第2部 第3話 皇都の呪姫

センタの港を出て13日後、やっと遥か彼方に陸地が見えて来た。

微かに見えるのが港町ノーフレスらしい。


「ドラゴンスレイヤー殿、私も長年船に乗っているが、

 こんな楽な航海は初めてだ、ほんとうにありがとう」

 ブーマット船長にはの活躍のせいで、

 こんなお礼を言われてしまった。


「いえ、こちらこそ。いい訓練になりました」

訓練だよ、そこの3人、スッキリした顔をしてるけど、

絶対にレジャーじゃないからね。





港からノーフレスの街中に入ると。

そこには、住む人々の衣装からしてまったく違う文化があった。

みんな袖口の広い、どこか浴衣を思わせるシルエットと色合いの衣装を着ている

特に女性の衣装は鮮やかな彩色で様々なデザインが印象的だ。


まずは、お約束のギルドに挨拶。


受け付けに並んで順番を待つ。

「すみません、マルザムから今到着しました。

 カリキュレーターのナオです。冒険者ランクA。

 明日には皇都に向けて出発しますが、挨拶にきました」


「ドラゴンスレイヤーのナオさまですね、

 よーこそノーフレスへ、ギルドをあげて歓迎させて頂きます」


「ありがとうございます。今日は挨拶だけですので、これで失礼します」


よし、終わった。

しかも、へんな冒険者やにも絡まれなかった。

これは、幸先いいぞ。

「さあ、宿を探しに行こう」




宿屋【小舟達の入り江】


「すみません、部屋空いてますか? 1人と4人です」

「はい、銀貨4枚になります。何日ですか?」

「明日には出発します」


「さあ、久しぶりに揺れてないベッドでゆっくり眠ろうか・・・」









・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

どうして? どうしてだ・・・・・


『・・・・・・・・・・・・・・・』








ドンドンドン ドンドンドン  ・・・・・・


焦ったようにドアを叩く音で目が覚めた。

目が覚めた僕は・・・

全身にびっしょりと気持ちの悪い汗をかいていることに気が付いた。


「ナオ、どうしたのじゃ。今、お主の叫び声が聞こえたぞ」


・・・・・ちょっと待て、僕は、いま、



慌ててドアを開けると、そこにはミラセアが青い顔をして立っていて

その横にはサキさんとキーラ、ミーラの姿もあった。

みんな、ひどく心配そうな顔をしている。


「ごめん、ミラセア。たぶん寝ぼけたんだと思うけど。

 僕、何か叫んでたの?」


「そこまでは聞き取れんかった。

 しかし、お主の初めて聴いたぞ」


僕は・・・一体何を叫んだんだ? ダメだ、思い出せない。


「ごめん、ミラセア。 僕も何を叫んだのか憶えて無いんだ。

 多分酷い夢を見たんだと思う、騒がせて本当にゴメンね」


「それなら、よいのじゃが・・・・」


「みんなも、騒がせてごめんね」






そして、翌朝


「それじゃあ、皇都に向けて出発しようか」


【ストレージ】 ヴォン♬


僕はストレージから、今、乗っている車を取り出した。


取り出したのは、ハンヴィに比べると小さな車体、

なんでもUAZ-3151という、ロシア製の車らしい。


「長谷川さん、ハンヴィーみたいにメジャーな車じゃないから、

 イマイチ盛り上がらないんですが?」


「大丈夫だよサキさん、一般の人はハンヴィーもUAZ-3151も

 どっちも知らないから」


ああ、確かにパワーは無いけど、この車、小さくて運転しやすいよ。


途中でサキさんと運転を代わりながら、休憩を挟みつつ気楽にドライブ。


道中、何台も馬車を抜きながら走らせて行く。


途中で抜かれたのに気が付いて、追いかけてくる馬車もあったけど

気にせずに走っていたら、いつの間にか見えなくなった。


街道の向こうに城壁に囲まれた都市が見える、中に高い尖塔が見えて来た。

「おお、あれがユーヴァルト皇国の皇都オーヴェリアじゃよ」


都市に入る門のかなり手前の物陰で車から降りて、UAZ-3151をストレージに収納する。


「さあ、行こうか」

門の前の衛兵にギルドカードを見せて中に入った。








なかなか賑やかな都市だ、中央の大通り沿いにギルドの建物を見つけた。



中に入って受付の列に並ぶ。

「すまない、カリキュレーターのナオです、冒険者ランクA。

 こちらのギルドに呼ばれていると聞いてマルザムから来たのですが

 この後どうしたらいいか教えてくれませんか?」


「申し訳ありません、すぐに確認しますので少々お待ちいただけますか?」


「はい、よろしくお願いします」

しばらく待っていると、


「お待たせいたしました。ギルドマスターがお待ちですので、こちらにどうぞ」

と奥に案内された。






応接室には、黒髪をキレイにオールバックにした細身の男性がまっていた。

いかにも仕事が出来そうな風貌だ。


「はじめまして、ドラゴンスレイヤーのみなさま方

 私は、この皇都オーヴェリアのギルドマスターでハルツという、

 急な呼び出しに応えてもらって感謝する。

 こちらの予想よりも、かなり早い到着だったので驚いたよ。

 ちなみには皇城で保護されている。

 すぐに案内できるが、これからで大丈夫かな?」


あれ? 今、変な事を言われたぞ。


「すみません、ギルドマスター 気のせいでしょうか? 

 今、って言いました?」


「ああ、言ったが・・・聞いて無かったのか?」


「はい、センタでは、呪姫様が現れたとだけ聞かされました」


「すまないな、皇城で保護されている、黒いもやで覆われた人はいるんだ」


「3人おるのに、なんでわらわ扱いなんじゃ? おかしいであろうが!!」

ミラセア、君の言う事はもっともだ。





すぐに皇城から馬車が呼ばれて、ギルドに到着した。

その馬車に乗って、高い尖塔のある皇城の敷地内に入っていく。

謁見の間に通された僕たちは、まず皇帝陛下と謁見した


「そなたがナオ殿か、そして呪姫様、無事に戻られて何よりじゃ。

 余が、皇帝オラシアムス・ユーヴァルトじゃ、

 急に呼び立てて申し訳ないが、皇国で保護しているあの方たちを

 救ってあげてもらえるか?」


失礼かもしれないが、皇帝は白髪のといった雰囲気の

おじいちゃんに見えた。


「皇帝陛下、今回も僕に呪いが解けるかわかりませんが、とにかくやってみます」





今、僕は侍従の方に案内されてが居る客室のドアも前にいる。

そして中からはが聞こえてきている・・・



「ねえ真輝まき紗希さきもこの世界に来てるのかしら?

 どうしよう・・・ここの人達、剣とか槍しか持ってなかったわよ?」


「だとしたら、最悪だな。あのが手元に銃が無い状態で

 正気を保てる訳がない。最悪、もう生きてないかもしれない」


綾女あやめちゃん真輝まきちゃん、もし紗希さきちゃんが銃の形の木切れを

 手に持ってても絶対に笑ったらダメだからね。

 優しくしてあげようね」


3人分の笑い声が爆発した・・・・


「ぷっ!! はっ、・・・だっ・・だめよ椿つばきちゃん、我慢できませんわ

 それを想像しただけで笑ってしまいますわ」


サキさんがプルプルと震えている・・・


「くっくっくっ・・・椿つばきやめろ、おっ・・お前ワザと言ってるだろう、

 さすがに紗希さきも怒るぞ」


「えへへ、だって、紗希さきちゃん、男と逃げたんだよ、

 許されないよ、そんな事」


バタン


サキさんが腰の後ろに付けたホルスターから拳銃を抜いて

部屋の中に飛び込んだ。



「あんた達、どこに風穴あけてほしいかリクエスト聞いてあげる」

3人に向かって自動拳銃SIG SAUER P220を構えるサキさん


「ミラセア、キーラ、一緒にサキさんを止めて」


「「「紗希」」ちゃん」


サキさん、解呪するまでもなく・・・知り合いみたいだね



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