第4話 改めての出会い

 ざざーん

 ざざーん

 がらがらがらがら

 ふうふう

 ゆらゆら

 独特の波音が聞こえてくる、どうやら場所は眠る前と変わらないらしい、そして、独特の揺れる感触と、上がった息を感じる、姿勢的には窮屈な感じがするが、手には何やら柔らかい感触も有る、一体何事だろうか?

 目を開けると、視界には丸くて大きめの石が沢山と、健康的に日焼けした誰かの足が見えた、運ばれているらしい。

「あの、すいません?」

 どう言ったら良いのか分からなくて、ひとまず謝った。

 びくり

 明らかに大きく揺れた、驚かせてしまったらしい。

「おや、起きました?」

 一拍遅れて、ふうふうと少し上がった息交じりにそんな声が返ってきた、声の感じからして、女の子?

 姿勢的に窮屈で、視線が下方か後方にしか向けられないので、顔が見えなかった。

「いったい何が?」

「海辺であなたが倒れてたので、運んでます、この辺は水没地帯なんで、急がないと……」

 大分無理をしているのだろう、息が上がっている。

「すいません、自分で歩けるんで、降ろしてくれて良いです」

 余り甘えるのも考え物だ、男の子なのだから女の子には良い格好をしたい。

「それは嬉しいですけど……今足元危ないんで……」

 確かのその言葉通り、足元の石はほぼほぼまん丸で、波の度に転がり、歩く度にごろごろと転がるように動いている、確かに足元は不安定な様子で、彼女の足元は割としっかりしたトレッキングブーツの様なゴツイ物だった、ズボンはハーフパンツだろうか? 見た感じ彼女の服装は足元しか見えないが、活発で露出も多く見える、対して自分の足元はと言うと、裸足だった、この石だらけの海岸線を歩くには相応しくない事、この上なかった。

「すいません、お言葉に甘えます」

 素直に甘えることにした。ベテランの言葉には従うものだ。




「この辺なら大丈夫です」

 石がごろごろする地帯は終わった様子で、石がごろごろする海岸線から地面に変わり、多少整備されたらしい急な斜面にジグザグな道が作られていた。

「休憩です、よっ……と……」

 ふらふらとしながら降ろしてくれた、運んでくれた娘は色々と力尽きた様子で草の生えた地面に転がった。

 中々豪快な性格らしい。

 顔を隠すように転がったまま荒い息を吐いている。

「すいません、ありがとうございます、助かりました」

 素直に礼を告げる。

「いえいえ、大したことはしてませんよ」

 大した事は無いと、目線も合わせずに手を振っている。

 彼女の全体像を改めて観察する、先ほどまで自分、男一人を担いで歩いていただけあって、健康的で活発な印象の身体つきをしていた。

 服装的には半袖とハーフパンツ、色は薄目のサングラス、軽装な服に対して、ゴツくて重そうなトレッキングブーツと、同じくゴツイ耐衝撃腕時計、露出部は健康的に日焼けしていて、袖の境界線にも日焼け跡が在って、何というか、とてもエッチだった。


(美人さんだなあ)

 年のころは20ぐらいだろうか? 顔はまだよく見れていないが、素直にそう思う。

 対して、自分のだが、白いパジャマか浴衣的な服で、見覚えも何もなかった、そもそもなぜココに居るのかも記憶に靄がかかって上手く出てこない。

 一人で内心首を傾げる。

「さて、色々聞きたいことは在りますけど、説明できそうですか?」

「……いや全然」

 説明できそうに無かった。

「それで、どうしましょう? 輸送手段、紅白のハイエースか、ぱんだのクラウンか、歩きと軽トラ、どれが良いですか?」

 彼女が起き上がりつつ、突然変なことを聞いて来た。

「えーっと?」

「わかり難かったらアレですけど、119(救急車)か110(警察)か、私の自宅か、です、私の自宅経由するかは貴方のご希望次第ですけど……」

 携帯電話らしきものをポケットから取り出してこちらの様子を伺ってくる、期待的なものが覗えた。

「多分、どれにしても、貴方は男の人何で歓待されます、私の所でも歓迎します、でも、最初の二つは多分、必須です」

 歓迎はされるらしかった、どう言う意味なのかはさておいて……

 視界の端に、大きいが、何だか地味目の茶色い蝶が飛んでいた。

「あ……」

 思わず目線で追い、間抜けな声を出した。

「どうしました?」

「いや、オオムラサキ、動いてるのは初めて見たんで……」

 個人的にかなり珍しい虫だった。

「なるほど?」

 あまりぱっとしてない様子の返答だった、まあ女の子に虫ネタは余り通じないだろうと納得する。

「メスならいっぱい居るんです、オスだったら大騒ぎですけどね?」

 こちらの視線を追ってか、少し頭が動いた後で、返事が返ってきた、不思議な返答だったが、確かに昆虫、特にオオムラサキはオスの方が青紫色の模様が奇麗な蝶で、メスは模様は同じだが茶色メインな為、かなり地味だ、確かにメス人気は無いのだろう。

「ボルバキア、蔓延してますから」

 更に不思議な返しだった、苦々し気な響きが含まれていた、何かの病気なのだろうか?


 追伸

 ボルバキア、昆虫に寄生し、母子感染で子供を卵の段階で組み換え、全てメスにするという特殊な寄生虫というか細菌、オスの場合の精子細胞は寄生するには小さすぎるため、大きい卵細胞に寄生する事で母子感染する、子孫に寄生するため、最終的に感染者を全てメスにする、昆虫に寄生するのは実在、論文的に新潟、佐渡島が有る意味聖地。人に寄生するのはさすがに創作です。

 なお、同じノリで母子感染する寄生生物として人の身体の中にもミトコンドリアが存在します、そう考えると割と在りそうですよ?

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