第120話 閑話 石拾い、正しい石の探し方

「探し方ですけど、先ずはこう、浜辺全体をザーッと見ます」

 ミサゴに言われた通り、周囲を見渡す、広い砂浜、荒い波、泳ぐには寒そうな雰囲気であった。

 実際泳ぐにはまだまだ早い訳だが。

 そもそも水着なんか着ていない、逆にゴツいトレッキングブーツとか用立てられている。

 泳ぎに来た訳でも無く、鍛えるついでになんか楽しいの無いかと言ったら、石拾いとか楽しいですよと始まり、こうなった訳だ。

 一晩頑張ると下腹部が結構な筋肉痛に成るのは男として問題なので、トレーニングも頑張らなくては。

「色的には白系が多いですけど、緑も全部ハズレって訳じゃないので、一先ずチェックは推奨です」

 そんな事を言いながら、足元の白い石を拾い上げる。

「本職なら色々小細工、拾いやすいマジックハンド的なのとか有りますけど、今回は鍛える方向なので、あえて無しです、しゃがんで拾って、跳ね上がる要領で立ち上がります、こう」

 そう言って、手元のを落とし、一瞬で砂浜に腕立ての姿勢に伏せてから、先程の石を拾って跳ね上がった、シャツに砂がついて居ない辺り、着地しきっては居ないらしい。

 跳ねる時に見える健康的なへそチラとか、胸の控えめな揺れとか、色々邪念が混じるけど、気にしない方向で。

 追加で小さく跳ねて姿勢を整えた後で、石を観察始める。

「コレでバービーとか言うトレーニングです、連続じゃないから言う程きつくない筈」

 そんなことを言いながら、石を観察する。

「んで、見分け方ですけど、こんな風に単なる真っ白で透明感の欠片も無いようなのは、白の長石です、ゴミ枠ですので、ポイっと投げます」

 手慣れた様子のオーバースローで石が沖合に向けて投擲される。

「んで次、白くて透明感が有って、光に透かすと、向こうが見えますね?」

 先程の様に伏せから跳ね上がり、軽く叩いて石に着いた砂を飛ばし。

 太陽にかざして覗き込んだ後で、こっちでも見てと手招きされたので、素直に寄って覗き込んだ。

 確かに白の半透明だ。

「でも、表面が割れたようにゴツゴツしてます、この割れ方、劈開面の特徴は石英ですね?」

 残念そうに結論付ける。

 ぶんっと、この石も結構な勢いで飛んでいった。

「透明度高くてガラスみたいに結晶構造が大きくて綺麗だったら水晶として価値が出ますけど、この辺で採れるのは真っ白なんで、基本的にゴミと見て良いです」

「世知辛い」

 思わずそんな合の手を入れる。

「んで、次、コレは緑色が奇麗に見えますけど、こう光にかざしても、透け感とか一切ありませんね?」

 確かに緑色では有るが、光で透ける様子も無い。

「きつね石って奴です、水に濡れてるとキラッと光るんで、素人さんは間違えやすくて、狐に化かされるって事できつね石です、正式名称はロディン石とか言いますけど、きつねだけで通じます、って事でポイです」

 そんなハズレ石を渡された、真似をしてオーバースローで海に向かって放り投げる。

「ないっしゅー」

 軽い調子で合いの手が入る。

「んで、次はコレです、緑系で表面がすべすべ。黒い斑点のゴマ、コレは蛇石、蛇紋岩です、翡翠とかとか、トパーズとか、アクアマリンなんかの宝石が、マグマから上がって来る時に、コレが母石として一緒に上がって来るんで、コレが有る地方は石探しの聖地なんですけど、これ自体は価値無し何ですよね?」

「パチンコとかの予兆とか、予告見たいなもんです」

「ガラス系何で、薄くすれば緑の部分は光を通すんですけど、黒ゴマの部分は光を通さないんで、やっぱりこんな風に通りません」

 ミサゴがポケットからライトを取り出し、点灯させて、光で石を透かすように照らす。

 確かに真っ暗だった。


「そんな訳で、本命はこっちです、緑と言うよりは乳白色、緑や紫、青や白も在りますけど、こうすると光を通して、全体的に輝きます」

 今度は拾ったモノでは無く、ポケットから取り出された石を先程のライトに掲げると、確かにきれいに光って居る。

「んで、結晶構造が密で、劈開面は無いので全体的につるつるさらさらした感じになって、ひびなんかもあまり無いです」

 まあ物は見てからと、サンプル翡翠を渡してくる、確かに色々違うのだろうけど、実際に見つけられるかは謎だ。

 右左上下と一通り見てからミサゴに返す。

「そんな訳で、前知識はコレで大体OKと言う事で、後は実際に見て覚えるターンです、じゃあ、れっつごーです」


 石拾いより、バービーの跳躍運動が思ったよりエグイので、あっと言う間にバテた。


 ミサゴはバテた様子も無くぴょこぴょこ跳ね回って居た。

 砂浜を事有る毎にダッシュして、しゃがんで伏せてジャンプしてを延々と繰り返す、驚異の運動量だった。


 収穫はどうだったって?


 白くて透明という事で、ひたすら石英に引っかかり続けた、思った以上に見分けが難しい。


「慣れれば一目で分かるようになりますので、後は場数次第ですね?」

 ミサゴも苦笑交じりである。

「母石からはがれる時に、何故か真っすぐ平らに剥がれたりもするんで、そんな違和感に気が付くか勝負だったり」

「ついでに、この辺は小さくて少ないんで練習場ですよ」

 ハチクマさんが苦笑交じりに補足する。


 それでもミサゴが跳ね回って居るので、負けるかと男の子の意地を発揮して探し回った所、小一時間ほどで見事に足腰が立たなくなった。


「そんな訳で、基本これを毎日ですね? 日が高くなると同業者増えるんで、夜明けと共に、朝ごはん前にやるのがポイントです」


 ミサゴの足腰が引き締まって居るのも納得のストイック加減だった。


 何だか遠目に見物人結構居たのは気にしない方向で。



 追申

 ミサゴの日常的な運動量です。結構な化け物。

 翡翠拾った時バテたのは、純粋に50キロオーバー肩に担いで石だらけで踏むとゴロゴロ安定しない海岸線5キロを1時間で抜けられるかと言うアレですので、無理も無いのです。



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