第10話 名付け ミサゴ視点

 なんやかんやで無事安全地帯まで到着した、ギリギリセーフといった所だ、彼を無事降ろし、一旦休憩と草むらに倒れ込んだ所で、視界の端には荒い波に浚われる先程までの歩いて来た道だったモノが写っていた。

 怖い怖い……

 ぜぃぜぃぜぃ……

 必死に荒い息を整える、体中が熱い、いっそのこと脱ぎたいぐらいだが、今は人の目が有る、この人は脱いでも許してくれる人だろうか?

 と、頭の悪い事を考える。

 そして、一難去って又一難といった感じに、次の難所が判明した、何を話せばいいのだろう?

 先程のまでの問題ほど死にはしないが、死活問題だ。

 ついでに、今更判明したが、彼は顔が良かった。

 降ろすときにちらりと覗き見たのだが、目が潰れるかと思った。

 処女の妄想だろうと一笑にふされそうだが、その一目だけで心臓が高鳴って、顔が真っ赤で熱くて、更に自分が化粧っ気の無いすっぴんで有るということに気が付いてしまったのだ、まさに見せる顔がない。

 極力顔を見ないように、ついでに情けない自分の顔を見せないようにと思わず顔を隠した。

 もっとデカくて濃い偏光サングラスをしてくれば良かった、あっちなら目線はバレないし、顔も隠せる、良い事ばかりだったのにと変な後悔をする。

 似合うし色濃くして暗くし過ぎると翡翠見つけられないからと無駄な気遣いで、目線バレバレな小さくて薄いサングラスで来て失敗した。

 だが、目線は吸い寄せられる、掃除機の様な吸引力、まさにダイゾン。

 アホな事を考えつつ、必死に話題を探す。

 今日の天気?

 ありきたり?

 カッコいいですね?

 下手なナンパか?

 もっと語彙力をだなあ!?

「ありがとうございます、助かりました」

 悩んでいる内にそんな言葉が飛んできた。

 思ったより礼儀正しい人だった事に内心で安心する。いや、その前、担いで居た頃から礼儀正しかったのだが、足元しか見て居なかったし、感触的には触れている部分の暖かさとかしか覚えていなかったのだ。上の空である。

「いえいえ、大したことはしてないです」

 照れ隠しに目線も合わせずに手を振って返事をする、やってて気が付いた、コレ処女しぐさだ……

 内心でうぎゃあと叫び声をあげる、逃げられたら困るし、絶対次回なんてない、男の人なんて絶対数が少なすぎるのだ、ここで逃がしたら処女フラッシュバックで寝る時に一生のたうち回る羽目になる。


 …

 ……

 ………

 ぜいぜいぜい………

 もう、精一杯、一生分の語彙力を総動員して自分の所に来るようにとプレゼンした、もう自分自身何言ってたのか覚えてない。

「分かりました、お世話に成ります」

(よっしゃあ!)

 内心で飛び上がった。

「所でお名前は?」

「ミサゴです、海野ミサゴ」

「分かりました、よろしくお願いします、ミサゴさん」

 その言葉と一緒に手が伸びてきた。

 えっとこれ、掴んでいいの? 良いんだよね?! ひゃっほう!

 もう躊躇は一瞬で、勢い良く掴んだ、抱え込むようにして距離を詰める。

(がっつくな!)

 内心で必死に突っ込むが、掴んだ手はもう放したくない、瞬間的に手の感触を噛み締める、思ったよりごつっとしていて、タコもある、ちゃんと働いていて居る人の手だった、コレは絶対に良い人!

 処女の妄想だと笑われても構わないので!

 振り払われ無かった事を良い事にして、そのまま掴んだまま抱え込む。

 良いなあコレ……男の子っぽい……暖かいし……

 寒い時期でもないのに変な感動をする。

「えっと、こっちの名前は………?」

 聞き逃す訳には行かないと、その言葉を待つが、しきりに首を傾げて、明後日の方向を向いたりと挙動不審になった。

「何でか出て来ないんですよねえ……………?」

 困り顔で苦笑を浮かべている。それだけで何だかキュンキュンする。

「じゃあ、名無しの権兵衛……」

 流石にそれは……

「えーっと、もう海野藻屑で良いです」

 やけっぱち見たいな適当ネーミングだった、思ったより自虐的と言うか、私の苗字そのまま使ってくれるって、実質結婚?!

 そんな深読みをして一瞬で耳まで真っ赤に成る、絶対そんな深い意味はないって内心でツッコミを入れるが、コレはツッコミを入れなければ確定にできるんだと脳内作戦会議でスルー枠にする。

 虫除けに使えるというか実質第一発見者で私のモノ?

 でも……

「藻屑じゃダメです!」

 絶対そんな無価値枠じゃ無い、この辺で一番価値が有るものは………?

「翡翠で!」

 コレがこの辺で一番価値のある観光資源だ、それ以上は思いつかなかった。

「じゃあ、それで、お願いします」

 苦笑を浮かべて肯定された、悪くない評価だった様子だ、一安心。

「そんなに価値無いんだけどなあ……」

 本当に困惑している様子だった。

「私にとって価値が有るからいいんです!」

 強めに肯定しておく、逆分からせプレイ?

「じゃあ、頑張りますか?」

 苦笑を浮かべていた。



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