第2部 第6話 全力で猫を被ってください

シーツの中から漏れてくるに、

いたたまれなくなった僕は部屋の外に出た。


そこにいた侍従さんに3人分の女性用の衣類をお願いして、

しばらくその場で待っていた。


侍従さんが、気を効かせてくれたのか、大きな箱をいくつも抱えた女性を3人引き連れてやってきた。


「皇帝陛下からでございます。どうぞ、ご自由にお使いください」

「ありがとうございます」


ドアをノックして顔を出したミーラとキーラに、その大量の箱を次々と手渡していく。


それから1時間ほど経っただろうか・・・

「ナオ、もう入っても良いぞ」


その言葉を聞いて、やっと部屋の中に入る決心ができた。


そこにはいつものメンバー以外に、当然ながら初めて見る女性が3人。

寝台に腰かけてうつ向く女性を両側から支える様にして2人の女性が座っている。



シルエットの段階で、ある程度分かっていたが、

背の高い女性が2人と小柄な女性が1人


それぞれが、この皇国独特の袖口の広い鮮やかな衣装に身を包んでいる


中央に座る背の高い女性、こちらが西園寺綾女さんか

長い軽くウェーブの掛かった黒髪をサイドテールにしている

その女性が耳を真っ赤にしてうつ向いて座っていた。

深紅の衣装が良く似合っている。

先ほどの光景が網膜に焼き付いて・・・非常に女性らしい体系をしておられます。


これまた背の高い女性は一条真輝さんだろう

薄い茶色の髪、前髪がちょっと長めのショートカットかな

こちらはすらりとした体形でカッコイイタイプだ。

明るい青の衣装が、まるであつらえたようだ。


そして小柄な女の子が現れた、早乙女椿さん。

黒髪をボブカットにしてしている。

サキさんを含めて同じ年齢のはずなのに・・・・

すみません、ミーラと同じくらいの年齢に見えます。

黄色を基調にした衣装が可愛らしさを強調している。



「呪いは解けてますから、もう言葉が通じるはずです

 ミラセア、キーラ、ミーラこっちに来てくれるかな」


「解呪は終わったようじゃな」


「改めて紹介します。彼女達がウチのメンバーのミラセアです、

 こちらが姉のキーラで妹のミーラです」


西園寺さいおんじ綾女あやめです・・・」


一条いちじょう真輝まきです」


早乙女さおとめ椿つばき


「ここはユーヴァルト皇国の皇都オーヴェリア、その皇城にいます。

 みなさんは、この国の皇帝オラシアムス陛下に保護されました」


3人の顔色がみるみる曇っていく

「なぜ、そんな大事おおごとになっているのですか?」


「さっきも説明しましたが皆さんの状態が、

 こちらのミラセアが呪われていた姿と酷似していたんです。

 その呪いというのが、ミラセアが千年ほど前に

 凶王という魔王みたいな存在と戦った時にかけられた呪いで

 この世界を救ってくれた恩人の逸話として、

 この世界では有名なお話になってまして。

 おそらくですが、どこの国であっても、大事に保護されます」


「これから・・・どうするの?」


「それでは、これから皇帝陛下に挨拶に行きますので、

 皆さん


「無理!!」

 椿さんが全力で否定している。


「でも、ここで挨拶をしておかないと、勝手に城から出られませんよ。

 覚悟を決めてください、サキさんフォローよろしくお願いします」


そして、みんなに覚悟を決めて貰って、呪いが解けた事を外の侍従さんに伝える。





すぐさま、皇帝陛下への謁見の準備がされて、僕達は謁見の間に呼ばれた。


謁見の間では玉座に、笑みを浮かべた皇帝陛下が座っている。


「おお、呪いの中におられたのは、そちらの女性達か、

 無事に解呪出来たようで何よりじゃ」


サキさんが、一歩前に出て説明する。

「恐れながら、皇帝陛下、この者たちは私の学友でした。

 友人達を保護頂きありがとうございました」


「おお、サキ殿のご友人でしたか、それは無事でなによりじゃ。

 それで、今後はどうされる予定かな?」


「はい、せっかく縁あって、こちらの国に来させて頂きましたので。

 この皇都で見分を広めさせて頂き。

 いい機会ですので、呪姫さまの故郷である、

 隣国エーライザル王国に、ご挨拶に行こうと考えております」


「それは、よい考えじゃ、この皇都でも是非ゆっくりしていってくれ」


「はい、お心遣いありがとうございます」


よし、ミッション・クリアー。


皇城から出た僕たちは、街で昼食を済ませた後、

3人の服を

目立たない物に着替えるために服屋に入ってもらう。


「それじゃあ、僕は宿を決めてくるから、ゆっくり服を選んでいてね」





【睡蓮の宿】


「すみません、男性1人と女性7人なんですが部屋ありますか?」


「空いております、1人部屋と3人部屋と4人部屋になります

 一泊で金貨1枚と銀貨8枚ですが何泊されるご予定ですか?」


「とりあえず3泊でお願いします」


「お食事は、ご用意しますか?」


「いえ、いりません」


 宿の人に金貨6枚を渡しておく。


そして、決めた宿を報告に服屋に戻るが・・・


もちろん、まだだよね、わかっているよ・・・・

ようやく服が決まったのは、もう夕食の時間だった。


皆で夕食をすませてから宿に戻った。





【睡蓮の宿】


「明日は、ここでの身分証明書の取得も兼ねて、

 3人のギルド登録とパーティー登録だね」


「長谷川さん」


「何でしょう西園寺さん?」


「とりあえず、手に入る銃の種類を見たいのですが、

 リストか何かありますか?」


「これ」

 横からサキさんが自分の持つリストを渡す。


「なんですの、これ?」


西園寺さんが、手渡されたリストのページをめくり出す。

リストを握る手に次第に力が入っていく


「これ・・・どういう事ですの、紗希?」


「どうもこうも、これが長谷川さんの持っているギフト、ストレージの中身

 このストレージには、どこの国の兵器庫かっていうぐらい武器弾薬が入ってたの。

 ちなみに、そのリストはまだ途中ね、今後も増えてく一方だから。

 弾薬の種類からすると、おそらく中に戦車も入ってるんじゃないかな?」


「・・・なんですか、その夢のようなギフトは」


「そりゃ、私達からすれば夢のギフトだけど、

 銃に興味の無かった長谷川さんには唯の文字の羅列だからね」


「紗希、この世界に来ると、そんなが手に入るの?」


「可能性はあるんだけど、長谷川さんのギフトがあまりにも便利なので、

 自分のギフト検証するの、つい忘れてる」


「紗希、あなたね、どれだけ長谷川さんに頼り切ってるの?」


「まあ、西園寺さん。僕はこういう知識が無いから助かってるよ」


「長谷川さんが、そうおっしゃるなら良いのですが。

 あまり酷いようなら遠慮なく言ってくださいね、

 私達からもきっちり言いきかせますので」


「綾女達に何を言われても良いよ、どうせ私はトリガーハッピーだし」

サキさんが、ふてくされた態度で言い返している


「そういえば、そのって何ですか?」


「元々は銃を撃つことに快感を覚える人の事を指した言葉なんですが、

 最近では、撃つ事に気を取られて肝心な事を忘れる人間に使われてます」


「・・・そうなんだ」





 早乙女さんが、サキさんの袖を引っ張っている。


「何よ椿?」


「紗希ちゃん、ごめんね」


「もういいわよ、怒ってないから」


早乙女さんが首を横に振って


「違うの、紗希ちゃんが行方不明になった時にね、警察に捜索願いが出てね」


「まあ、そうでしょうね」

サキさんが、諦めた様子で笑っている・・・


「私たちが、気が付いた時には。

 警察の捜索が入った後だったの」


「え?」

 サキさんの顔が真っ白に変わった


「紗希ちゃんの部屋の銃が、全部エアガンだって確認出来るまで、

 紗希ちゃんの家の周り、警察官が応援呼んだりして大変だったみたい」


 うん、サキさんの顔がおもしろい事になっている


「お父さん、なんで警察をあの部屋に入れたの?」


「サキさん、さすがにそれは無理があるでしょ」


「年頃の娘の部屋に、入れたらダメでしょ」


「娘の部屋というか、見た目は長谷川さんのストレージ並みの銃器庫だよね」


「えっと・・・そうなの?」


「違います」


「警察は、ガレージの方も調べてたよ」


サキさんは、しゃがみこんで頭を抱えだした。

「私もう、日本に居場所が無いかもしれない」


「サキさん、ガレージに何を置いてたの?」


「その内整理しようと思ってた、米軍の払い下げ品・・・」


「少なくとも、日本警察のブラックリストに載ったかもしれないね」


「椿、あんた達だって他人事ひとごとじゃないでしょ?」


「紗希ちゃんの事があってから、私たち全員でを借りて預けたから大丈夫」


早乙女さんが、実に晴れやかな顔でピースサインを見せていた。


「なによソレ、あんた達だけズルイ」


「紗希、君の犠牲は無駄じゃなかった」


「ええ、倉庫を借りようって提案した、あの時の私を褒めてあげたいわ」







「それじゃあ、明日はギルドに行こうか。

 それじゃあお休み」

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