第91話 嫁会議

「そんな訳で、一同作戦会議」

 会議室扱いのホールで、私が一先ずそんな事を言う。

「わーどんどんぱふぱふー」

 一先ず乗ってみるスズメ姉。相変わらずノリが良い。

 今部屋に居るのは私とスズメ姉とヤタ御祖母ちゃんと、ハチクマ姉である、ハチクマ姉はあんまり話さないけど、今は流石に手持無沙汰と言う事で巻き込んだ。

「と言うか、あ奴に作戦会議は要らんと思うぞ?」

 ヤタおばあちゃんが首を傾げる。

「そう?」

「極論、寝てる所に、酒でも飲ませて勢いづかせたあ奴放り込むだけで事足りるしな?」

「えー」

「有効射程、見た目儂から、自分の年齢+10とか言っとったし、自称30歳じゃから40まで行けるんじゃろ?」

 そういや、翡翠さんは見た目10代だけど、中身は自称30歳だっけ、見た目は子供だけど、話してみると独特の包容力とか、不思議と大人を感じる。

「んで、この間、トキの奴と露天風呂で一緒に呑んでる時に出くわして、トキの奴に抱き着かれたが、嫌がらんかったし、何なら喜んでおっ立ててたから、あやつで行けるなら大体いけるじゃろ?」

「えーっと」

 思わず頭を抱える。

「見た目がどうの以前に、トキおばあちゃんは美人枠だから!」

 流石にツッコミを入れる、あの人の見た目年齢は30代とか言わない、20代で通じるんだから。 老け方が特殊なボルバキア適合者と一緒にしないでほしい。

「そこらは、上限確認に取り合えずツグミ辺り放り込むとして、ハチクマ行けたんだから、ハクトとオジロと、トビ辺り呼んでもよかろう?」

「あの3人かあ......」

 思わず遠い目をする、ハチクマ姉の上の世代だ、正直あまり絡みが無いのだが、私としてもちょっと怖い枠だ、だが子供には不思議と人気らしく、基地解放のお祭りの時なんかの度に、知らない子供抱えている画像が近況報告に送られて来る。

 可愛い系ではなく、バリバリに格好良い系だ。

 なお、同性にモテるので、そのままなし崩し的に同性婚している組だ。嫁さんいっぱい居るらしい。

「と言うか、そのうち帰るって連絡あったトビ姉は兎も角、ハクト姉とオジロ姉はこっち来れるの?」

 テーマパークのなんまげの中身やってるトビ姉は予約した以上帰って来るだろうが、ハクト姉とオジロ姉は自衛隊の北海道第7師団の幹部で、北方の守りの要とか言われてた気がする、実際、しばらく帰ってきて居ない。

 余りニュースに成らないのだが、年がら年中毎日のように赤い白熊連中が国境侵犯して来てスクランブルかかるモノだから、あの辺は常にピリピリしているらしい。

 私達が平和に生きて居られるのも姉達のおかげであるので、悪く言う人はいない。

 根回しと戦力が足りなかったウクライナがどんな目に有ったのかは歴史が証明しているのだ。

 なお、最終的にロシアが焦れて核を使用した結果、今までの優勢は無かった事に成る位、各国からぼこぼこの袋にされ、分割され、日ノ本にとっては若干不本意な流れだが北方領土と樺太が返って来た、その関係上、防衛線もかなり広がってしまい、かなり面倒な事に成ってしまっているらしい。

 で、どさくさ紛れで微妙に膨らんだ敵国として例の赤い服着た黄色い白熊がチョッカイかけてきているわけだ。

 ハクト姉とオジロ姉には頑張っていただきたい。

 そんな訳で、翡翠さんから見て大丈夫だったら労ってあげて欲しい所である。

「連絡入れたら、張り切っとったぞ?」

「………防衛線担当の二人が張り切ってるって………?」

 何だか嫌な予感がするのだが。

 一緒に居たハチクマ姉とスズメ姉が処置無しと言う感じに頭を抱えた。


 ピロリロリン♪ ピロリロリン♪


 唐突に、それぞれの携帯端末が鳴った。

『本日、北方領土北端部、占守島上空で国境線を侵犯した、所属不明機が撃墜されました』

 ぶっ

 端末に表示された文字列に思わず吹き出す。

「絶対あの二人だと思う」

 スズメ姉が思わずと言った様子で呟く。

 ハチクマ姉も、同感と言った感じに頷いた。



 ???

「毎日毎日飽きもせずに来やがって!」

「おめえらをいい加減ボコって休暇を満喫してやる!」

 毎日続くスクランブルに思わず叫んだ所、無線の向こうで同調して来る聞き慣れた声が響いた。

「「よし、やるか」」

 以心伝心と声が被る、もはや心は一つだった。

「止めなくていいの?」

「無理」

「止められるはずないじゃん」

 部下達の絶望した様子の声は聞こえているが、聞こえる訳にはいかんのだ。


 そんな訳で、ちょっとだけやらかした。

 3機編隊を組んでいたので、対空砲威嚇の振りでそのまま全部落とした次第である。

 この時代、機体はAI制御のラジコンドローンが大半でパイロットはダミー人形なので、戦闘機を落としても人死にはほぼ出ないので安心だ。

 反省文と始末書と、頭を冷やせと有給消化を勧められたので、ここぞとばかりに休んでやろう。

 さあて、例のミサゴの旦那はどんな顔してるかなあと。


 追申

 北海ハクト(きたうみはくと)30歳

 ハクトウワシをイメージ

 200㎝の長身の自衛官、幹部、筋肉もしっかりついた美人で格好良い女、白髪頭がトレードマーク。

 指揮官ポジション、性格は豪放磊落。

 オンオフはっきりしていて、子供は大好きと言うか、自分より小さい物は等しく全部可愛いと認識する、にっこり笑って問答無用で抱き上げて高い高いとするのだが、苦手な者には恐怖しか感じず、対して適正足りの者にとっては一種の遊具的な何か扱いである。


 北海オジロ(きたうみおじろ)28歳

 オジロワシをイメージ

 180㎝の長身の自衛官、コチラも幹部だけどハクトより一段下。

 コチラもしっかり鍛えた美人で格好良い女、頭髪は黒いが、ひと総だけの白髪がトレードマーク。

 パイロット、現場ポジション。若干ハクトに振り回され気味の苦労人。

 どうせだからとハチクマも巻き込もうとスカウト仕込んだけど、お試し期間の初期訓練の後の引き抜き前に護衛官に逃げられてしまったので若干残念である。


 この世界の同性婚、恋愛感情と言うより、単なる生活共同体になりがち。


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