第150話 画面外、男性保護局、事務所側(籍入れ後、琴理が連絡した直後)

「わかった、おめでとう、手続きの準備をしておくから、後で書類を頼む」


 ぷち


「はあああああああああ・・・・・・」

 琴理からの結婚の報告と、配置換え希望の電話を切り、終わったぁと言う感じに、大きくため息をつく。

「何か有りましたか?」

 部下の一人が声をかけてくる。

「琴理ときよらが取られた」

「え~?」

 本当にござるかあ? 嘘だあ?

 という感じに、軽く返される。

「例の発見された男性だが、思った以上に、今まで出会った中で、見たことが無い位に良い男だったらしくてな?」

 大げさに言ってる感は有るが、要約するとそうなる。

「あの二人、結構地雷と言うか、地獄みたいなの結構見てますよねえ?」

 一般的に、素敵な男性に出会いたいと言う動機で志望してくるが、実際に素敵な男性なんてものは存在しないと分からせられる職場である。

 男女のいざこざとか、男性搾取とか、それこそ絞り過ぎで半死半生とか良く出くわす。逆に男性からの暴力系とかもそこそこだ。 身体能力的に女性の方が強いのだが、男性は特権がある関係上、増長しまくって手が付けられない案件がそこそこある。

 でもって、男性が被害者側で、いざ助けた時も、犯罪者と同じ女だと言うことで睨まれたり、暴言を吐かれたりと言うのは日常だ。

「もっと早く」「気が利かないな?」「触るな、寄るな、おんなじ女のくせに」等々。

 助けなきゃいけないものが、助けたい容姿と心根を持っているかは別の話で、まあまあロクなのに出会わない。

 入職時、キラキラしていた新人が、配属から1年もすれば目に光が無い、立派な職業人の出来上がりな訳だが。


「それ加味しても良い感じの男性だったんだろうさ?」

 実物を見た訳ではないが、写真の、ぎこちないが柔らかな表情と、報告書から読み取れる、優しくまじめな性分とかを見る限り、良い男だったのだろう。

 こから出ていく際には半分死んで居た目がイキイキするほどに。

「そう言えば、ハチクマさんは?」

 部屋の隅で、細々と事務仕事をしていた、頼りがいのあるデッカイ背中とかも無くなっている。

「それもそっちだ、実家で、古巣で、ご指名で、そのまま採用だ」

「そりゃまたおめでたい」

「更に3人とも籍入れで、ご成婚だ」

「あら素敵、職場からもご祝儀出さなきゃ」

 ぱちぱちと拍手までついてきた。

「それ自体は目出度いわけだが・・・・」

 これから空きに成る席と机をぼんやり見渡す。

「3人まとめて抜けたと?」

「その通りだ、一先ず追加の人員手配だな?」

 内心で、もう一度大きくため息をつく。

 男性保護局は呼ばれたら動く、受け身な組織だが、日々の雑事と言う物はなりにそれなりに有るもので。

 平たく言うと、一遍に3人も抜けられると、お仕事量的にパンクする、キャパオーバーと言う奴だ。


「本職が護衛官な即応待機だったハチクマさんは兎も角、琴理ときよらちゃんに関しては、一旦帰ってくるんじゃ?」

「兼任護衛官として配置換えして、そのまま居付くつもりらしく補助金申請入れてるからな、戻ってくるかわからん」

「あらー」

「いくら人気の花形職業と言っても、追加人員申請から、実際に現場に来るまでと教育期間は有るからな?」

「しばらくは忙しいですね?」

 人気は有るから次は来るが、前人気と現実のギャップで、使い物に成るまで育つかは別問題である。

「書類系は未だリモートで琴理ときよらにやってもらえるとしても、外回りの 現場組が足りんからな?」

「はいはーい、新人来るまで休んで良いですか?」

「居なくなるとこの職場がパンクするので、残念ながら一旦却下だ」

 正当な理由を出してこれ以上の戦力低下を予防する、逃がすかっての。

 そんな感じに早くもコレからの忙しさを想像して目が曇ってきている。


「で、先ずはあの二人と言うか三人に、不味い行動無かったか検証からだな?」

「何も出てこなけりゃいいですけどね?」

 公務員は身内に厳しくないと、対外的に格好がつかないのだ。

「次に、例の男性に関しての裏取り」

「信じたいところですけどね?」

 第三者視点は大事だ。色仕掛けで素通しとか大問題になる。

「詐欺とかじゃ無い事を祈ろうか」


 結婚詐欺、婚姻の実態無しで、仕送りだけせびる系も良く出るのだ。

 世論的に男性特権で許されがちで、基本的に見て見ぬ振りされるヤツだが、同じ職場の身内の幸せは祈りたいので、念入りに行こう。


「で、なにも無かったら、旅行ついでに、あの三人に、おこぼれでもせびりに行こう」

 男の子と触れ合える温泉宿だ、期待が高まり過ぎる。

「それは楽しみですね?」

 そんな皮算用をして、目先が忙しいのを乗り切るとしよう。



 そんな、なんやかんやの後日

 実物に遭ったら、揃って一目惚れの後に即落ちしたのは言うまでもない。 何だアレ。勝てる筈ないじゃん。


 え?


 抱き着いて良いの?


 子種とか強請っても良いの?


 求婚も?


 いやそこまでは・・・・・・


 法律的には?


 売春とかに成らない?


 宿泊客同士が、ちょっと仲良くなっただけだって?


 いや、そんなおためごかしで誤魔化しきれるわけが………


 いやいや、ここで行かなきゃ女じゃないな?


 ……………………………ひゃはぁ!


 思わず飛びついた、ラブと言う名の性欲は止められんのだ。


 追申

 チョロインVSチョロイン

 ふぁい!


 いや、何だか増えるだけなんですけどね?


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