第45話 リンゴの時計(ハチクマ視点)

 ぶぶ……


 そんな無粋な林檎時計の通知が来た、鬱陶しいなあ、良い所なのにと何気に通知画面を見る。


【排卵しました】


 そんな通知が来ていた、やかましいわ!


 声に出さずに内心で叫ぶ、タイミングがアレすぎる、だけど排卵前後24時間は高確率で当たる時期だ、このまま今夜抱いてもらえれば?


 いや、抱いてもらえるのだろうか?


 さっき抱きしめてもらっただけだし、私みたいなデカ女に忌避感が無いにしても、忌避感が無いだけと言うオチだったりしないだろうか?

 何だか反応してくれていた感も有るけど、やっぱり気のせいと言う可能性も。

 好意的なアレでは無い可能性もあるし、ハグ自体ただの福利厚生みたいな扱いの可能性とかもある。

 そもそも出会ったその日に即合体とか、何処のAVとかエロ漫画とかエロ小説だって話だし!


 ちょん


 びくう!!


 そんな妄想をして居た所で、死角から不意打ち気味につつかれて、恐る恐る犯人を見る。

 物凄く得意気な笑みを浮かべるヤタ祖母ちゃんの顔が有った。


(任せろ)


 そんな感じに無言で親指とか立てられた、いや何する気なのさ?!



 ご指名ありがとうございますと挨拶してみたが、通じていない、どうやら翡翠さんの好みで呼ばれた訳では無いらしい。

 内心色々と残念だ、どうせ又初顔合わせの面接落ちに成るのだろう。

 最早毎度のことなので言う程辛くは無い。

 ヤタ祖母ちゃんとかが先走って、先回りして私呼んじゃった類かなあ?

 抱き締められるなんて初めてだけど、やっぱり参加賞とかその線だよね?

 そんな訳で、最悪の想像を先にして、内心の期待値を急いで下げる、もうハグだけで体感的に上空1,000mまで気分が打ちあがって居るのだ、ここから落とされたらばらばらに成って立ち直れない。

 そんな感じの内心の葛藤で、色々落ちこんでしまったのがヤタ祖母ちゃんに通じたのか、口出ししてきた。

 いや、そんな無理しないで良いよ? と、内心で声に出さずに宥める。

 うん、気持ちだけ有り難くってやつだよ、男性のお気持ち次第なんだから、口出しするだけ無駄だって………

「ハーレムの一員としての一面が……」

 うん、それは確かだけど、直注ぎなんて少数派も少数派だよ? そこまで求めたら怒られる……

「で、守備範囲内か?」

 大丈夫? そんな直接的な表現、セクハラだって言われたらそれこそ社会的にコロコロされちゃうよ?

 内心びくびくしつつ展開を見守る。

「そういう意味ではど真ん中のストライクですよ?」

 え?

 翡翠さんから出た予想外の一言に目が点に成る。

 有りですか?! 有りなんですね!?

「あ……ありがとう………ございます、不束者ですがですが! お願いします!」

「はい、お願いします」

 採用!? 採用ですよね!? 色々褒めてくれたって事は、実質的に求婚ですよね!?

「「おおおおおおおおおおお」」

 周囲から歓声と拍手が上がった。

 遠巻きに観ていた面々、腹違いの姉妹達が祝福ムードで囲んで来る。

 報告要らない流れだな?

 身内の面々ほぼほぼみんな居るしと、変な感想が浮かんだ。

 じゃあコレ書いちゃえと言う感じに、先程翡翠さんが書いてチェックしていた婚姻届をミサゴが回収して、笑顔で私の前に持ってくる。

 いや良いの?!

 実質的にプロポーズ貰った様なもんだけど、そんな勝手に?!

 良いから書いちゃえ書いちゃえ、おめでとう、おめでたい、よくやったなこのやろーと外野が盛り上がる。


 そんなトントン拍子に行くはずないじゃ無いかと戸惑うが、周りの祝福ムードに押される。

 もう知りませんからね!?

 もう流されてしまえ、と必要事項を書き始めた。


「早く無いですか?」

 一歩離れた所で翡翠さんとヤタ伯母ちゃんが話している。

 ちょっと離れているけど、大体分かる。

 結婚観やら、男性の求められる仕事とか、常識的な諸々、と言うか、嫁は未だ私達二人だけなの? 少なくない? 

 もっと居るでしょ? 候補とか、ほら、そこに居る真面目な振りした腹黒軍師のスズメとかさあ?

 最低でも10人20人居ないと困るでしょ?

 人口比率的には100人ぐらい欲しいのだし。

 最終的に全員娶らせるってヤタ祖母ちゃんが張り切ってるの? ならまあ良いか……

 あの人が色々仕込んでくれるなら何とでも成る気がする。


「結婚しませんか?」

 翡翠さんの発したその一言に皆の視線がぎゅるんと向いた。

「ババアを口説いてどうするんじゃ?」

 対して、真っ赤に成りながら、あれこれとしどろもどろ気味に言い訳を並べるヤタ祖母ちゃん、人の恋路をアレコレするのは得意だが、自分が口説かれるのは予想外らしい。

「それが良いんです!」

 あ、追い打ち入った、二人とも真っ赤に成ってる、良いなあアレ………

「阿呆」

 ヤタ祖母ちゃんが小さく呟いて翡翠さんに抱き着いた、はい成立と。


 という事はヤタ祖母ちゃん3番目か、だったらツグミさんとかも娶ってもらっても良いよね?

「あっちの方が求められてるね?」

 思わず呟く。

「全部あの人の仕込みだしね?」

 ミサゴが返す、なるほど、そりゃそうだ。

 となると、次の嫁とかはほぼヤタ祖母ちゃん任せでどうにかなるね? ちょっと安心した。


 ところで、今夜、翡翠さん予約しても良い奴かな?



 追伸

 排卵通知、スマートウォッチ、特に例の林檎時計に現在すでに搭載されてる機能です。時代に合わせてちょっと精度上がってます。

 ハチクマさんは生理軽いタイプなので、ピルとか飲んで止めてない。 護衛の仕事では自分自身の感覚の調整も大事なので、自分の精度を確認するために、出番が無くても色々見てたのです。

 まあ、そこまで設定してると作者キモイとか言われそうですが、書いちゃったのでそのまま行きます。

 ヤタちゃん、身内と味方には何かと世話を焼いちゃう極甘な人です。

 敵には容赦しないけどそこら辺は画面外。

 お祖母ちゃんって、孫とかにはめっちゃ甘いですよね? と言う事で。


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