第15話 バ・レ・タ

翌朝、王宮から準備してもらった馬車に乗ってバールキナに向けて出発する。


王都に来る時は馬と御者を途中で入れ替えての3日だったが

帰りは普通のペースで行くので5日掛かるらしい。


途中2ヶ所の大きな街と3ヶ所の町を移動するので、

天幕での野営は予定してないそうだ。


襲撃される事も無い、何事も無く移動できるだった。


しかし、面倒な人サキさん面倒な物が見つかってしまった。


もちろん、2人には銃の事はサキさんには内緒と念を押していた。


あるとき、キーラの腰袋の凹凸を見てサキさんが

「キーラちゃん、ちょっとお姉さんにその袋見せてくれるかな?」

と声を掛けたのだ・・・


「いやっ」



「長谷川さん、どういう事かな? ここは世界だよね、

 なんであんなものがあるの?」


と、キーラの腰袋を指さす。

なんで、革袋の凹凸で、あれが銃だってわかるんだ?


「サキさん、僕、ここに来ては見た事無いんですが?」


 サキさん、怖いです。


バレたからには、黙っていてもしょうがないのか。

「キーラ、すまないがサキさんに見せてあげてくれるかな?

 サキさん、分かっていると思いますが扱いは慎重にお願いしますよ」


「ええ、もちろんよ。さあ、キーラちゃん、その拳銃リボルバーだして」


キーラがイヤイヤ、袋から拳銃を取り出してサキさんに手渡す


「あ~これよ、この感じ、しかも本物にしか無いこの重み」


色々確かめながら動作確認をして、とうとうほおずりを始めた。


「キーラちゃん、これちょうだい」

 おい、サキさん。


「ダメ、それキーラの返して」


「サキさん、バールキナに帰ったら、ちゃんとを用意しますから、

 それはキーラに返してあげてもらえますか?」


「長谷川さん、本当? 絶対ですよ 約束ですからね」


 何とか説得してキーラに拳銃を返して貰いました。


ようやくバールキナに帰った時は、街は冬になっていた。




 とりあえずギルドに帰還の報告に行く、カークさんの所だ

「すみません、カークさん只今戻りました」


「無事帰還されて安心しました。そちらが新しいメンバーの方ですか?」


「はい、サキさんです王都で登録しました。

 サキさんこちらがカークさんここのサブマスターだよ

 いろいろお世話になっている人なんだ」


「はい、サキですよろしくお願いします」


「はい、こちらこそよろしくおねがいいたしますね。

 ところでナオさん、掲示版には貼っていませんが

 ワイバーンの情報がありますがどうします?」


「是非やりたいですが、パーティーの中に、今回はサキさんを入れた状態で

 受けても良いですか」


「はい、それならリーダーさえランクDなら大丈夫なように依頼書を作ります」


「ワイバーンの数は複数ですか?」


「いえ、目撃情報は1頭です」


「それでしたら、是非させてください」


「はい、では明日には依頼書を出せるように準備をしておきますね」


「はい、よろしくお願いします」


 さて、宿に帰って準備を ガシッ サキさんに腕を掴まれた

「私の銃、忘れてないでしょうね?」






 宿の部屋でサキさんに詰め寄られています。


「それで、どこかに銃が手に入る遺跡か何かあるの? どこに行けば手に入るの?」


「ちょっと待ってください、今出しますから」


「え? もうあるの?」


【ストレージ】 ヴォン♬ 


もやに手を突っ込んで、これとこれとこれとかな?


サキさんの前に回転式の拳銃を3つ置いて


「どれにします?」


「ちょっと待って、なんでこんなにあるの?」

 サキさんは拳銃から聞いて来る、


 ・・・・ちょっと怖いぞ


 答えると、後々面倒だな止めておこうか、脳裏にふとそんな考えが浮かんだ。


「長谷川さん、拳銃って回転式だけなの?」


 ああ、よけいな事を聞いて来る、前に出したハンドガンを出してみる。


「あっ、ガバメントだ」


 よくわからないが、初めて出して使うのを諦めたM1911って、そんな名前なんだ


 サキさんはカチャカチャとガバメント?を触りながら

「あれ、弾入ってる。わあ薬室にも入れたままじゃない、これ危ないよ」

 と楽しそうに意味不明の言葉を話している。


「それで、長谷川さん、どうしたのこれ? 銃の国も年代もバラバラなんだけど」

  ・・・いや、そんな事を聞かれても


「サキさん、わかったよ教えるから落ち着いて」





「全部、ストレージに入ってたんだ最初から」


「最初からって何が?」


「僕のストレージって多分誰かの銃器庫なんだと思う」


「それじゃあ、拳銃以外もあるの?」


  ああ、言いたくないな。


「最近、よく使うのはコレかな?」とライフルBarrett M82A1を取り出す


「バ・・バレット対物アンチ・マテリアルライフルだ」


「あと、これとか」


「スタングレネード?」


「僕は銃とか興味なかったから、何が良いか分からないし

 街の外に依頼で出た時に、色々試して使える物を探してたんだよ」


「じゃあ、ミラセアさんとキーラちゃんに回転式拳銃リボルバーを渡してたのは?」


「いや、僕もそうだけど、いざという時に複雑な操作なんて出来ないからね

 とりあえず小さくて引き金を引けば弾が出るのを選んだだけだよ」


「なんだろう、何となく的を射た回答だけど腹が立つ」


「だって、取り出した銃には箱も取り扱い説明書もついてなかったんだよ、

 日本人には普通に無理だよ」


「バレット使っておいてよくそんなセリフ言えましたね。

 あれ、アメリカ国内でも場所によっては違法所持な危険物よ」


「あのライフルって、そうなんだ」


「わかりました、納得いきませんけど納得しましょう。

 それで他にはどんな銃が有るんですか? 全部出してください」


「いや、それは無理」


「どうしてですか? 意地悪しないで出してください」


「ごめん、僕の頭の中にリストが有るんだけど、アルファベットと数字ばかりで

 内容が分からないんだ。

 外に出かけた時に1個づつ取り出して確認してみてはいるけど、

 まだほとんど出来て無いよ」


 「紙に書き出した物は無いんですか?」


 「少しだけあるけど、ほんとに少しだよ」


 「いいから見せてください」


  僕は渋々自分が書いたノートをサキさんに見せる

  サキさんは手に握ったノートを握りつぶすような勢いで見ている


 「長谷川さん・・・これ?」


 「うん、ごめんね、あまり書けて無くて」


 「長谷川さん、これ


 サキさんの声が心なしか震えている


 「え? そうなの、ならちょっと安心かな」


 「長谷川さん、これですね、


  え~と、よくわからない?


 「銃器と兵器、何が違うの?」


 「分類が曖昧な部分もありますが、少なくとも複数の人間が居ないと

  扱えない物や、飛行機を落とす為の物を銃器と呼ぶのはどうかと思いますよ」


 「そんなのが、リストにあったんだ」


 「ありましたね、とりあえず長谷川さん」


 「何かな?」


 「毎晩、頭の中のリストを1000行、ノートに書き写してください」


 「無理、夜寝る時間がなくなっちゃう」


 「大丈夫です、やれば出来ます」


 「無理だよ、しかも明日ギルドに次の依頼受けにいくからね、

  多分、明後日には出発するよ」


 「それじゃあ、それまでに出来るだけ、リスト書いておいてくださいね」

 

 「わかった、なるべく頑張ってみるよ」


 「よろしくお願いしますね」

 

 サキさんが足元に置いたライフルを持って行こうとしている。


 「サキさん、さすがにそのバレットだっけ、重いでしょう?」


 「せっかく自由に触れるバレットがあるんですよ、

  ああ、なんで私は向こうで筋トレをやらなかった。

  こうなるとわかっていたら、意地でも筋肉を付けたのに」


 「危ないからやめなさい、リスト頑張るから」


 「仕方ないですね、リストよろしくお願いします」

  とガバメント?を手に部屋に戻って行った。






  翌朝、起きると部屋の前でサキさんが待っていた。


  「リスト」

 

  ノートを渡す、一通り目を通して


  「はい、明日もよろしくお願いします」

   とノートが返された






4人で朝食を食べてからギルドに行ってカークさんの列に並ぶ


「おはようございます、ナオさん」

「おはようございます、カークさん」



「これが昨日話していた依頼です」


 ワイバーン討伐依頼

 報酬 金貨50枚

 冒険者ランクC 10人以上を推奨


 エルマイノ村

 ワイバーンによる家畜被害


 追加報酬、エルマイノ村往復の馬車費用




「このバールキナから、馬車で2日の距離ですね」


「分かりました受けます」


「出発はいつにしますか?」


「明日、出発します」


「では、明日朝ギルド前に馬車を置いておきます」


「はい、よろしくお願いします」

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