第2部 第5話 解呪と罪悪感

とりあえず・・・・


呪いの解除後に何故か僕と奴隷契約が成立してしまい

それが解除出来ない事。

奴隷契約を結んだ場合、衣食住については僕の責任になるけど

もし僕が何か命令した場合、それに逆らえば飢餓感に似た感覚にさいなまれる事。

この呪いを解呪しなかった場合は、何も触れられない状態で

モノに触る事も何か食べる事も出来ずに数百年を過ごす可能性がある事を説明した。


僕は真面目に説明しているのに、

表情は見えないが、僕の話が全てスルーされているように感じる。


「「「それでは、解呪をお願いします!!」」」


「いや、大丈夫なの? ちゃんと聞いてました? 奴隷契約なんですよ!!」


「「「まあ、今の紗希の状況を見たら大丈夫でしょう!!」」」




「それじゃあ、誰から解呪しますか?」


「長谷川さん。解呪って、具体的にはどうするんですか?」

「僕が手を触れた部分の黒いもやが薄くなって消えます、

 そうやって呪いを消していきます」

「それじゃあ、ここはやっぱり、リーダーの綾女ちゃんから」


「私?」


「ほら、綾女ちゃんって男の人への耐性があまり無いから、

 他の人の後だと、待ってる間に緊張状態で消耗してそうだし」


「恥ずかしいですが、確かに・・・・そうかもしれませんわね」


3人、いや、サキさんを入れて4人か? 仲がいいね・・・


「でも・・・その前に、サキさんが解呪出来るか、

 それも試してもらってもいいですか?」


「えっ? 長谷川さん? 私?」


「『この世の生まれで無い者』この条件はサキさんにも当てはまるんだよ

 今回は試してみてください」


「いいわよ、綾女、触るね」

 サキさんが手をの伸ばすが・・・


「・・・ダメ、はじかれてるのかな?  触れない」


サキさんは綾女さんの腕以外の場所を触れようとするが、やっぱりダメみたいだ。


「サキさん、ありがとうございます。

 次は、僕が腕に触れるので、その様子を観察させてください」


綾女さん?に手を伸ばすと、

黒い靄の人影はピクっと一瞬だけ避けるように反応した。


僕の右手は、抵抗も無くもやにめり込んでゆき、

中には暖かい肌の感触があった。


「あっ・・・・」


しばらく触れていると、黒い靄は溶けるように消えて行って、

そこに白い肌が現れた。


右手を徐々に綾女さんの手首の方に移動させていく


「あっ、あっ・・・」


綾女さんの手首から手に、手を握ると・・・その手が震えているのがわかる


「解呪は問題無いようですね、すみませんでした。

 サキさん、をお願いします」


目隠しと聞いて、3つの人影が大きく揺れる。


「目隠しですか? 

 長谷川さん、呪いを解くのに私達は目隠しをする必要があるのですか?

 理由を教えてください」


変な勘違いをさせちゃったか。

そもそも、あの状態で目隠しなんか出来るのかな?


「綾女さん、違いますよ。目隠しをするのは僕です」


「・・・どうして、長谷川さんが目隠しをするんですか?」


「いいの? 綾女? その黒いもやの下、たぶん裸なんだけど?」


「「「えっ?」」」


「良いなら、このまま解呪しちゃおうか。

 長谷川さん、綾女の裸、スゴイから覚悟してね」


「サキさん、言い過ぎですよ。

 綾女さん、靄の下は、おそらく衣服が残っていないので、

 僕が目隠しをしてサキさんに、僕の手の方を動かしてもらいます」


「紗希に・・・ですか?」


「理由はわかりませんが、ミラセアやキーラ、ミーラとは、

 呪いが解けるまで、言葉が通じないんです。

 解呪の最中に綾女さん何か頼んでも、聞き取れないので」


「綾女、私じゃ無くて、自分でする方法もあるけど?」


「自分で?」


「そう、あなたが長谷川さんの手を掴んで、自分でするの。

 その手を全身くまなく・・・押し付けるの」


「男性の手を掴んで、自分で? ・・・それは絶対無理」


「じゃあ・・・・どうする?」


「・・・紗希、おねがい」


「了解、任されました」






目隠しをする。


(おそらくサキさんに)右の手首を掴まれた。

右手に触れる感触を、なるべく意識しないようにと考えてはいるが、

目隠しをすると、イヤでも手の感触や耳に意識が集中してしまう。


「あっ」「ひっ」「ぐっ」「紗希、そこダメ」「それ以上は無理」

「無理っ」「無理っ」「無理っ」「・・・・・」


 しばらく、聴覚と右手の触覚から神経を削られるような時間が続く


「あれっ? 綾女?」


「どうしたんですか、サキさん?」


「綾女、気絶したみたい・・・よしっ、このまま続けよう」


「・・・続けて大丈夫なんですか?」


「意識が無い方が、綾女には良いと思う」


それから、意識の無い綾女さんの解呪を続行したのだけど、

綾女さんの口から自然に漏れる声に、神経を削られる事になった。





「綾女は終わったけど、次はどっちかな?」


残った大小2つの影が、お互い顔を見合わせた。

「なあ、椿、提案があるんだけど?」

「奇遇ね真輝ちゃん、私もあるんだ」


「同時に言おうか?」

「そうね、せーの!」


「「先に受けて、紗希(ちゃん)と交代して」」




「二人共・・・なかなか、素敵な茶番劇だったわね、どうするの?

 どっちが先かな?」


 紗希さん、悪役が板に付いて来たよ。




背の高い方の影が動いた。

「よし、次は私が解呪を受けよう」


「真輝、良い度胸ね」


「ただし、紗希の手は借りない」


「へー、それじゃあ」





「ああ、そちらの赤い髪のメイド服を着た女の子にお願いしよう」


 サキさんの予想外の手に出た。


「えっ? で でも言葉が通じないわよ?」


「フッ! どうせ、紗希がこちらの言う事を聞くとは思えない。

 それならば、誰でも一緒だろう。長谷川さん、それで頼む」


「分かりました、ミーラ、僕の手を掴んで彼女の解呪をお願いしていいかな?」


「承知いたしました」


サキさんが酷く悔しそうだ・・・・


「ごめんね、紗希ちゃん、私もそっちの女の子がいいな」


「椿まで、そんなに私が信用できないの?」


「うん、無理」


「ぐぬぬ~」






「では、ナオ様、手を失礼しますね」


「ミーラ、お願いね」


「はい、おまかせください」



それでも・・・・・


「くっ」「あっ」「ああ」「ひっ」「んぐっ」


「んん」「いやなの」「そこも?」「ぐっ」「はぁ~」


僕の神経は確実にダメージを受けていた。






3人の解呪が無事にとは言えないが、一応終わって、僕は目隠しを外す。

目の前には、シーツに頭まで包まった3人が横たわっていた。


前回は、これにサキさんのが加わっていたから、

今回は、罪悪感に関してだけは軽いかもしれない・・・・






「あれ・・・・・私、どうして寝てるの?」


その人は、気が付いたのか、頭から被せられたシーツを剥がして起き上がった。


『綾女の裸、スゴイから覚悟してね』


さっきのサキさんの言葉が脳裏によみがえる。


僕は、言葉も出ない。


綾女さんも、言葉が出ないようだ・・・・






再び、シーツの中から聞こえるが加わってしまった。


これまで以上の罪悪感が、僕に重く、のしかかってきた・・・・・

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