第64話 手を出してみる

 じゃあ、やってみよう

 先に相手したミサゴとは違って、ハチクマさんからは手が出てこないので、こっちから目いっぱい距離を詰めた。

 ハチクマさんがぎょっと目を剥いているのが、明かりの無い、薄暗い部屋の中でも見えるぐらいの距離感だ。 外は、もう直ぐ夜明けらしく、照明を点けずに大体わかる程度には明るかった。

 ハチクマさんの頭の後ろに手を回して、首の後ろ辺りから手を回して抱きしめるようにして、キスをした。

 ハチクマさん側からは、荒い息使いを感じる、興奮してくれているのだろうか? もしくは酸欠かな?

 人間、思ったより単純なので、酸欠のドキドキと、興奮のドキドキは見分けがつかないとか何とか言われていたなあと、変な事を思い出す。

 平たく言うと、ぎりぎり酸欠まで攻めるともっと惚れてくれるかな?

 なお、其処で首絞めに行く攻撃性は持ち合わせていないので、素直にキスとか、いちゃらぶ方向で行きたい。


「キス......凄いですね......」

 ひと段落して、ゼイゼイとハチクマさんが呼吸を整えている。

「良いですよねえ、キス」

 にっこり笑って返す。

 成れていれば素直に鼻から呼吸するだけなのだが、ハチクマさんはやはり慣れていないらしく、酸欠でおぼれ気味になってしまっていた。

 さあて、どっちが上かな?

 軽いほうが上か? 体力ありそうなのが上か?

 まあいいか? 強くぶつかって、後は流れで?

 どこぞの無気力相撲みたいな事を内心で考えつつ、改めて距離を詰めた。

 ちゅ

 今度は軽めに唇を重ねた。



「ひぐっ………」

 小さく悲鳴が上がる、ぷつりと何かを破いた感触が有った。

 ちゃぷちゃぷ………

 ふう……ふう……

 お互いの荒い息使いと、独特の水音がひたすら響いていた。

 中は、本当に熱くて、溶かされそうなほどだった。



「その手は、好きなようにしちゃっていいですよ?」

 さっきから出そうとしたり引っ込めたりと鬱陶しい、やるなら一思いにだ。

「潰れちゃいますよ?」

「潰せるもんなら、本望ですよ?」

 不安そうな顔で変な事を言うので、にっこり笑って返す。

「程々に、急所は避けてくださいね?」

 初手チョークとか首に来られても困るのだ。

 さあ来いと大きく手を広げた。

 ゆっくりおずおずと伸ばされた手が、胴の辺りでぎしっと、めしっと閉じられた。



「痛くないですか?」

「言う程大したことじゃ無いですね?」

 動きにくいというか、多少息苦しくて動けない程度だ。

 急所に入るとやばそうでは有るが、痛くても、先程出血させたのはこちらのせいで有るので、お互いさまと言う奴だと思う。

 押し付けられた大きくて柔らかな胸とか、主張する先端とか、お互いにやたらと大きく伝わって来る心音と呼吸音とか、とても良い物だと思う。

「まあ、落ち着くまでご自由に?」

「はい……」

 申し訳なさそうにシュンとしていたので、いい加減口を塞ぐかと、キスの続きを再開した。


 動けないが、先程から中がうねうねと蠢いて搾り取ろうとしてくる、中から感じる体温の熱さも相まって、段々とせりあがって来ている。

 こちらもキスのし過ぎで頭がぼーっとしてきた。

「ん……」

「あ……」

 最早お互い、言葉に成らなかった。

 どくんどくんどくんどくん………

 長々と貯めた分だけ、やたらと大量に出た感触が有った。



 お互いに身を震わせて、ぐたりと脱力した。

「お疲れさまでした」

 思わず呟いた。

 壊れそうな程に抱きしめられていた腕もくたりと脱力して、やっと解放された。

 戦闘状態が解除され、動いた拍子にずるんと抜ける。

 外の寒さに、一瞬身震いした。

「ありがとうございました」

 ハチクマさんの対句だった、お互い、変なピロートークの第一声だった。

 二人で顔を見合わせ、噴き出したようにくすくす笑う。


 外は大分明るく成って居た。

 チュンチュンと鳥の鳴き声が響いている。朝チュンだった。

「今何時です?」

 賢者タイムで動く気力が無いので、時計が見える位置に顔が向けられない。

「朝の五時です、起きますか?」

「今は無理です、一旦寝ます」

 ベしゃりと、ぐたりと先程より脱力する。

 目を閉じると、一瞬で意識が無くなった。


「本当に、今日はありがとうございました、大好きですよ……」

 ちゅ

 そんな言葉と、柔らかい感触が夢うつつの中で聞こえた気がした。



 なお、変な時間に寝たので、昼頃まで寝過ごした。


追申

「貞操逆転世界の温泉で、三助やることに成りました」

https://www.alphapolis.co.jp/novel/979548274/358865286

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