第62話 据え膳でも怖い ハチクマ視点

「すぅ………すぅ………」

(無防備だ……)

 翡翠さんの寝息だけが響く室内、布団の中。内心で呆然と呟いた。


 私は護衛官の山野ハチクマ、今回は妹分のミサゴのおこぼれと言う形で籍入れ出来てしまった。

「展開が早いなあ」と、お相手の翡翠さんが呆然と呟いていたが、ソレはこちらの台詞でもある。

 いや、私達としても、もう二十歳越えの行き遅れなので、早いに越したことは無いのだが。

 護衛のお仕事だと呼び出され、出会ったその日に籍入れで、その夜に起きたら混浴で、そのままシームレスに添い寝である、ヤタおばあさまから手を出しても良いとまで言われていた。

 本当に、夢か何か見てるんじゃなかろうか?


 で、大丈夫と言われた据え膳であっても、実際に出てきた場合、手を出せるかと言われると困るもので………

 据え膳食わぬは女の恥なのだが。

 誘われたって、やっちゃって、からの手の平返しで確定有罪の懲戒処分なんて私の業界では当たり前でして。

 前例が出るたびに注意喚起とインシデントレポートが業界内で大拡散されるのだ、もう飽きたと言う位に。

 そんな訳で、結局手を出せるかと言われると、とても困る。


 ミサゴとヤタおばあ様のお墨付きなのだけど、怖い物は怖いのだ。


 もうすぐ夜明けの薄明りの中で見る、可愛いらしく、無防備な寝顔と、寝間着の浴衣、はだけた肌とか物凄く目の毒で、むらむらするけど。

 寝汗の匂いとか体臭だけでも、もうすごいのだけど。

 コレだけおかずにしても、何回でもイケそうでは有るけど?

 覚えたてだった頃なら、もう後先も考えず、矢も楯もたまらず飛びついたと思う。

 もしくは隠れる様にオナニーだけして誤魔化すか。

 多分私がそこら辺の勢いとか取れないから、逆に安心して預けられたとか、そっちの線まで夢想する。


 お役所の手続き的には、既に婚姻届は提出済みなので、法的にも夫婦な訳だが。

 そっからでも無理やり襲われた、同意していないと言う手の平返しからの以下略なんかもやっぱりな訳で。

 やはり起きるまで待って、改めて襲ってもらうと言うのが理想的じゃないかと。


 所で、翡翠さんからはどこまで距離詰められていたっけ?

 ハグに、キスに、添い寝と……

 あれって客観的に同意としてカウントされるのかなあ?

 多分、ミサゴとスズメとヤタおばあ様と、トキおばあ様は弁護してくれると信じていいだろうか?

 距離感ぐらいはもうちょっと詰めても良いだろうか?

 私の方から寝ぼけてうっかり抱き着いたぐらいはセーフかなあ?

 布団からぎりぎり外れない位の、ギリギリの距離感で耐えていたが、もうちょっとだけ詰めても良いかな?

 極力違和感を与えず、起こさない様に、そろそろと動く。


「ん………」

 翡翠さんが動いた、眠りが浅く成って居るらしい、思わずびくりと動きを止め、目を閉じる。

 寝てますよ~何もしてませんよ~

 そんな感じを演じる、さあ上手く行くかな?


「くす……」

 閉じた瞼の何も音もしない薄暗い闇の中、翡翠さんが小さく笑ったような声が聞こえていた。

 ごそごそと、少し動く気配を感じる。

 ちゅ……

 不意打ちのデコチューだった。

 思わずびくりと反応してしまった。


「起きてます?」

「………はい」

 思いっきりばれてしまった、私の自制心とかは紙っぺらだった様子だ。

 と言うか、寝ている相手に不意打ちにデコチューは何と言うか反則臭い。

 今までされたものより、微笑ましさとか、相手の好意的な物とか、好きとか感じさせられる。

 思わず口元が緩んでしまい、さっきまでの自問自答は私の取り越し苦労なのだと、変な実感をさせられる。

 目元からは、変な液体とか浮かんでいる気もする。

 我ながら変な所で感極まって居るものだ。


「風邪とか、うつってません? 大丈夫でした?」

 不安気に、ばつが悪そうに聞かれた、そういえば翡翠さん風邪ひいてたんですよね。

「大丈夫です、私、平熱で37.5℃在りますから、風邪ひいた試しは無いです!」

「たか………」

 気にする事じゃないと断言する、実際問題、書類的にも私等の健康とか扱い的に安いし。

 風邪ひいたことが無いのは本当だし。

「深部なら38℃在りますよ?」

「熱そう……」

 応えやすい質問に、思わず調子に乗って補足を入れる。

 呆れ半分、羨望半分と言った表情が浮かんでいた。

「健康そうで何よりです………所で、こっちのが、そろそろ準備出来てますけど、お相手、大丈夫ですか?」

 予想外の部位が触れていた、何と言うか、熱くて、硬くて、人体にこんな部位あったっけ?

 と、思わず混乱する。

「あの、これって……?」

 思わず手で触れて確かめて、反射的に引っ込めた。あまりぶしつ気に触るのも失礼かと思ったのだ。

「男の子の本体って奴です、今ならフルチャージ状態なので、勝手にこうなります」

 昼に搾り取られてましたよね?

 一日三回なら出せるとか言って居た気もするが、一般男性の平均値は3日に一回とかだ、半信半疑だったけど、まさか本当だとは思わなかった。

「無理とかは……?」

 思わず確認する。

「勝手に大きくなったのを発射するのは、大した負担でも無いですよ?」

 当人としては大したことでは無いらしい。割と大事な気もするのだけど、今回は無駄打ちじゃ無いのだし、そういう意味では安心。

「一回だけ出す程度なら、今なら器のふち、なみなみに溜まってる状態なんで、楽に出ます」

 楽に出るんだ? そうなんだあ?

 思わず遠い目で考える、じゃあ、搾り取らせてもらっても良いかなぁ?

 あの通知からも24時間たってないし、本当に、渡りに船なのだ。


「そんな訳で、何かご希望は在りますか?」

 何だか得意気に、そんな事が告げられた、なんだかプレイに関して色々わがままを聞いてくれたとかミサゴが言ってた気もする、やりたい事………?

(中に入れてもらっている間、力いっぱい抱きしめて私のモノにしたい?)

 咄嗟に頭の中に思い浮かんだシチュエーション、何と言うか、相手を食べながら交尾するカマキリに似ている様な気もする。

 いや、許されるはずも無いだろうが、そんな小さく細い身体、下手に抱き締めたら折れかねない。

「遠慮せず、力いっぱい、抱き締めてくれても良いですよ? お好きなように?」

 心の中を読まれた様な返答が返って来た。

「駄目です! 壊しちゃいますよ?!」

 思わず正気か? と言う感じに窘める。

 いや、私の欲求だ、私が悪いのだと、内部でぐちゃぐちゃに成る。

「大丈夫です、壊れませんから」

 大したことでも無いと言う感じの返答だった、その眼には自信が満ちていて、私の要求など大した事は無いと言う、そんな見た目の大きさ以上に、包容力を感じる表情だった。

「まあ、多少痛くても怒ったりはしませんが、急所は避けて、程々でお願いしますね?」

 ほんの少しだけの忠告の後、問答はもう不要、さあ来いと手を広げられてしまった。


 えっと、知りませんからね?



 意外と、余裕をもって耐えられてしまった。


 それと、何と言うか凄かった。

 絶対この人以外じゃ無理だ、この要求も、中に目一杯、何度も何度も出されたコレも。

 私の高めの体温でも、未だ熱く感じるこの存在感、不思議とふわふわした、この高揚感。

 女として認められたと言う安心感と自己肯定感。

 結婚相手としての納得感も、生涯添い遂げたいと思う、そんな衝動も。

 そして、優しいと言っていたミサゴの評価が、今更だけど腑に落ちる。


 これからも、一生、絶対に離しませんからね?!


 追申

 時間軸的に2日目終わりな感じですね。

 もうちょっとエッチなのを翡翠視点でもう一本書いて2日目締めと言う予定です。



 所で、アルファポリス側でも遅れて投下中です、ポイント的に書籍化申請ラインに有るので、あと一押しだと思いたい所なのですが、あと一押しの援護をお願います。

 アルファポリスに登録してあれば、後はお気に入り登録するだけですので、なにとぞお願いします。

 書籍化してエッチな挿絵とか付かないかなあと妄想しております。

 https://www.alphapolis.co.jp/novel/979548274/358865286

 ギフトありがとうございます、有難く頂きます。

 良かったら感想とか応援とか評価の★3とか文字付のレビューとかも、ご協力お願いします。

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