第88話 こちらただいま炎上中(ミサゴ視点)

『男性が居ると聞いたのですが! 本当の所はどうなんですか?!』

 電話の向こうで目が血走った様子のお客さん(仮)が質問と言うには勢い余った大声が響いた。

 内心でまたかあと呟く。

 因みにビデオ通話ではないので顔とか目は見えないのだが、何と言うか、目を閉じても向こうの必死さ加減が見えるのだ。

「他のお客様の事は教えられませんので」

 企業として、プライバシーポリシーをネタに逃げる。

 嘘ではない、翡翠さんは私達の旦那様であると同時に、お客様扱いである、実際従業員用の居室では無く、客室に泊まらせているのだから、お代は無料だが、あくまで書類上の悪あがきである。

「ご予約はどうしますか?」

 テンプレ返答を入れる。

 ブツン ツーツーツー

 ガチャ

「はぁ………………………」

 通話が切れたので、1セット終わりと、思わずため息をつく。


『三助さんが居ると聞いたのですが!』

「すいません、琥珀様は20年前に………………………」

『そっちじゃなくてさあ!』

「今は居ませんので」

『じゃあ良いよ!』

 ブツン ツーツーツー

 2セット目終わり。


 朝から、大体似たりよったりな問い合わせが引っ切り無しに続いていた。


 ぴこん


 メールの方も同じような内容の問い合わせが山ほど来ている、思わずため息をつきつつ、かしゃかしゃと返信を打つ。 公式発表前と言うか、大手を振って男性が居るとか、三助が居るとか言うと、保護局ならぬ男性保護主義者≪フェミニスト≫が沸いて出て結構大変な事に成るので、下手に大っぴらに出来な い。


 保護局のはお役所でお仕事であるので、理屈と手続き、書類に不備が無ければ問題は無いのだが。

 有象無象のフェミニストは何と言うかお仕事では無く、感情論とか、お気持ちで延々とこちらの時間と精神を削って来るので、かなり面倒くさいのだ。


 何処から情報が抜けたのかと思ったら、二人で手を繋いでいたところがライブカメラに写って居て、其処から追跡されたらしい。


 後は、通りかかった車に乗っていた誰かが通報したとか、いや、このルートは公権力直通なので、あの保護局の二人とハチクマ姉しか来ないはずだし。

 兎も角、ネット上では一部界隈であるが、全国規模でバレたらしい、下手に削除申請で火消しに回ると、今度はキャッシュを漁られ、消すと増えるの法則で悪化するため、そちらはもう放置である。


 ぷるるるる

 ガチャ

『予約は出来ますか?!』

 物凄く荒い息で聞いてくるが、コレは貴重なお客様だ。

 こういう人が居るから下手に邪険には出来ないのだ。

「2か月先まで埋まってしまいまして、それ以降になりますが……………………」

『ソレで良いよ! 直近で!』

「はい、では◎月◎日で、お名前は?」

『田中トビで!』

「ぶっ」

 名乗られた名前に思わず吹き出す。

『何やってんのさトビ姉!?』

 流石に叫んだ、まるっきり身内である。不意打ち過ぎてお仕事用の仮面とかが、まるっと剥がれた。

 名乗られてみると、確かに聞き覚えのある声だった。

『いや、ネットでちょっとした祭りに成ってるから、ついつい』

 悪びれた様子も無いがちょっと混ざるのは空気が読めてないと思うのだ。

 ビデオ通話じゃないけど、悪気無く笑う声の主の顔が浮かぶ。

「トビ姉だったら身内割引とか、従業員用使うルート有るけど?」

 基本的に身内の鳥組は、手伝う場合とか、従業員扱いで色々融通が利く。

『あくまで休みで行くから、割引だけで良いよ』

「景気良いね、了解」

 身内割引は基本半額以下だ、結構お得である。

『んで、噂の真相、実際の所は?』

「本当に居るよ、今私とハチクマ姉が正妻で籍入れ、ヤタ御祖母ちゃんが順番待ち状態」

『そりゃおめでとう』

「ありがとうごさいますっと」

『そっか、末っ子のミサゴがねえ、という事は今ハネムーン期間?』

「うん、早くもお客が押しかけちゃって大変だけどね?」

 本当に独占期間を堪能できるかは、かなり怪しい。

『今は本当に男少ないからねえ』

 しみじみと実感がこもって居た。

「やっぱりそっちも居ないの?」

『居ない居ない、居てもロクなのじゃない』

 げんなりとしている。

「やっぱりそんなもんかあ」

『で、ちゃんと良い人?』

「物凄く良い人」

 もう、あの人以外を良い人とは認識できそうにない。

『そりゃあ何よりだ、楽しみにしておくよ』

 上機嫌にけらけらと笑っている。

『じゃあまた後で、よろしく~』

 プチ ツーツーツー

 あっさりと通話が終わった。


「トビ? 元気そうだった?」

 横で聞こえて居たらしいツグミ母さんが聞いて来る。

「うん、元気そうで、上機嫌だったよ」

「ソレは何より、せいぜいおもてなししてあげましょう」

「結構先だけどね?」

 顔見せが二か月先なのはちょっと残念だ。

「あの娘なりに気を使ったんだろうね」

 ツグミ母さんもちょっと溜め息交じりだった。


 ぷるるるる がちゃ

 電話の呼び出し音に会話が中断される。

「はい、おのかわ温泉旅館、鳥屋」

『男の子が居ると聞いたんだけど!』

 今日はしばらくこのノリらしい、内心ため息をつきつつ、対応を再開した。


 追申

 アルファポリスの投稿小説「よく分からないAIの使い方」

  https://www.alphapolis.co.jp/novel/979548274/840877285

 ボツカットなAI画像です、順次追加します、よかったら見て行ってください。


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