第124話 琴理ときよらの配置

「私、琴理ときよらですが、例の男性、海野翡翠さんと結婚しましたので、護衛も兼任する形で、専属化の申請をお願いします」

 役所で手続きした後で、矢も楯もたまらずに、職場の方に連絡を入れた。

「ぶっ」

 電話の向こうで上司が噴出したのが聞こえた。

「ぢょっどまで……」

 ゲホゲホと咽ている。

「大丈夫ですか? 誤嚥性肺炎とか怖いですから、お大事にしてくださいよ?」

 そんな事を言いつつ、出方をうかがう。

「だれのぜいだだれの……」

 げほん、ごほん、すうはあ……

 恨み言を言いつつ、呼吸を整えている。

「……まあ、おめでとう、詐欺とか、業務上横領的なモノではないんだろうな?」

「はい、仕事先で出逢った相手ではありますが、後ろ暗い事は有りません」

 胸を張って報告しておく、この仕事じゃないと出合わなかったのは確かだが、仕事を盾 に迫ったりした訳では無い。

 向こうの家族、海野家の面々とも報告了承済みだ、ついでに私ときよらには血縁上の家族と呼ばれるものは居ても、会った事も無いので、基本的に天涯孤独である。

 だからこそ、色々自由が利くのだ。

 護衛官の資格も取ってあるため、こう言う、いざと言う時の兼任スイッチなんかもお手の物である。 「まあ、信じよう、後で経過報告と、婚姻届の控えと、正式な申請書を書いて提出しておけ」

 ついでに、男性と関わると言う意味では、そこそこ花形なので、抜けたら替わりがそこはかとなく湧いて来る、後々も安心である。

「はい、ありがとうございます!」

 思わず電話したまま、深々と頭を下げた。

 護衛官の人数は、男性の精液ランクが上がると増えるので、B以上なら最低3人と言う形に成る、そっちより上がるかどうかの情報は未確認だが、Aの上と言うのも聞こえてい る、それならこうした配置転換も可能になるのだ。

 休みの間、PCで就業規約とか延々と読み込み、婚姻した場合、専属として優先配属の権利がついて居る事に目をつけ、こうしてぶっつけ本番でやってみた訳だが、あっけなく通ってしまった。

「どうでした?」

 きよらが不安げに聞いて来る。

「一先ず通ったと思います、申請用紙とかはこれから書きますけど、そんな訳で、もうしばらくと言わず、色々お世話に成りますね?」

 最後の方は、旅館側の正妻筆頭なミサゴさん宛だ。

「わかりました、外に住むか、内に住むか、家賃とかは後で色々詰めますね?」

「はい……」

 護衛官なので申請すれば予算と言うか補助金が色々出るはずだが、あまり高くない事を祈ろうか。


 まあ、やったぜ、ひゃっほう!

 パンッ

 無言できよらと手を合わせた後に、ハチクマの方にも祝えと、二人で飛び掛かった。

 微妙に呆れ顔で対応された。

 パチン!

 掲げた手のひらに、二人で飛びついた。




 追伸

 琴理は色々要領の良い娘。

 ガッツポーズでパチンてやるの、この辺は微妙に男子っぽい。

 偏見ですけど、女の子だとわいきゃい言いながらきららなジャンプするイメージ。

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