第65話 積極的なハチクマさん(ハチクマ視点)

 チュンチュン

(可愛いなあ………)

 鳥の囀りと、慌ただしく動き出した旅館全体の気配、明るくなった来た室内に、翡翠さんより先に目が覚めたので、翡翠さんの寝顔をのんびりじっくりと眺めている。

 どうやら何をやっても怒られないと言う事が証明されたので、安心してこの近距離だ。

 思ったより長いまつげとか、化粧して居る訳でも無いのに、艶めかしく見える唇とか、ちょっぴり見える喉仏とか、ちゃんと発達してる鎖骨とか、目に映るモノ全てが色々魅力的に見える。

 今この無防備な翡翠さんを独り占め出来ているという事に確かな満足感を感じる。

(成る程、ミサゴが得意気に成るわけだ)

(まさに百聞は一見に、百見は一戦に如かずと)

 思わず写真とか取りたいなあと、枕元のスマホに手を伸ばす、メッセージ通知が幾つか来ていたのに気が付いたが、ソレは後回しとカメラを起動してシャッターを切る。

 こんなことが有ろうとシャッター音は切っておいたので安心だ。

 障子とカーテンを開けていない室内は、未だちょっと暗くて被写体は近すぎるけど、最近のカメラはその程度ものともしないので技術力万歳である。

 思わずシャッターを押しながら顔がにやける。

 こんな無防備で可愛い寝顔をこの場だけと言うのは、人類の損失だと思うのだ。

 そういえば、もう抱きしめても怒られないんだよね?


 距離感を詰める事に最早躊躇は無かった。

 起こさない様に全身全霊で、全神経を集中させる。

 スルッと。

 ふわっと。

 そんな感じに優しく抱きしめた。

 ちょっと小さいけど、確かな存在感と満足感、もうこれだけで生きていけるんじゃないかと言う位のわくわく感と、高揚感に、全能感。

 顔がにやけてしょうがない。

 良いなあ、これ。

 ミサゴが「やるんだったら絶対に添い寝付けて、起きるまで堪能するべき!」と力説していたのにも頷ける、本当に、良い妹だ。

 ミサゴとの縁も長いしなあ………

 そんな事を思い出す、それこそ腹違いの姉妹で、ミサゴがお腹に居る頃からの付き合いだ。琥珀のおじい様が亡くなった後釜にと、変なタイミングで国から派遣されてきた男性が、前の男の落とし種が居るなんてと文句を言い出し、足元に居た当時赤ん坊だったスズメをぞんざいに足で邪魔だと転がし、それを諫めた当時ミサゴがお腹に居るツグミさんを蹴とばし、暴れ出したのを、当時はまだ小さい私が止めようとして、蹴とばされ、変な所ぶつけて、口から出血して、前歯折れたんだっけ、乳歯で丁度大丈夫だったんだけど、自分の事よりも私が怪我したことが許せなかったらしいツグミさんが、盛大に怒り、その男性を思いっきり蹴り出し、三下り半を叩きつけた、そんなエピソードが思い出される。

 これぐらい何てこと無いと、あの時のツグミさんは笑っていたけど、ヤタお祖母様にも大した事じゃ無いと笑われたけど。その後の調書と裁判であーだこーだ言われたけど、その一連の行動は一定の賛同を得られ、裁判的には無罪と成った。

 でも、国からの嫌がらせと言うか何と言うかな感じに、男性を派遣されるような事は無くなった。

 そんなのが、この地の衰退エピソードだ、一部では伝説のエピソードとして語り継がれているが、男が居ない地方と言うのはゆっくり衰退していく物なため、やはり辛いものだ。

 で、それのせいもあってか、ちょっと居ずらかった感もあり、学校に来て居た自衛隊のスカウトにホイホイ付いて行って、なんだかんだで今に至ると。

 ミサゴには年上のお姉ちゃんとして懐かれて居たので、こんな感じにおこぼれ貰っちゃったと。

 こんな幸せで良いのかなあ?

 ぼんやりと翡翠さんの寝顔を至近距離で眺める。

「大好きですよ」

 思わず小さくだが口に出して呟き、軽く、本当に軽く唇を重ねた。

 もっとしたいなあと思うが、起こしちゃ悪い、お楽しみはまた後で。


 そんな幸せな微睡の時間に、スマホの通知が飛んでくる、そっか、サイレント時間も終わりだしなあ。

 何時もなら、もう起きる時間ではあるのだ。

 腕の中の翡翠さんを起こさないよう注意しつつ、腕だけ伸ばしてスマホを手に取り、通知を確認する。

ミサゴ『どうでしたか?』

ハチクマ『最高でしたありがとうございます』

 ミサゴのメッセージに思わず即レスで返信する、先程の画像も付きで。

ミサゴ『写真撮る余裕ある辺り強いですねえ』

ハチクマ『いや、いっぱいいっぱいでした』

 もっと抱きしめたいと言う謎の衝動で埋め尽くされて、キスして、入れて貰って、抱きしめて、またキスしてと言う感じに、もうキスの度に抱きしめる度に身体中ピクピクぶるぶると痙攣して、お腹の中が勝手に蠢いて、最後のトドメにと目一杯中で出してもらえて、頭が真っ白で、もう幸せいっぱいで二人で眠りに着いたと。

 つい数時間前の事を思い出し反芻して、真っ赤になる。

 コレって上手く出来た類いなのだろうか?

 何だか一方的にリードされてしまった感がある。

 女としてはもっと良い感じにスマートにしたかった、そんな初体験の妄想とは全然違う気がする。

 いや、いっぱい注いでもらったんだし、きっとセーフだ。主観的に暫定的にセーフ!

 でも姉妹達に根掘り葉掘りされると思うから辻褄合わせ考えなきゃ。

 んでもって、他の通知は?

 ……………

 ………



 はも

「ひゃあ!?」

 不意打ちの感触に思わず叫び声を上げ、びくりと仰け反った。

 翡翠さんが私の胸の先端に食い付いていた。




 追申

 コレだけやれば奥手なハチクマさんでも距離感バグりますって事で。

 寝起きで目の前に有ったら、普通に食いつくと思うんです。

 と言うか、今回、前回の翡翠視点よりエロい気がするんですが、どうでしょう?



 文字付レビューありがとうございます、コレで作者も、もうひと頑張りできます。


「貞操逆転世界の温泉で、三助やることに成りました」

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