第2部 第4話 お願いだから、せめて説明させてください

暴れるの手から、なんとか拳銃を取り上げる事に成功した。


暴れ疲れたサキさんが、少し落ち着きを取り戻した頃を見計らって

僕は、黒いもやに包まれた3人に向かって話を始める。


「はじめまして、僕は1年程前にこの世界に来た日本人で

 長谷川直弥はせがわ なおやといいます。

 こちらがエルフのミラセア、そして獣人族のミーラとキーラです。

 どうしてここに来たのか、いまだに理由はわかりませんが、

 紗希さんは半年くらい前に、こことは別の国に来ていました。

 皆さんは紗希さんのお知り合いですか? 」


「ええ、私は西園寺さいおんじ 綾女あやめこちらが一条いちじょう 真輝まき早乙女さおとめ 椿つばき

 紗希の高校時代の同級生ですわ。

 長谷川さん、あなたの事も紗希のお父様からお聞きしています」


「えっ、お父さんから?」


「そうなの、長谷川さんが行方不明になって、それから紗希の失踪でしょう?

 長谷川さんが居なくなってから、半年も経っていたけど、

 あなたの家に行った時に、お父様に長谷川さんの事を知らないか聞かれたの」


「そうですか、結星さんが・・・それは心配されているでしょうね」


「ええ、お父様は(警察にあなたの部屋を見せた事で)ひどく憔悴しょうすいされていたわ」


「そうなの・・・・」


「それで、現在の皆さんの状況なのですが、半年前の紗希さんと同じように

 今は黒い靄というか、影のようなモノに全身を覆われています」


「そうね、別に苦しいわけでは無いけど、喉の渇きや空腹すら感じないのは

 かえって気持ち悪いわね」


「この状態は、この世界での呪いという症状だそうです。

 だいたい9ヶ月ほど前の事ですが、僕は偶然

 こちらに居るミラセアの呪いを解くことができました」


「偶然・・・ですか?」


「はい、まったくの偶然です。

 ただ、ミラセアの呪いについては、この世界では有名な話ですので

 それを解いた僕の事が多くの国に伝わりました。

 その後、黒い靄につつまれた紗希さんが国に保護されて

 その呪いを解くように依頼があって解呪しました。

 今回も、皆さんの呪いを解くために呼び出されました」


「なるほど、つまり長谷川さんは、この状態を治せるのね?」


「いえ、それが、そう簡単な話ではなく、解呪の方法にもかなり問題がありますし

 解呪が成功した場合も、その解呪後に問題があります」


 呪いを解くために、あなた達の全身をくまなくさわらせろとは言いにくい、

 しかもその後は奴隷契約が成立して、解除が出来ないなんて・・・・

 これ、どうやって説明したらいいんだろう?


「長谷川さん、もういいよこんな奴ら。

 このまま放っておいて、グザシマイスに帰ろうよ。

 私はトリガーハッピーでいいから、

 向こうで銃を撃ちまくって幸せに生きていくんだ」


 サキさんが、すっかり


「サキさん、落ちついてください」


サキさんが靄に包まれた3人の前に立って

結星ゆうせいさんが見たら、ドン引きしそうな悪辣な表情で

かつての友人に声を掛ける。


「ねえ、真輝。あなたはM4カービンがいい? それともAKかな? 

 サブマシンガンやハンドガンもアサルトライフルもが持てるんだよ

 しかも、射撃練習だって、ほぼ撃ち放題」


「自分の・・・銃? 撃ち放題?」


どうしてだろう、黒いシルエットしか見えないのに、

動揺している様子が感じられる。


「ねえ、椿。スナイパーのあなたが使う狙撃銃なんだけど、

 M40? SVD? M21? PSG1? L42? 

 選り取り見取りだよ・・・こっちは試射してから決めるのかな?

 もちろん撃ち放題・・・どれがいい?」


「自分の・・・狙撃銃・・・試射できて・・・撃ち放題」


ああ、こっちもシルエットだけなのに

うずくまって、考え込んでるよ


「綾女、小隊支援火器だけど、定番のM249以外にね、結構見つけたよ。

 でも、私では、わからない重火器がいくつもあるんだ。

 M60重機関銃もあったけど、M202ロケットランチャーとか、好きよね?」


「色んな重火器、ロケラン・・・撃てるの?」


こっちのシルエットは、何かを肩に担ぐようなポーズをしている

よく解らないけど、何かをイメージしているようだ。


「この間はね、ドラゴン相手に120mm迫撃砲とかTOWミサイルとか

 自衛隊の91式携帯地対空誘導弾スティンガーを撃ち込んだんだ、

 うらやましいでしょう・・・・」


そこまで言っておいて、急に後ろを振り返り


「・・・・・まあ、!!」

と、言い捨てた。



この女性ひとは、何をあおっているんですか?


「サキさん、どっちにしろ彼女達の呪いを解かないといけないんですから、

 ちゃんと説明しましょうよ」


「なによ、呪いを解いた事で結果的に長谷川さんと奴隷契約を結んでも、

 この半年で一回も私にじゃない。

 そもそも、武器弾薬全部タダで提供してくれる長谷川さんに、

 このたちが逆らえる訳無いでしょ、実質奴隷みたいなもんよ」


 ミーラが近づいてきて、僕とサキさんの袖を引っ張った。


「どうしたの、ミーラ?」


ミーラは何も言わずに指を差した。


指を差した方を見てみると、3つの黒い人影が床に正座した状態で頭を下げていた。

「ど・・・どうしました?」


「もうし訳ない、ごめんなさい、私達が悪かったです」

「というか、紗希、なんで、そんなにいるんだ」

「そうだよ、どれだけお金があっても出来ないよそんな


「わかった? 長谷川さん、こいつらはなの」


サキさんはドヤ顔をしているが・・・・ワザと?


「ごめん、多分、僕には君達のそういう所、まったく理解出来そうにないから、

 お願いだから、せめて説明させてください」






※ミリタリーファンの方以外は”おいてけぼりの回”だと思います。

 雰囲気を感じて頂ければ幸いです。


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