第3部 第2話 耐えられないほどの気まずさ 2
〖マカ〗
「そもそも、あの黒い
サキ殿、
5人の視線がだんだん鋭く・・・
私は・・・まるでその視線に押されたかのように一歩後ろに下がっていた。
「ちょ・・・ちょっと待ってくれ」
かすれて
「「「「「は?」」」」」
私の耳に届いたのはたった一音だったが、その中に今にも噴き出しそうな危険なモノを感じていた・・・
「わっ・・・私だって出来る事ならちゃんと説明したかったんだ。だが、ナオの中に閉じ込められた状態ではそれが不可能だった・・・それはわかってほしい」
「「「「「で?」」」」」
一音で切るのはやめてくれ・・・
「いっ・・・言っておくが、この事をナオは知らない・・・というか、おそらく気がついていない」
《ナオ・・・すまない・・・助けてくれ・・・》
「マカ・・・僕が気が付いてないってどういうコト・・・ちゃんと説明してくれる?」
《ありがとう、ナオ・・・》
「ナオ・・・あの時の事をよく思い出してほしいんだ」
「あの時って?」
黒い玉座の前、今は何も無い床を指さしながら
「この場所で黒い塊になって倒れていたミラセアクアラ殿、彼女を助けようとした我々がどういう行動をした?」
よし、ミラセアクアラ殿の視線だけちょっと弱まった気がする。
「どういうって・・・あの時はマカと一緒に、とにかくミラセアが呪いで死なない様に変質させようって・・・そしたら、マカがちょっと失敗したんだっけ?」
あっ・・・また強くなった。
「そっ・・・そうだ、あの時のことだ。思い出してくれ、我々はどうやって呪いを変質させた?」
「どうって、あの時は・・・マカも倒れたままで、目の前のミラセアらしき黒い塊に両手を伸ばして・・・・・あれっ?」
「思い出したか? そう、両手で触れたまま一緒に右から変質させていったんだ・・・触れた手は動かしていない」
「それじゃあ、あの奴隷商さんのところでミラセアに会った時のアレは?」
「こっちの世界に転移してきた時点で、ミラセアクアラ殿がバールキナの街に居る事はわかっていた。だから、可能性は低かったが・・・もしミラセアクアラ殿に出会って、黒い靄に触れた時にはすぐさま解呪できるように準備だけはしていたんだ」
「それは何と言うか・・・かなりの運任せだね」
「ああ、実際に奴隷商で出会うまで3ヶ月かかった。奴隷商でのアレはまさしく千載一遇のチャンスだった・・・だが、不安要素もあってな」
「不安要素って?」
「私一人で黒い靄を取り除こうとするとけっこう時間がかかる。その間、ナオにはミラセアクアラ殿にずっと触れていてもらわなければならなかった」
「それはそうなんだけど・・・どうやって?」
「ああ、だからナオに触れ続けて貰うために、あえて触れた部分の
「そんな理由? 他に手は無かったの?」
「すまない、腕に触れたまま別の部分を解呪をする事も方法として可能だった。ただ、実際にそんな不自然な事が起きれば、ナオの性格からしてまず触れるのを止めて理由を探ろうとしただろ?」
「うっ・・・確かにそうかもしれない。もし腕に触れているのに、いきなりミラセアの頭の部分から黒い
「まあ、それでもナオの事だ、黒い靄が全部消えるまで触れていたとは思うが、それでも変に勘繰られるのは避けたかったんだ。すまない、その結果・・・ナオが触れるとその場所が解呪されると思い込ませてしまった」
「ああ、そうだね・・・僕も、今の今まで、そう思い込んでたよ」
「どうか許してやってくれ。そう思い込んだナオは、サキ殿、
「どうしてだろう、その言い方には悪意を感じる。マカ、もしかして僕に責任を押し付けようとしてない?」
「そっ・・・そんな事は無いぞ・・・これは事故だ、誰の責任でも無い。そりゃ、この鋭い視線の何割かをナオが持っていってくれれば良いなとか考えはしたが」
「でもそれじゃあ・・・僕が目隠しして、ミラセアに手を持ってもらって罪悪感に耐えていた・・・あれは?」
「いや、目隠しは有効だったと思うぞ。ただ、今後解呪する時は目隠しをしたまま腕に触れるだけで
サキ殿が鬼の様な形相でナオの襟首を掴んで締め上げている。
「ふざけるな、あれだけさわられたのが・・・全部無駄?」
「サキ殿、く・・くるしい。
「色々触られて、全部見られたのに・・・あれが全部無駄?」
「気持ちはわかるがシーツの件は事故だ」
ダメだ、
「あんな所まで触られたのに・・・あれが無駄だった?」
「すまないがナオも私もどこを触ったか分かってない」
「長谷川っち、私の事なんか・・・もう触った事も忘れてるよね」
「・・・さすがにそれは言いがかりだ。」
ダメだ、こうなったら
「・・・ミラセアクアラ殿、助け・・・」
「マカ王よ、例えばなのじゃが・・・わらわ達がナオの世界に行く事は可能なのかな?」
こんな時に、そんな事を聞くのか?
「あ・・・貴女は問題無い・・・が、キーラとミーラは無理だ」
音もなく滑るように移動してきたミーラがサキ殿の右手、キーラが左手を押さえる。
「サキさま、マカ王様に少し聞きたい事が出来ましたので、その手を放してください」
「サキ、放して」
良かった、やっと解放された・・・
「さて・・・マカ王様、どうして私と姉はダメなんですか?」
この二人はさっきまで中庭で騒いでいたのに、いつの間に戻ってきたんだ?
まあ、結果的に助かったのだから、文句は言うまい。
「君らとナオの契約は
私がギフトを使って結んだ契約とは異なる。私が君達の奴隷契約を目印にして引っ張り込むのは無理だというだけだ」
「安心しました。つまり、ナオ様にその契約をして頂ければ良いだけですね」
「そういうコトだ、ただ奴隷契約の重複が可能かどうかわからん。もし契約をするなら今の奴隷契約を解除するのが先だろうな」
「なるほど、ではナオ様にお願いして。どこかの街の奴隷商で奴隷契約を解除して頂いてから改めて、その特殊奴隷として契約をお願いすれば良いわけですね」
「解除・・・・ヤダ」
「お姉ちゃん、今すぐに解除するわけじゃないけど。ナオ様について行きたいなら
奴隷契約は解除しないとダメだよ」
「う~~」
「まあ、ミーラの言う通り今すぐに解除しなければいけないわけではないからな。
実はそれよりも先に、アイロガのウーバン国王に伝えなければいけない事があるんだ」
「なんじゃ、マカ王。ウーバン国王に相談とは?」
「このままだとアイロガ・・・滅びるかもしれない」
「・・・なんじゃと? マカ王、それはどうゆう事か?」
「どういう事も何も・・・
※《》マカの声(ナオだけに聞こえる)です
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