第24話 今夜の予約
「ところで、とても今更な、これからの話なんですけど」
その場は同じロビーだが、いったん解散と人が減り、場が落ち着いたので、改めて聞く。
「はい」
神妙な面持ちでミサコが相槌を打つ。
「ヤタちゃんからも居て良いと言われたのも在りますが、しばらくお世話になっていいですか?」
割と根本的な確認だ。
「はい!しばらくと言わず、いつまでも!」
この世の終わりが来たみたいな表情から、花が咲いたような笑顔が浮かんだ、其処までか?
「で、それに対して、一つ問題が有るのですが」
「はい?」
他に何か問題あるか? と言う感じに不思議そうに首を傾げる。
「現状お財布も何も稼ぐあてが有りません、無一文です」
最初から言っている気もする。
「そうなんですね?」
しつこいようだが、ミサゴの頭には疑問符しか浮かんでいない、何が問題かわからないらしい。
「お世話になるにあたっての、対価を払いたいのですが、何か仕事とかありませんか?」
「えーっと・・・・・?」
鳩が豆鉄砲を食ったような表情を浮かべて固まっている。
「一般的に、男性は養われるのがお仕事ですよ?」
それ以外無いですよ? と言う感じの答えだった。
「それもどうでしょう?」
ヒモが定位置なのだろうか?
「何でもしますよ?」
何かしらのお仕事的な役割は欲しいのだ、一方的に養われるのは健全ではない。
「ん? 今何でもするって?」
続いた言葉に、さっきまで呆けていたミサゴの目がぎらっと輝き、何か呟いた、何かやらせたい事が有るらしい。
「えっと....じゃあ......その....」
とても歯切れが悪かった。
何か言いたいらしいが、セリフの頭しか出てこない。
「なーにかまととぶっとるんじゃ? おぼこい反応しおってからに」
あきれた様子でヤタちゃんが混ざって来た。
ちなみに、おぼこと言うのは、漢字で未通女と書く、分かり易く言うと処女膜未貫通女と言う、極めてアレな古語だ。
現代語で言うと、処女臭い反応と。女が多いこの世界だと『やーい童真』位の煽りなのだろう。
処女なのか、それはらしい、と言うかお仲間で嬉しい、思わず温かい目でミサゴを見る。
こっちも童貞なので仲間意識が有るのだ、深い意味は無い。
更に言うと、童貞と言うのは、初めてじゃないと言われた時点で、付き合っても居ないのに寝取られを感じて勝手に凹む残念な生き物である。何かにつけて僕の方が先に好きだったのにと言う幻肢痛に悩まされがちだ。それが無いと言うだけで結構な安心感がある。
ミサゴはそれに対して、わたわたと空中で手を動かして真っ赤になった後に、沈黙して俯いた。
「..だめ?....ですか?」
何故こっちに聞くんだと惚けてみたくなるが、この世の終わりみたいな顔をしているので。
「むしろ良いと思いますよ?」
素直にそう言っておいた。私が貰いたい位ですと言う語尾は飲み込んだ、そこまで入れるとキモ過ぎると思うのだ。
わーぱちぱちぱちーと言う感じにヤタちゃんがセリフも効果音も入れずにリアクションを取っている、しゃべらなくてもやかましい感のある動きだった。
「貰ってくれませんか?」
キッと覚悟を決めた様子で返事が返ってきた。
「貰えるなら貰いますよ?」
お誘いの言葉としては渡りに船でしかないので、素直に受ける。
男の子としての矜持としての、女に誘わせるなんてと言うのは向こうの世界での価値観だろう。
ここでじらす方が失礼に当たるものだと思う。
だが、返答はしたが、お互い固まってしまったので、次の動き位はこちらから返したい。
何か無いかと内心できょろきょろ見渡す。
試しに直ぐ近く、隣に座っていて、ソファーの上に有ったミサゴの手と自分の手を重ねてみた。
「あ.........」
ミサゴが反応してさらに真っ赤になった。
この距離なら届くかな?
チュッと軽く唇を重ねた。
「これで手付ってことで」
ミサゴが真っ赤になって、こくりと頷いた、周囲から歓声が上がった。
二人で赤くなったのは言うまでも無い。
追伸
ちょっと短いですがキリが良かったのでこの辺で。
同じく『かまとと』も、『かまぼこはおととですか?』の略で、今更な事を聞くわざとらしい、あざとい奴と言う意味です。この場では若干アレな気がしますが、勢いが良かったのでそのまま書いてます。
アンケートです、この後朝チュンスキップを使いますか? チキンレースしますか?
良い感じに膨らむか勝負ですけどね? 良かったら感想欄で意見をどうぞ。
良かったら感想とか応援とか評価の★3とかレビューとか、ご協力お願いします。
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