第46話 健康診断

「ようこそいらっしゃいました。お待ちしてました」

 受け付けでミサゴが診察券を出すと、そんな最敬礼で深く頭を下げられた。

 続いて、先程男性保護局から受け取った身分証明書を受付に出す。

 まるでとても大事な物で有るかのように、神妙な面持ちで受け取られる。

「では、案内させていただきます」

 待合室には結構な人数が居たが、待ち時間も無くそのまま奥に通された。

 ハチクマさんは、コレが仕事で立ち位置ですからと言う感じに割とすぐ近くを付いて来る様子だ。

「でも、わざわざ表口からじゃなくても、裏口からでも良かったんですよ? 騒がれるでしょう?」

 そんな良く分からない気遣いが出て来た。

「悪い事してる訳でも無いので、堂々と行きますよ?」

 入った瞬間、一瞬湧いたが、それだけだ、今の所実害は無い。

「翡翠さんの思うが儘ですので」

 護衛のハチクマさんも特に問題ないらしい。

「見せつけて来いってのが、お祖母ちゃんの方針ですから」

 ミサゴがあっけらかんと言う、大名行列位で良いとか変な事を言っていた。

「なるほど、私達としても目の保養何で、喜んでたとお伝えください」

 大げさである。


「私は問診だけっぽいんで、ちょっと行ってきます」

 ミサゴはそんな訳で別行動らしい。

「ハチクマ姉に翡翠さん任せます、先に終わったら受付の所で待ってるんで、外で襲っちゃダメですからね?」

「襲われるの?」

「襲いません!」

 ミサゴの変な釘差しに、一先ず乗ってボケるが、ハチクマさんからは真面目なツッコミが来る。

 グへへ位は来るかと思ったんだけど、残念だ。


「そこのロッカーでコレに着替えてください」

 そんな看護師さんの案内に対して、ハチクマさんが先にロッカールームに入ってがしゃがしゃやったりして安全確保をしている、大変なのだなあ………?

 他人事のように考えつつ、ハチクマさんに続いてロッカールームに入る。

 ロッカーで広げた検査着は大分薄手だった、光に透かすと向こうが見える。

 まあ良いか、屋内で寒くないし?

 特に考えず、そのまま今着ている半纏を脱ぎ浴衣を……

「ちょっと待ってください、未だ私が……」

 ハチクマさんがあわあわと慌てて声を上げる。

「気にしませんから? 大丈夫ですよ?」

 男の裸なんて見られても困るモノじゃないしと、気にせず浴衣を脱ぎ、検査着を着る、露出度は浴衣と同じだが、淡い緑の単色で生地が薄いので、無駄に乳首とか浮かんで見える。

 因みにハチクマさんは、手で目を塞ごうと動いたが、あっという間なので塞ぐ余裕も無かった様子だ。

 真っ赤に成って見ていた、目の前に手が有るが、指の間からばっちり見えている系だ、需要有るのかコレ?

「無防備すぎです、襲われますよ?」

 おでこの辺りを片手で抱え、ため息交じり、困り気味に言われた。

「時と場所を加味して。痛くしないのなら構いませんよ?」

 にっこり笑って返事を返す。

「ミサゴとも仲良いようですし? さっき籍入れも済みましたし?」

 先程役所に書類を提出してきた、窓口で大騒ぎに成ったのは笑い所だろう。

「今更ですけど良いんですか? 私なんかで?」

「美人さん何で、こちらとしては文句は無いですよ?」

 現状それしか見た所が無いのが問題では有るが。嫁1号なミサゴがはしゃいでいる範囲なら悪くは無い。

 そんな事を言いながら検査着の紐を結び、脱いだ服をハンガーにかけ、扉を閉め、ガチャリと鍵をロックして鍵を引っこ抜く。

「結婚で、もっと詳しく面接なんて言ったら、脱がして一緒にお風呂入って一晩同衾する話に成りますよ?」

 誰かの紹介で良い人と言われたらそのまま受け入れたに近いが。

「むしろそっちを!」

 そちらを向いた所で、激しく興奮するハチクマさんが居た。

 ふむ………

「一先ず持っててください?」

 引っこ抜いたロッカーの鍵を渡す。

「んで、お耳を拝借」

「?」

 ちゅ

 体勢を崩させて。軽く、頬に乾いた唇で触れた、キスと言うには結構軽い、唾で湿らせたりしていないから、変な匂いなんかも無いと思うので、色々安心だ。

「なななな?!」

「一先ず今晩の予約、これってことで?」

 ハチクマさんからパニック気味な反応が返って来る、成る程、コレがモテムーブ? 手玉に取る優越感?

 なんだかその反応がとても可愛らしい。こういったものは身長とか体格の問題では無いのだ。

 今すぐにでもあれこれしたいが、体格的に敵わないので押し倒すのは辛い所だ。

 不意打ちで崩して投げれば行けるか?

 いや投げてどうすんねんと自分で内心ツッコミを入れる。

「さてと、着替えました」

 そう言ってわたわたしているハチクマさんをそのままにロッカールームの外に出た。

「はい、ではこちらですね?」

 真っ赤な顔した看護師さんに出迎えられる、聞かれたらしい。

「聞かれました?」

 試しに聞いてみる。

「かなり響いてました」

 恥ずかしそうに返された。

「そりゃまた、すいませんね?」

 一先ず謝罪してみる。

「………いいえ、張り合いに成りますから」

「?」

 割と不思議な返しだったので、首を傾げる羽目に成った。


「145㎝で、50㎏ですね? 重さより見た目細いんで、結構筋肉在ります?」

「じゃあこっちで? 体脂肪15%? 本当に男性は低いんですね?」

 変なところで感心された。

 体重は兎も角、身長はもうちょっと欲しかったなと、思わず遠い目をする。

「採血です、希少な男性に傷をつけますが、お許しください」

「何も大げさな、はい、右でも左でも、とりやすい方からどうぞ?」

「ありがとうございます、では、失礼します」


「上……上…下…下……右……左……右……左……B? A?」

 自爆コマンド? 古典通じるのか? と言うか何でアルファベットが?

「視力は1.5、見えてますね?」

「はい、息を吸って、止めてください」

「レントゲン、異常なしですね?」

 ネガの印刷とか無しにディスプレイに直接らしい。あれ? あの頃もうあったっけ?

 会社の健康診断で、普通にフィルム使ってた気がするので、謎だ。

「心電図、特に問題なしですね?」

「聞こえた方で手を上げてください?」

「はい、聞こえてますね? 大丈夫です」

「胃カメラと大腸カメラは、ご飯食べちゃいましたか、じゃあ、又後日で、何時でも良いので、夜と朝抜いて午前中のうちに来て下さい、後で詳しい案内出しますから」

「エコーです、ジェルでぬるぬるにするのって風情ありますよね?」

 最後に何か変な性癖暴露された気がするが、案内が付きっ切りで、おおむねサクサクと終わって行く。

 時々変な事を言うとハチクマさんが無言の圧を発するので、やり難そうでもある。

「尿検査です、この紙コップいっぱいにお願いします」

 何でコレは増えるんだろう?

 採取したのを渡した瞬間、一瞬ひゃほうってしそうに成ったのは気のせいか?


「じゃあ、最後の問診と、精液検査ですね?」

 最後に何か変な物が出て来た………



 追申

 業界お約束のアレです。

 良かったら感想とか応援とか評価の★3とかレビューとか、ご協力お願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る