第83話 番外 ツバメのある日(一日目、海岸線の道路にて)
この世界では腹違いの姉妹と言うのは結構多い。1/100の男女比的に、同じ父親の子供が100人居てもおかしくない世界なので、それは当然なのだが。
基本的に遺伝子鑑定で後からと言うのはあまり重視させず、最初から知って居ると言うのが大事だ、政府から妊娠出産推奨の援助で使用される精子は基本的に、近親婚を防ぎ、遺伝的多様性を残すためと言う名目のもとに目隠しランダムで使用される、当然生産者ラベルも謎だ。数は少ないが外国人系の精子も使用されて要ると言う話もあるので、時々日本人離れした容姿の娘も居たりする。
だから、腹違いの云々は、男親が直々に付けたと言う保証と、確かに自分の子だと認めた時にだけ発生する。
こうなると珍しい、一般的にハーレム的な狭い世界で発生するので姉妹仲がべったりくっついてくる。
で、私達の遺伝的な父親は海野琥珀と呼ばれる一人の男性だ、直接種付けして認知した子供が2000人居ると言う伝説の三助である。
更にバードウォッチングが趣味だったので、私等の名前は揃って鳥ネタばかりで、大抵名前を名乗った時点でルーツが即バレする、良くも悪くも分かり易い。
尚、残念ながら故人であるので、コレからは増えない様子だ。
ビーッ
外回り中、とても見知った顔を見つけて、思わず小さくクラクションを鳴らし、声をかける。
「何やってんのさミサゴ?」
車を降り、ナンパ行為のノリで話しかけてみる、まあ何時ものノリだ。
「道案内中、邪魔するなら居ね……」
何故か目いっぱい邪魔だと言う感情が含まれていた。
「おや、殺意が?」
一先ず何時も通りお道化る、迫力があるらしいが、妹分の迫力何てかわいいモノである。学年同じなのであんまり実感ないが、半年違うとそれなりに違うのだ、心構えとか。
「すいませんが、今はデート中なのでまた次回?」
不意に聞き覚えの無い、ちょっと低めの声が聞こえて目をぱちくりさせる。
「「え………?」」
思わず上げた声がミサゴと被る、この辺が姉妹だ、実はノリが近すぎて鬱陶しがられているのだ。
声の主を探すと、丁度ミサゴに隠れる位置に、一人居た、小柄な、白い浴衣姿の……少年? いや、少年?!
思わず二度見する。
「滑りました?」
少し悪戯心が有りそうな、楽しそうな声、子供と言うにはちょっと違和感のある、大人らしい話し方だった。
対して、ミサゴはその言葉に反応して真っ赤に成って居た、わが妹ながらウブイなあ。
「何処で捕まえやがったミサゴ?!」
海岸線の道路で、思わず大声で叫び声を上げた。怒鳴った訳では無い、それが証拠にミサゴが全然驚いていない。
何が有ったのかと言うと、所用で外歩きをしていた所、ミサゴを見つけ、運転していた車を止め、ちょっと話しかけてみた所、唐突に男の子を連れていた、しかもお手を繋いで。
更に男の子はデートだと言う、同い年の腹違いの妹がデートだと。
そりゃあ叫ぶだろうという事で。
「ソコで拾った」
しー、と言う感じのリアクションを付けて、崖下の海岸線を指さすミサゴ。
目線を下にやると、この土地名物の、人を殺しそうなと言うか。山程殺した実績が有る、やたらと荒い波が岩がゴロゴロガラガラカラカラと鈴のような音を言わせながら海岸線を洗っていた。
「緊急避難って事にしておいて?」
言って居る当人のミサゴも困り顔だった、状況が謎過ぎる。
「私の担当じゃないからねえ?」
お役所の下っ端仕事と言うのは基本雑用である。
今日も御用聞きの外回りだ、最近深刻に過疎って来たので空き家とか色々出来ているので、下見とかその辺の処理だ。
ミサゴが何処からともなく男の子連れている事、多分そこらは警察とかのお仕事だと言う事で。
「聞かれたら事件性は無さそうって言っておくよ」
コチラの言葉に、ミサゴの顔が明るくなる。
「ありがと」
「おこぼれよろしくね?」
お礼の言葉に、軽い調子で返しつつ。手をひらひらさせる。
具体的にはココにと言う感じにお腹の辺りを示す。
「しょうがないなあ、上手くいったらね?」
小声でそんな事を言いつつ、ミサゴが苦笑を浮かべる。
そんなやり取りをしたのが、この土地に翡翠さんが登場した当日のやり取りだった。
追申
実はこのツバメ視点。コレが無いと一日目が奇麗に終わらなかったと判明してしまったので、今更ですが書かせていただきます。次回ので綺麗に終わります。
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