第136話 辞令と暴走

「では、改めて自己紹介させていただきます、自衛隊、第七師団所属、北海ハクトです、以後よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

 真面目に背筋を伸ばして挨拶されたので、思わずこちらも背筋を伸ばして、挨拶を返す。

 一瞬きょとんとされた後、にこりと笑われた。

「そこの翡翠さん、精液検査のランク、暫定でA超えて、国威発揚的にSを新設するっ て、国内で政治的にちょっと騒ぎに成ってます、Bから上は国家戦略物資で、Aからは軍と言うか、自衛隊が大々的に護衛が付きます」

 余計な人に聞こえないようにと、奥の部屋に移動して。 後ろについていた人達が、部屋の外に監視について、じゃあ良いかと言う感じに本題が切り出された。

 先ほどまでの軽い調子は鳴りを潜めて、キリっとした様子だ。

 この間絞った精子の質が良かったらしい、だが、そんな大騒ぎする事だろうか?

「これが辞令です」

 クリアファイルに収められた書類が取り出される。

 何だか仰々しい。

「そんな訳で、私、ハクトと、今ここには居ませんが、オジロが、ここと関わりが深くて、馴染み易いって事で、 白羽の矢が立って、海外の軍用機を勝手に落とした名目の懲戒人事って事にして、部署移動、自衛官から護衛官に配置転換、名目的にはハチクマの部下として、護衛に混ぜてもらいます」

「もしかして、あれも全員?」

  ハチクマさんがちょっと遠い目で、震える声で聞く。

「全員、ダブルヘッドは混乱の元だから、いざというときはそっちの指揮下に入るから、よろしく」

「うわ………………」

 ハチクマさんの顔が引きつる。

「階級的にハクト姉の方が上じゃ……」

「先任者は敬うモノだってね? ソレに正妻枠でしょ?」

「ソレはそうだけど……」

 ハチクマさんの顔が複雑な顔をしつつ、赤くなる。

「基本的に護衛としては、そこの翡翠さんが第一優先で、正妻達は第二優先って事に成るから、奥様は前に出ない方がいいでしょ?」

「大げさじゃあ?」

 思わずつぶやいた。

「残念ながら、本気なのですよねえ」

 二枚目の書類が出てきた。

「この通り」

 何やら、署名欄に色々偉そうな名前が並んでいた。

「総理大臣?」

「イサギ総理直々だね?」

「あ奴も偉くなったもんじゃなあ」

 ヤタちゃんがしみじみ言う。知り合いらしい、本気で何者なのだろう?

「ほかの補助金とか使ってくれたら、生活の保護とか、色々な保障名目で、警備厳重な特区とかに囲い込めたのにって残念そうにしてましたよ?」

「いらん、やかましい」

「だとおもったので、こうなる訳だ?」

 にべも無く却下するヤタちゃんと、気にした様子も無いハクトさん、息は合っている様子だ。

「で、あいつらの住まいとして、近くの空き家は幾つか抑えたんだけど、建物の中の護衛は?」

「でくの坊するつもりだったら、邪魔じゃな?」

「そう言うと思ったので、外でそれとなく見てる組と、こっちの中で、仲居やりつつ護衛する組と、休む組でローテするんで、一先ず、まとめて雇用、よろしくお願いします」

 履歴書らしい書類がバサバサ出てくる。

「素性的には?」

 ヤタちゃんがソレに目と通しつつ、促す。

「俺の所の、嫁兼、部下、仕事は出来るし、体力はあるし、俺が居る限りは、裏切らないさ」

 ちょっと得意げだった。

「んで、オジロの方は? まだ見えないが?」

「基地の方で捕まってたから、外の陣地作成任せてる、後で連れてくるよ」

 苦笑を浮かべて続ける。

「あれ、俺よりモテるんだ」

「何よりじゃな?」

 そろって苦笑を浮かべている。


「でもって・・・・・・」

 ハクトさんが不意に近づいて来て、抱き上げられた。

「セキュリティチェック、力量見るから、捕まえてみな?」

 そのまま後ろ向きの腹ばい状態で肩に担がれる。

「へ?」

 思わず間抜けな声が上がる。

「怪我はさせるなよ?」

「それはもう……」

 ヤタちゃんの釘差しに、ハクトさんが真面目に答える、一先ず大丈夫らしいので、大人しく抱えられることにした。

 その回答を合図に、ハクトさんが勢いよく走りだした、流れていく景色の中、やれやれと呆れ気味にため息をついているヤタちゃんと、着いて行けずに目をぱちくりさせているミサゴと、割と本気で焦っているハチクマさんの顔とかが見えた。


 追伸

 お代的には、基本的に自衛隊とかの仕事の内って扱いだから、旅館側に費用負担なし、公務員としてそれなりにもらってるから、ご安心を。

 そもそも副業禁止ですし。

 まかないご飯と温泉と翡翠混浴とか、諸々の役得はつく、むしろそっちが本編。


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貞操逆転世界の温泉で、三助やることに成りました 峯松めだか(旧かぐつち) @kagututi666

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