第119話 画面外、烏の一声で大山鳴動して何とやら(イサギ視点)

『ああ、イサギか? ミサゴの奴が男一人捕まえたから、後は任せた』

 何処となく見覚えのある番号から、官邸直通で電話がかかって来たと思ったら、開口一番がソレだった。

「……はあ?!」

 流石に叫んだ、簡潔に連絡するにしても、簡潔に過ぎる。

 ミサゴと言う名は覚えている、私達の実質的な末の娘的な者だ、何だかんだ可愛がられている。

 例の旅館には時々お世話に成って居るので、顔見知りでもある。

「ヤタ様ですよね? すいませんが、もっと詳しくお願いします」

 確認するように、噛んで含めるように、一区切り事に圧を込めて、思わず電話の向こうだと言うのに頭を下げた。

『なんじゃ他人行儀な、扱い的に身内じゃろう?』

「公私の住み分けとか大事ですから、どっちにするかは話を聞いてからです」

 友好的に話してくるが、色々な意味でこの人は爆弾なのだ、敵に回すと身内全部が敵に回る、身内の影響範囲は下手すると私以上なのだ。

 どれぐらいアレかと言うと、政治家としては見えている爆弾、地雷、ぶら下がったダモクレスの剣である、例の馬鹿男送った関係者は全員まとめて選挙に落ちた、そこまできれいに落ちるか? と言う感じに。 因みに言うまでも無いが、身内と言うのは竿姉妹や男親が同じ、腹違い等という意味合いのハーレムメンバーと言うあれだ、血は水より濃く、情欲は強く、一緒に生まれ育った乳姉妹達、この縁はかなり強い。中心の琥珀様が居なくなっても、その一番の正嫁と言うのは伊達や酔狂では務まらない。

『ミサゴが親不知の水没海岸地帯での子を見つけて、緊急避難と言う事で救助した、記憶の混乱やら何やら、何だか納得いっていない様子だが、落ち着いていて、当人同士で同意も取れた様子なので、一旦ワシの所で預かる、精子やら何やらは、採取出来るようなら、後で採って送る、じゃあ、後は頼んだ』

 最後の方は何だか楽しそうな含み笑いとか、電話の向こうだと言うのに、鮮明に浮かんで見えた。

「はい、ワカリマシタ・・・・・・」

 聞いている内容的に情報過多で分かりきらないが、一旦飲もう。

「男性保護局に連絡、福潟県、特に旧新潟地方、親不知海岸、および周辺地域で、男性の行方不明報告等があったのか確認、大至急」

 受話器を抑え、秘書に要件を伝える、男性誘拐の人さらい何て事に成ったら、流石に擁護出来ないので、これがまともな状態なのかだけは確認する必要がある。

  秘書は無言で頷いて各方面の連絡を始めた。

『一先ず、諸々落ち着くのを待ってにするから、多少の配慮を頼むぞ?』

 電話の向こうからでも、かなりの圧を感じて、思わず背筋が凍る。

「ハイ……」

 こうなってみると、年の功は有るだろうが、それどころではない役者と言うか格の違いとか感じる。

『行方不明者等、該当者が居なかった場合、稀人枠じゃな? できればそっちで頼むぞ?』

 聞かれていたらしい、思わずゾワっとする。琥珀様が稀人枠だったが、それこそ何十年前だという世界である。

  あの頃は戸籍管理が甘かったせいだとか言われている、戸籍やらマイナンバー何やらがあるこの状態で今更出るとも思えないが。遺伝的に否定されているのだが。

「ええ、私としてもそうで有って欲しいところです」



 その日の内に、異様に質の良い精子が医療機関から届けられた。 遺伝データ的にもデータベースには存在せず、それこそ虚空から湧いたのじゃないかと言われる騒ぎになった。

 未だ調べ切れていないが、調べやすい表面をなぞっただけでこの騒ぎである。

 この時点でBより上である、Bから上は国家戦略物資で、より一層の厳重管理が求められる。

「まさか、言うとおりに成るとは……………………」

 呆然と書類を見る、場所的に外国からの漂流者と言う可能性も捨てきれないが、遺伝子的には確かに日ノ本系である。


 渦中の人物の出所は、人さらい、拉致からの逃亡、隠して育てられたとか、と言う線も無きにしも非ずだが。 山ほどある男性に対する補助金を蹴ってまで隠して育てる意味がほぼ無いのだ、有形無形含めると年間で何百万最終的に何千万単位となる補助金を蹴る意味が。

 代わりとして、納精の義務的なアレコレはあるのだが。

 まあそこはしょうがないと言う事で。


 しつこく調べたが、行方不明者等も一切見つからず、そうなると実際に稀人扱いとなる。 因みに配慮という形で、連絡があった時点で深夜であろうと当日中に到着するはずだった、男性護衛官と男性保護管達を、少し遅れて到着させた所、既にミサゴとの婚姻書類を記入済みだった、あの人の手引きも有るの だろうが、本当に手が早い。


 こうなると政府側からの手出しは出来なく成る、男性にストレスをかけると採取できる精子の質が悪くなる為、成立した婚姻を外部から干渉するのは禁忌となる。まさに馬に蹴られて何とやらだ。 更に流れでハチクマも婚姻したらしい、身内として、ちょっと気に成る売れ残りだったから、一安心だ。


 更に後日、例の稀人、翡翠から採取された精液の質だが。どうやら琥珀様のサンプルデータより、明らかに質 が良いことが判明してしまった。


 最終的な着床率と初期分裂の観察期間は終わって居ないので暫定だが、明るいニュースとして現場と、報告を 受けたその上の人間が小躍りしている、下手するとお祭りのパフォーマンスにされてしまうだろう。 Aの上を作るか、それこそ大々的にするためにSとか作るか、今現在国内にはAが居なかったのでAでも良いのだが、不動の基準Aとして存在する琥珀様のモノより良いので、やはり差別化は必須だろう。

 このランクの精液を国際的に輸出入すると末端価格で億の金が動くのだ、シャレにならない。


 そして、そうなると護衛官一人では荷が重い、個人の強姦なんかより、国際誘拐組織とかに狙われかねない、 自衛隊を一個部隊現場に放り込んでおくべきか、下手なの送るとあの人、ヤタ様と喧嘩になりかねないから、やはり身内を入れた方が話は早いか?

 何だかんだで、身内には甘い人なのだ。

 そうなるとハクトとオジロ辺りか……

 北方の守りとして名は売れているのでちょっと惜しいが……

 ソレに下手に動かすと、諸外国に気取られる。


 ビー ビー


 そんな時に、領海内にスクランブルがかかったと警報で報告が上がる、隣国からの偵察機だ、何時もはほどほどに追いかけるのだが、渡りに船とばかりに迎撃指令を入れておいた、甘い顔をしているとつけあがるので、程々に落とさないといけないのだ。

 コレで移動させる口実が出来たと、内心でほくそ笑んだ。


 追申

 遠野イサギ

 ゴイサギでイサギ、まあ政治家なんて貴族っぽい詐欺みたいなもんなので。

 公的には総理だけど、身内の影響力とかはヤタちゃんよりは弱め。苦労人。

 世代的にはトキさんと同年代、見た目年齢は40行くかどうかぐらい。見た目詐欺では有る。

 画面外のアレコレは割とこの人が暗躍と言うか、ちょっとした気遣いの類。



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