第122話 例の書類に署名しよう(きよら視点)

「さてと、んじゃ、届け出とか行きましょうか?」

 勝利のお祝いと色々揉んでもらった後で、別室に案内され、不意に上がった声に、きょとんとする。

「えっと、何の?」

「これ」

 ぴらっと出てきた紙に、皆の目が点に成る。

『婚姻届』

 しかも夫側に名前が記入済みである。

(悪用されますよ?)

 そんな一言を咄嗟に飲み込んだ、ここで取り下げられても困るのだ。

「セーブポイントと言うか、区切りと言うか、お約束とか要りますよね?」

 そんな事を言う翡翠さんの顔には、もはや魔性的な微笑みが浮かんでいた。

 夫

 海野翡翠

 妻

 1・海野ミサゴ

 2・山野ハチクマ

 3・海野ヤタ

 4・山田ツブリ

 5・田上スズメ

 6・海野ツグミ

 保証人・海野トキ


 届け出済みらしい上の二人の名前は印刷で、その下には新しく増えた分の名前が手書きで記入されている。

「そんな訳で、お名前をどうぞ?」

「ひゃい!」

 改めて促され、とっさに出た返事は、裏返っていた、思わず幻滅されていないかと、周囲を見回す。

 何と言うか、微笑ましいなあと言う感じの、優しい笑みが浮かんでいた。 ハチクマが、良いからとっとと書いちゃえと、無言で言ってくる。


 7・南澤きよら

 自分の名前を書き込み、大きくため息をつく、たった数文字書くだけだというのに、変なプレッシャーで精も根も尽き果てた感じに成って居る。 私はこれから死ぬんじゃなかろうか?

 内心でそんな寝言を呟く。

「はい、お疲れ様、じゃあ次」

 琴理も名前を記入する。


 8・明田琴里


 書き終えると、やはり疲れた様子で、ぐったりと潰れた。


「そんな訳で、これがタネです、ご納得いただけましたか?」

 そんな翡翠さんの言葉に、固唾をのんで見守っていた面々が、こくこくと頷く、例の記者を筆頭とした、先ほどの卓球メンバーだ。隠した意味とか無かったかなあ?

「ところで、まだ空欄が有るんですけど……」

 含みが有る感じに振って来る。

「はい!」

 一人が勢い良く手を上げた。

「はいどうぞ」

「書いちゃって良いと言う事で?」

「良いですよ?」

「仕送りとかはどれぐらいで?」

 確かに死活問題だ、もう聞いて居るのでこっちとしてはアレだが。あの後話したら、本気でタダ同然だった。

「かなり安いです、実質無料と言っても過言じゃないです」

 ハチクマが代わりに応える。

 あえて出さないスタイルで、ちょっとおどして、それでも飛んで来たら受け止める感じの方針なのだろう。 目を閉じて、すうはあと深呼吸したのちに、一息で書いた。


 9・霧谷彩羽


 10・土井加奈子


 記者チームの二人が署名する、勝った意味とか消えちゃった感が有るが、気にしない事にしよう。


「で、どうせなので、どうぞ?」

 さっきの戦友も嫁候補入りだったらしい。

「良いんですか?」

「はい」

 翡翠さんが頷く。


 11・倉井夜空


 もはや流れだった、そりゃそうなるよなあとか、内心でため息をつく。


「で、色々覚悟決まってて突撃かけて来たら受け入れますけど、一気に増えすぎるのも困るので、他言無用って事にしておいてください」

 記者の人がこくこくと頷いた。

「因みに、いざと言う時は、この書類から速やかに名前が消えるだけ、じゃからな?」

 当然じゃろう? と言う感じに、ヤタが笑みを浮かべていた。

 独特の迫力のある物言いに、先程まで幸せな感じにほわほわしていたのが、冷や水をかぶった様に、皆そろってカクカクと頷いた。


 追申

 コレ書く時に、キャラの苗字忘れてて、盛大に読み返す羽目に成りました。

 思ったよりキャラクター図鑑とかって、書いてる方としても欲しいんですねアレ。

 そんな訳で、後でキャラ図鑑も準備中です。軽い紹介も入れようとしたら、何故か文字数がえぐくなってます。


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