第51話 其の頃、お説教されるミサゴ(ミサゴ視点)
「目を開けて、上向いて」
挟みこむように両手でアカンベーさせられる。
「瞼の粘膜に異常なしと」
「はい次、口開けて、あーって」
あ~
口の中を覗き込まれる。
「口腔粘膜も異常は無しと……」
「大丈夫でしょう?」
「この際だから全部脱ぎなさい」
「はい……」
医者の要求通りに、そのまま脱ぐ。女同士なので恥じらいとかそう言った物は無い。
「はい、足開いて、局部は、多少の擦過傷と充血程度か、まあ初めてはこんなものさね?」
股の間まで淡々と観察される。流石に恥ずかしい。
「初めてだから大丈夫だって?」
「まあ、本当なら大分安全性は上がるけど、本当だって保証もないんだから」
溜め息交じりに言われる。
「昨夜の事だから、もし感染しても昨日の今日で大したのは出ないか、要観察と、粘膜辺ちょっともらうよ?」
綿棒で少し弄られるが、大した感触は無い、翡翠さんに触られた時は、何と言うか凄かったんだけどなあ。
そんな作業の傍ら、マイク片手に色々呟いている、自動入力らしい。
「どっちにしても折角の機会を逃す訳に行かないでしょう?」
「気持ちは分かるけど、素人判断で見切り発車するんじゃないっての」
ぺしっと足を叩かれる。
「ヤタ祖母ちゃん的に嫌な臭いはしないから大丈夫だって言ってたよ?」
あの人は鼻が効くし、人を見る目は確かなのだ。
「医者の検査より精度高かったら私等の仕事要らないっての、痛いようだったら洗浄しておくけど?」
「多少挟まってる感ある位かな?」
「それぐらいなら大丈夫、通常反応、穿きなさい」
「はーい」
「初めてにしても、ちゃんと優しくやってもらったんだねえ、不幸中の幸いってところか……」
「良い人だよ?」
「人柄と防疫は別問題だっての」
溜息をつかれる。
「だって、先にこっちだったら、防疫隔離で最低1週間はこっちでしょ?」
「隔離後の優先権が多少あるんだから我慢しなさい」
「絶対に先越されるでしょ?」
「ソレについては否定出来ないと言うか、男性自由意志の保護が有るから、知ったこっちゃない」
バッサリだ、あんな可愛くてドスケベな翡翠さんが1週間も無事で居ると思えない、生死じゃなく、精子的な意味で。
「おかげで籍入れ出来たもん」
個人的にはベストな選択だったと思っている。
「そりゃあおめでとうってヤツだが、常在菌違うだけでもお互い危険なんだから、もうちょっと様子見るって考えな」
「精液検査では病気無しでしょ?」
「出ないのも有るんだよ」
「えー」
「はあ、あの馬鹿は……」
ヤタ祖母ちゃんを馬鹿呼ばわりできるのもこの人ぐらいなもんだと思う。
「んで、例の翡翠さんは遺伝子データも個人医療データも何も無いから、予防接種は全種だね? パンデミックの元だ、まったく危なっかしい」
ため息交じりだ。
「んで、ミサゴ、貴方の予防接種は、コロナ系とインフルエンザ系が期限切れだね? 一先ず打って行きな」
「はーい」
コロナとインフルエンザの予防接種は、野生株の変異が早いので、接種後半年から1年程度で期限切れになる、死ぬような病気でもないが、感染して一時休業とか隔離に成る方が面倒くさいので、基本的に全員打つことが推奨されている。保険着用なので、値段的にも特に痛くは無い。
軽く消毒した後、髪の毛位の針の注射をされる、物理的にも正直痛くも何ともない。
「あっちは検査項目多いから、まだしばらくかかる、待つんだったら空き部屋で寝てな? 興奮し過ぎで寝不足だろう? 肌艶は兎も角、薄っすらくまが出てる」
「ありがと、トキ祖母ちゃん」
何だかんだ、トキ祖母ちゃんは過保護だと思うのだ。
追申
補助金あれば打つ派です。
新キャラ、トキ祖母ちゃん、海野トキ。
血縁的にはヤタの娘、ヤタみたいな規格外のロリババアじゃないので、普通に老ける。
それでもかなり若く見える美人さん、見た目的には30とかにしか見えない。
髪は真っ白、脱色した訳でも無く、ただの白髪。白いだけで、太さとか腰とか艶はしっかりあるので、見栄えは悪くない。
老眼鏡なので、眼鏡かけてる方が目が大きくなって可愛い。
真面目で厳格、地域医療の重鎮。
ヤタに面と向かって文句言えるタイプの数少ない人材。
この人以外だと中洗浄してその廃液で再利用とか有りそうなので、流石にアレだったので。
これやっとかないと防疫的にあれですが、初手でいきなり問答無用と隔離病棟に放り込まれて。防疫処理だって1か月ぐらい各種予防接種されながら経過観察される異世界転生が見たいかと言われると困ると思うので、こんな感じです。
その場合だと、まあ別のに翡翠の童貞が食われます。
海兵隊の入隊だと、予防接種一日10本とか問答無用で打たれるらしいですが、この世界だと男と言うだけでVIP扱いですから、極力危険が無いようにと経過観察しながら慎重に……
いや、普通そんな事考えないって?
他者作品ですが、「異世界エルフの常在菌」が書籍化されてるんですから、先駆者が居るんで。
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