第92話 女の子たちの余韻と反省会(彩羽視点)

「水分補給は忘れないでくださいよ?」 

「はーい」

 呆然と介抱してくれた仲居さん達を見送りつつ、まだちょっと怠さが残るので、もう一度転がる。

 先程から私を含む女達が揃って転がっているこの場所、脱衣所は床暖房も効いていて、熱くも無く寒くも無い、湯上りの汗とか何とかも、良い感じに乾いてかなり快適だが、いつまでも転がって居る訳にも行くまい。

「凄かったなあ」

 それでも、思わずうっとりと呟く、裸を見れた事、抱きしめられた事実と、その時の優しい手の感触、裸だから分かる、お互いにドキドキと響く心臓の音、思ったよりしっかり鍛えている感触。蕩けるような体温。

 天を突くかの如くガチガチのアレ。

 お腹の上に押し付けられてしまった。

 思わずこのまま入ってしまわないかと、むしろ入れ、いっその事迎え入れないと行けないと思うが、流石にそこまでは行かなかった。

 でも、それを踏まえても、コレだけで元は取れたぐらいの満足感だ、今は余韻に浸りたい。

 いそいそと服を着て出て行った面々も居るが、多分コレをおかずに色々捗るのだろう。


 しつこいようだが、基本的にこの場に居る面々、全員全裸である。視界の肌色率が無駄に高い。

 だが同性に興味は無いので基本的に触ったりしない。

 見た時に内心で値踏みしたり。一定以上のカッコいいとかカワイイが出ると興味も出るが、基本見るだけだ。

「ところで、あれ、割り込めると思います?」

 よっこいしょっと上半身だけ起き上がりつつ、誰あてとも無く呟いた。

「あの人が実質正妻の3番目です、どうみてもラブラブカップルってやつです」

 記者の娘が返してくれた。

「あの小さい娘が3番目かあ」

 当人が居る間に答え合わせは出来なかったので、その情報はありがたい。

「でっかい方は?」

「護衛兼正妻で2番目です、見ての通り基本的に一緒です」

「水入れるのは野暮だよね?」

 言わずもがなだとは思う。

「それこそ馬に蹴られません?」

 何処からともなく混ざってくる。

「でも、口説くの自体は禁止されてないと」

 更に声が増える。

「邪魔じゃ無い程度にアピールしつつ、隙が有ったら積極的に口説けと?」

「難しくない?」

「正直未知の領域だよねえ」

 そもそも口説く機会が無い。

「でも、口説く相手が居る時点で幸せだよね」

「うんうん」

 男の子の数自体が少ない上、惚れる価値があるというか、惚れて良い許可何てもらった試しはない。

「そもそも男の子っていう存在自体が未知だからねえ」

 都市部なら唐突に見つけて、あれ? って感じに思わずしげしげ観ていたら痴女として訴えられた何てネタも笑い話では無い。

 良くニュースで全国単位の晒し者にされる。

「都市伝説みたいなもんしか無いよ」


 一言毎に、次々とレスポンスが返ってくる、流石元は同じ穴のムジナ、掲示板の民、思考回路と思考速度が速くて、話が早い。

 生産的かはさておいて。


「んで、正妻で仕送り通い妻とファンクラブ有りってのも聴こえたよね?」

 何記気なく言われた一言で、ざわっと一瞬空気が変わった。

 小さく従業員ルートも有りみたいな事も聞こえた気もするが、多分伏せたな?

 にわかに高度な情報戦と言うやつの体を作り始めた。

「どうだろ、仕送りの金額とか、具体的に聞かないと分からないし」

 妻というモノは旦那様を養ってナンボであるのだ。

「でも、直で聞くのは野暮扱いじゃ無い?」

 そんな一言に、不承不承、難しい顔で頷く面々。

 ロマンスを求めたい乙女心としては、あくまで情で繋がりたい、愛とか恋とかそんな形の無い心が欲しい。お金なんかは二の次であって欲しい。

 そんな処女臭い内心も有るのだが、ここに居るのは自腹切って来た社会人の群れだ、お金のアレコレは無視出来るものでも有るまい。

「でも、情報…………」

「口止めされちゃったね?」

「ネット上で聞くわけにも行かないし」

「良いぞとしか言えないし」

 そもそも前代未聞な、女の子達に優しいあの人なんて、都市伝説のUMAも良い所だ、ネットの情報でアレコレ出来る物でも有るまい。

「先代の琥珀様は?」

「優しかった、絶対的な紳士、あれが正義しか見つからんよ」

 そもそもかなーり前の偉人なのだ、没年から遡って20年以上前の逸話何てボヤけて嘘か本当か分からない。

 基本的に口数少ないけど、いつもニコニコ笑って、ハグとかで出迎えてくれたとか、お風呂で一緒になると、優しく洗ってくれたとか、来るもの拒まず的に通い妻はめっちゃ増えてたとか、死亡時に国葬LVの大騒ぎになったとか、外国からも山ほどVIP来たとか、そんな特集は組まれても具体的な金額何て出るはずもない。

 お金の話は坊主のお気持ち見たいに闇の中だ。

「だけど、出来る事ならあの人の子種で、だよね?」

 この場に居る面々の本心を呟く。

「むしろあの人以外って何?」

「謎スポイト」

 たった一言で身も蓋も無い現実が襲って来た。聞くだけで悲しく成る。

 補助金の負担金が一番安いルートのアレだ、当たる日に入れてねと言う。

 人工授精より母体の負担は少ないけど、当然だが率は良くない。

「正直言って問題外」

 ロマンスとか一切無い。

「だよねえ」

 一同うんうんと頷く。

 心は一つだった。

 出来れば正妻か通い妻ルートであろうと認知して貰って、親子共々仲良く幸せな時間とか過ごしたい。

 基本的に人工授精組、男親は存在しないものなのだ。

 無いからこそ憧ればかり募る。

 きっと良いものなのだ。

 きっとあの人は今まで見てきたアレ達とは違うのだ。



 よし、死に場所はココと見つけたり、そんな訳で、さっきみたいにファーストペンギンして死んで見よう、死してこそ浮かぶ瀬も有るよね?

 一人でグッと覚悟を決めた。


 追申

 オジロとハクトのイメージ画像を近況に載せてあります、よかったら見ていってください。

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