第113話 答え合わせ(きよら視点)

 同じテーブルの空いて居る席に座ったのは、昨日のめんどくさい女だった。 見知った顔と言うか、浴衣越しでもその胸部は目立つ事この上ない。 朝からオムライスのLLを頼むだなんて、元気は良さそうだ。

 しかし、目線とかこっち来ないな?

 昨日あれだけやらかしておいて、何か一言あっても良いと思うのだけど、お互い認識がモブなのだろうか?

 そんな訳で、挨拶ぐらいはしておこう。

「おはようございます、昨日はよく眠れました?」

 ぎょっと言う感じに目線が向いた、目線が合ったが、改めてきょろきょろした後で。

「おはようございます、えっと、昨日はご迷惑おかけしました」

 何だか当たり障りない感じに返事が返ってきた。

 何と言うか、うろ覚えだな? まあ良いけど。

 昨日は目の周りに隈が浮いて目線がギラギラしていたが、一眠りしたおかげか、大分マシになって居る。

「もしかして、記憶が無いとか?」

 適当に話を振ってみよう。ご飯出てくるまで暇だし。

「お風呂で寝落ちしてて、ついさっき裸で起きました、良い事遭った様な気もするけど、記憶があいまいなので」

「ふっ」

 思わず小さく噴き出した。

「何処まで覚えてます?」

「星空見ながら浮かんでたら、貴方達に逢って、色々質問攻めにした記憶は有ります」

 ご迷惑おかけして申し訳ありませんと言う感じに頭が下がる。

「その後は?」

 促してみる。

「寝落ちして?」

 何だかそこらを夢にしちゃったらしい。

「そこを夢にしちゃったら勿体無いですね?」

 苦笑交じりに、琴理が混ざって来た。 同感なので、頷いておく。

「夢じゃなかったと? でも、あれ現実感とか……」

 大分言葉を選んでいる様子だ。

「都合良過ぎると?」

「はい」

「気持ちは分かりますけどねぇ?」

「無理も有りませんけどね?」

 二人でねっとりと話しながら笑みを浮かべる。実際私達は上機嫌なのだ。一歩リードで正妻候補なので、浮かれるなと言うのも無理な話である。

「あの人、翡翠さんは夢でもなければ、幻でも無いです」

「異様に私等に都合が良いキャラしているだけで、実在してますよ」

 処女の妄想を具現化したような人物だと言うのは、否定しない。

「実際、エロ漫画とかエロ同人の世界ですよねえ……」

 横の席からしみじみと乱入された。まあ良いか、映画の感想会みたいなもんだし。

「どエロ天使とか、そんなキャッチフレーズ入れても良い位の」

「流石にソレは趣味というかセンスが微妙過ぎる」

「流石に古い」

 口々にツッコミが入る、無理矢理褒めるおっさんグラビアの世界だ。

「えっと、つまり、実在?」

 恐る恐ると言う感じに結論を呟く。

「実在する人物です」

 皆でうんうんと頷く。

「私達の具現化した妄想みたいな存在感ですけど」

「これだけ居て集団幻覚なんて言ったら泣きますよ」

 皆で頷く。

 先程から不安気な顔をしていたのが、昨日の出来事を現実として認識したらしく、目の焦点があっちに行ったりこっちに行ったりしながら、真っ赤になっていく。

 うんうん、現実を認識できたようで何よりだ。

 見ていて楽しいと言うか。愉しい。


「お待たせしました。こちら海鮮茶漬けです」

 こっちが注文した、相変わらず美味しそうな海鮮丼が置かれる。

 エビにハマチにマグロにホタテにタイにとてんこ盛りだ、差し色な刻みネギや青紫蘇も鮮やかで、その下の真っ白な御飯もツヤツヤだ、見るだけでも美味しいのがわかる、これは嬉しい。

「出汁茶漬けなので、良い感じにかけてお召し上がり下さい」

 出汁入りらしい断熱ポットもデンと置かれている。

「出汁の方余ったら、お吸い物の具も、ご飯のおかわりも有るので、残さずどうぞ」

 言われんでも、ご飯粒一つも出汁一滴も残さない所存です。

 もう目の前の丼に目線が吸われてどうしようもない。

 口の中に溜まる涎をこらえつつ、スマホのカメラを構える。

 この美味しそうなのをどう画像で切り取るか、それが第一の問題だ。

「で、オムライスLLですね」

 でーんとでっかいオムライスがテーブルに置かれた。

「ひょえ?」

「すご」

「入る?」

 思わず周囲から変な感嘆の声が漏れる。自分たちが頼んだ海鮮丼とは別ベクトルの映え加減な赤色と黄色の塊だった。

「これってどれぐらい?」

「ご飯がどんぶり茶碗5杯分で、卵が10個です」

「うわぁ~」

 周囲から、カロリーお察しと言う感じにドン引きの声が漏れる。

「余るようだったら先に分けてお弁当に出来ますよ?」

 至れり尽くせりだ。

「じゃあ、お願いします」

 現物を見てちょっと日和ったらしく、始まる前からルーザーズバッグをご希望か。

「ご希望なら梅干し入れて塩おにぎり位は良いですけど、生の海鮮丼をおにぎりにするのはだめですからね?」

 一瞬良いなあとか思っていたらしい面々に先回りの注意喚起が入る。

 流石にそれは危なっかしい。

 と言うか。先にこっちを食べなければ無作法と云うもの。

 小さく手を合わせて戴きますと食べ始めた。




追申

 きよらは対人で結構勢いが良い娘です、何かわしゃわしゃ居るのは例の娘達。

 オムライスのサイズは、SSでどんぶり一杯。

 Sでどんぶり二杯分。Mで三杯、Lで四杯、つまりLLなら五杯。

 巻く玉子に、具の分も含めて倍々、プラスα含めると4合近い。

 実物としてはオムライスチェーンなボムの木感覚でどうぞ。

 感覚的にはラーメンの丼ぶりにてんこ盛り。

 もしくは中くらいサイズの炊飯器みたいな。

 この世界の娘は結構食べますけど、まあ入りませんわな。

 注文通りに作るけど、残されちゃ困ると言うことでルーザーズバッグは必須ですよね? 勿体無い。

 余談としては、ハチクマさん筆頭に鍛えてる、でっかい組は当然の顔でスルッと入ります。


 関係無いですが、作者は通常Lをノリで注文して、量よりアレルギー起こしてノックアウトと言うかギブアップしました。

 作者の持病は無脊椎動物全般の食物アレルギー、店員さんに断り入れて聞いて注文した上でアウトでした。

 結果的に一緒に来ていた友人がLを1.5皿以上詰め込みました、あの頃は若かった。

 成分表示はセーフですが、多分貝とかは主要表示品目じゃないので、表面的には何が何だかわかりませんシリーズ。


 ギフトに★3に文字付レビュー、感想に応援、毎度ありがとうございます。


 良かったらブックマーク、感想とか応援とか評価の★3とか文字付のレビューとかも、ご協力お願いします。


 もっとレビューの星と文字と応援と感想を下さい!


 こんなん幾らあっても良いので、下さい!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る