第82話 続作戦会議、主張と言うか思想の強いアクセサリー

「ハチクマさんの指輪どうしましょう?」

「ん?」

 ヤタちゃんが金庫の引き出しからアクセサリーが整然と並んだ箱を取り出した。

「えーっと、あいつのサイズはコレで、多分、指輪着けっ放しだと石なら一発で割るか、金属なら曲げるからーっと」

 何だか物騒な事を言いながら、適当なアクセサリーを軽い調子で放り投げるような気安さで渡してくる。

 今度は翡翠の腕輪だった。

「ん? 力かけると割れるし、いざと言うとき邪魔じゃから、あ奴の仕事を考えると、いまいちか?」

 ヤタちゃんが一人で首を傾げる。つられて首を傾げてみる。

「そうみると、こっちか?」

 今度は普通の、翡翠の指輪で。

「で、こっちがセットじゃな?」

 白い金属製の細い鎖だった。

「これをこうで、こうじゃろ?」

 指輪のわっかに鎖を通して、セットにして、首にかけるしぐさをする。

「確かにその辺ですね?」

 常につけると言うのは確かに負担が大きそうだ。

「強気で手離すつもりないのなら、こっちでも良いがな?」

 今度は小さい箱だった、開けてみると、飾り気は少ないが、別の意味で自己主張が強いブツが現れた。

「あ奴、穴開けてないからな? 開けるまでセットじゃぞ?」

 小さく透明感のある翡翠が付いたピアスだった。 着けるときの痛みとか想像して、思わず顔をしかめる。

「惚れた相手がこれを着けてくれと言うのは、女としては割とロマンチックなもんじゃぞ?」

 にやにやと笑みを浮かべている、マウント取れたのが嬉しいらしい。

「痛いのは余り好きじゃないので、こっちで」

 素直に指輪と鎖にしておこう。

「まあ、ハチクマには十分じゃろ?」


「で、儂のはこっちな?」

 にやにやとした笑みのまま、先ほどのピアスを指さしてきた。

 思わず顔を引きつらせる。

「誰でもじゃ無いからな? お主じゃから、重く感じてくれるのなら、万々歳って奴じゃ」

 口元は笑っているが、目が真剣な事に気が付いた。

「お主が、今のお主である限りはな? 良い枷じゃろ?」

 どうやら、逃げ場は無い様子だった。 思わず喉が渇いて、つばを飲み込んだ。


「ま、今すぐじゃ酷じゃろうから、又あとでな?」

 今の無しでは無かったので、本気なのだろう。


「と言うか、お値段とか色々どんな感じです?」

「お主のおかげで売り上げ増えた分を、色々計算して、給料換算するふりをしておこずかいを渡すから、コレで相殺してく感じじゃな? 因みにその値札はそのまんまの意味じゃ」

 何と言うか、値札には何万単位の可愛くないお値段が表示されていた。

「こわ………」

「しょうがないじゃろう、ここは温泉地で泉質もかなり強いから、安物じゃ腐る」

「そりゃそうですね」

「ココに居る限り衣食住に色も付いて、三食昼寝付きで養っておいてやるから、生活保護、保証と福利厚生的にはご安心じゃぞ?」

「わーい」

 笑っておこう。

「何なら契約書と言いたい所じゃが、法的にはぶっちゃけ、儂らの旦那が一緒に住んでて、時々客と仲良くなって良い事してる程度の扱いじゃからな? 仕事と言うと棘が出る」

「真っ黒じゃ無いですか」

 苦笑を浮かべつつツッコミを入れるしかなかった。


 少し後

「じゃあ、目を閉じてください、でもってお手を拝借」

 ハチクマさんがとても落ち着かない様子で目を閉じつつ左手を出してくれたので、素直に左手薬指に付けつつ。

「で、こっちも」

 手を引いて姿勢を落として貰い、鎖を首元にかける。

 身長的に何だか子供がフェイスハガーしてるみたいな図に成って居る気がするが。周囲からはおおむね好意的な視線が注がれていた。

 何だかぎこちない調子で付け終わり。

 ホッと離れると、周囲から拍手と歓声が巻き起こり。

「ありがとうございます、一生付けてますね?」

 ハチクマさんは、何と言うか、目の端に涙を浮かべつつ、口数少なく、しみじみと喜んでくれた。

「私のほう鎖が無かったんで、要求します」

 おまけで、ちゃっかりミサゴに追加請求された。


 後日

「ん……」

 パチン

 二人でその器具、ピアッサーを包み込むように握りしめて穴をあけた。

 痛そうではあるのだが、苦痛に歪むその表情は、何処か恍惚として見えた。


 更に後日

「あー! ずるい! 私にも開けて!」

 気が付いたミサゴが、思ったより軽い勢いで食いついてきたのは、笑いどころなのだろうか? と言うか、嫁一同と言うか、見ている面々が揃って頷くのは止めてほしい、圧がすごいから。




 追伸と言うか、長い蛇足

 痛い系のプレイは同意の元で行いましょう。他人にピアス穴開けると医療行為扱いで犯罪なので以下略。フィクションですので!

 ハチクマさんのアクセサリー選ぶだけの話だったはずなのですが、ヤタちゃんが思ったよりじっとりしました。

 ヤタちゃんとミサゴ、ほぼ勝手にしゃべった類。

 なお、ヤタちゃんは表向き、打算込みで、こんな小さい傷で一生縛れるなら安いとか思ってる類。上機嫌なのは否定しない。

 ミサゴは元から自分で開けてるので、言うほど重くない。

 どうせいざと言う時は外して半年もすれば跡形もなく塞がるしと言う、開けられる当人はあっさりしたモノ、開ける方の翡翠に変なトラウマ植え付けておいて軽いもんである。

 めちゃくちゃ重く感じたのは翡翠が人を傷つけられない、お人よしが生来の気質であるから。

 そして、そうじゃないと効果が薄いので、この翡翠じゃ無かったら、ヤタちゃんはコレをやらなかったと思われます。

 ピアス出した時に無駄に顔をしかめたので、これをやればこいつは一生覚えてるって確信したので、やらかした。

 そして、ミサゴはこの中では末っ子であるので、人に頼ることに躊躇が有りません。

 書いてて思う、女の子って怖いなあと。

 因みに、鎖やら何やら、下手なのだと温泉で腐食したり、真っ黒に成ったり変色するので、金属装飾は24金か純プラチナ系。安もんじゃ無いです。

 と言うか、追申長いからコレ視点変えると一話書ける気がするけど、くどいですかね?


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