えられないか怖いし(ツブリ視点)

 こんな感じに、この部屋はセキュリティバッチリで、万一の際には私が社会的に死ぬだけですので、出来れば信じてください。

 そんな感じの事を無駄に延々とアピールしていた。

 なんでこうなった。

 初回の必要最低限の事をサラッと説明したら、そのまま雰囲気バッチリにして、良い感じに搾り取れると思ったのだが、私の中の処女が無駄に日和ってしまい、延々と脱線事故を起こしていた。


 私か護衛の方に搾精のお手伝いを頼めると説明した際、明らかに翡翠さんが迷う素振りを見せていたのだが、今夜は私だけど、ちょっとだけ預けてあげると言う感じに、出番を譲られてしまった。

 大事な大事な、今夜の約束だと言うのに本当に良いのだろうか?

 思わず目線をそちらに向ける、まあ良いかと言う感じに優しい顔で頷かれた、すいません、感謝します、大事に絞らせていただきます。

 そんな感じにしみじみと黙礼した。

 で、こうして翡翠さんを案内して来て、緊張を解そうと深呼吸をする、大抵護衛の人もセットだったりもするのだが、信用して丸ごと預けてくれるらしい、信頼には答えなくてはいけないのでしっかりしたい。

 アレだけアピールして置いて、初仕事なのだが、我ながら酷い。

 いや、仕事なんだから、もっと淡々とスマートにだな?

 幸い、今回案内した翡翠さんは何だかんだ物珍しいのか、アレコレ説明を聞きつつ、キョロキョロ見て回っている、暫定的にセーフで!


「で、どうします? 脱ぎます?」

 翡翠さん側からそんな事を聞かれてしまった、男性に気を使われる何てと、一瞬自己嫌悪に陥るが、これ幸いと乗らせてもらおう。

「どうせだから脱いでくれませんか?」

 アレ?

 私の裸に需要有りました?

 もしかして脈あり?

 ワンチャンあったりします?

 ひゃっほい!

 そんな感じのノリノリでスパーンと脱ぎます。

 こちらの脱ぐのに合わせてか、翡翠さんも脱ぎます、枚数少ないのは風情が有りませんが、男性の裸って良いですよね?

「前準備、シャワーとウェットティッシュどっちが良いですか?」

 シャワーで混浴?

 思った以上の御立派様だった、コレは見惚れます。

 匂いとかも嗅いで良いんですか?

 触っても?

 いや、こんな時だから、良いんですよね?


 何だかんだ、無事搾り取り、隣の部屋直通の棚に、先程採種した精液を置き、こちら側を閉める。

 こうすると隣の部屋側から取り出せるようになるのだ。

 そして、お仕事終わりとしていたのだが、抱き締められてしまった。

 あ、良い匂い、力強いのに優しい、温かい。

 そんな事を感じる。

 でも、私の事をこのタイミング優しくしても意味ないんですけど、何で?

 もしかして好意とか在ります?

 貰ってくれたりします?

 搾り取った後は、一般的に男性は急激な虚脱感に襲われ、女性に興味を無くし、そっけない態度を取り、不快感を表す事が有るので、注意が必要だ。

 出す前は多少の性欲的なアレが有る訳なので、その際にはある程度優しい訳なのですが。

 直ぐに離れるか、極力刺激しない様にと念入りに言い含められて居ますが、これはどう言う流れで?

 私も経験豊富と行かないので、頭の中がぐるぐるする。

 キュンキュンと、お腹の中が疼いている。

 パンツも履いてないので、溢れたらアウトだ。

「もう一回出ますけど、どうします?」

 予想外の一言が告げられる、是非ともこのお腹で受け取りたい所ですが………

(いやいやいや! 無理させちゃ駄目なヤツですって!)

 内心全力で釣られそうになるが、必死に理性で押しとどめる。

 私が無理させて打ち止めになったとか、今夜の約束が不意に成ったりしたら先程の護衛の人に怒られます。

 先程説明した通り、監視カメラだらけですから、プライバシーは守られると言う建前は有っても、見る事は無理では無いのです、万一の際には本気で逃げ道が有りません。

 懲戒免職とか、減給されたら、男性を養う事もできませんし………

 稼げない女とか社会的地位最悪ですし。

 そんな感じに、万一の際にどうなるかの予想ばかり駆け巡る。

 こんなすっきりしない状態で迎え入れるなんて無理ですというか、翡翠さんに対して失礼すぎます。

 そんな進も地獄で止まるも地獄な状態で何ができるかと言うと。


 お手上げで言い訳の泣き言しか出て来なかったのだが。

 最早これまでと馬鹿正直に全部洗いざらい吐きました、正直な所は孕ませて欲しい位なのだけど、今この場所だけは駄目です、私が社会的に死にます、残念ですが先刻の護衛さんとの約束も在りますから、今だけは……

 最早血を吐くぐらいの気持ちで現状を説明する、仕事なんてどうでも良いじゃないか何て誘惑が頭をかすめるが、今回はこの方向です!

 思ったより真面目だったんだなあと、自分自身に感心するが。私の春はもう終わったと内心滂沱の涙を流していた。

 そんな訳で、自分の身体が引き裂かれるぐらいの感覚で、翡翠さんから離れます。

「今度は仕事抜きで逢いましょう?」

 その言葉は、まさかの救済だった。

「是非!」

 思わず詰め寄り、翡翠さんの手を取った。

 で、目線がちょっと下に行って居る事に気が付きました、胸? 私の胸何て普通ですから、面白くも無いと思いますけど……

 でも、先刻かなりじっくり揉んでくれましたし、もしかして需要有りますか?

「予約で取り置きしておきますから、取りに来てくださいね?」

 精一杯考えた結果の言葉だった。

「じゃあ……」

 ちゅ

 軽く唇を重ねられる、キス何て初めてです、これだけでいっちゃいそうですですけど、ここで気絶なんかしたらそれこそ勿体無いです。

「これで手付ですね?」

 口説き方、格好良すぎませんか?

「はい、傷物にされたので、ちゃんと貰ってくださいよ?」

 釣り合うように、必死に語彙を絞り出した、翡翠さん以外貰ってくれる宛は無いので、確実に専売予約だ。

 何だか笑みが漏れて、二人でクスクス笑った。

 やっても居ないのに、不思議と満足度が高い瞬間だった。




 追申

 ハチクマ「仕事無かったのは私も同じだし、気持ちは分かる、と言うか名前的に地域的に、腹違いの妹とか身内シリーズだし、多少は優しくしてあげたいかな? 流石にやり過ぎたら怒るけど」


 琥珀爺さんは鳥が好きで、名付けの際、ネタが切れた結果、その日に見た鳥の名前で適当に……

 爺さん「鳥の求愛行動、向こうの世界の男と同じノリだから何だか親近感がな?」

 そんな訳でヒロイン達に時々変な鳥の名前が有ります。コイツのせいです。


 この世界だと基本的に女が稼いで男を養うので、無職女の地位が、こっちの無職おっさんと変わりません。

 アレな男の所だと、稼ぎこそ女の価値に成るので、色々大変です。


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