第3部 第1話 「「「「絶対、ヤダッ!!」」」」

〖ナオ〗




「「「「絶対、ヤダッ!!」」」」


「えっ?」


いや、ようやく元の世界に帰る方法が見つかったんですよ?


しかも、僕が、いきなり却下されてしまった。




「長谷川さん、私、絶対に帰らないからね。ただでさえミニガンM134バルカンM163もお預けなのよ、少なくともアレを十分に堪能たんのうするまで、何が何でもこの世界に居座るからね」


「えっと・・・サキさん。確かミニガンM134とかとかで使ですよね?

それにバルカンM163は皆さんで話し合われた結果、危ないから使うのはまたにしましょう・・・でしたよね?」


「そうだよサキちゃん。そんな事より、これまでスナイパーライフルの見せ場が1回も無いんだよ。この子の出番無しに、このまま帰れなんて残酷すぎる」


早乙女さおとめさんが、ドワーフさんに作ってもらったライフルケース(細長い皮張りの箱)を抱きしめながら首を左右に振っている


早乙女さおとめさん・・・スナイパーライフルの見せ場って、そういえばその箱ずっと背負ってましたよね? 気がつきませんでしたが今まで出番が無かったんですか?」 


「長谷川っち、気がついてなかったの?」


「いえ、重そうだなとは思ってました。何度か『ストレージに預りましょうか?』って聞きましたが、頑なに断られますし。それ背負ったままでMP5《サブマシンガン》を構えるのって、僕の素人目にも無理があるように見えたんですが?」


「そうだよ椿つばき、さすがにその箱は長谷川さんに預けた方が良い。それよりも長谷川さん、あの変な黒い生き物にワイバーンを横取りされたせいで、あれだけ楽しみにしてたスティンガーがまだ撃ててないんだ。ワイバーンの撃墜シーンを見ないまま、ここで帰れは殺生だよ」


一条いちじょうさん、あの時のワイバーンは1体だけですよ。別にスティンガーを使わなくても、バレットで十分だって言ってませんでした?」


「そうよ真輝まき、ワイバーンならそのうちまた出て来るでしょう。それよりもTOWミサイルよ、紗希は前に大きな亀に撃ったのよね? どこかにTOWミサイルに似合いの的はいないの? それに私もフルオートが使い放題になる海のフィールドを楽しみにしてたのよ」


西園寺さいおんじさん、あんな甲殻竜みたいな的がゴロゴロ出てきたら困ります。それにこの道中、皆さん間違いなく海以上にフルオートで撃ってますよ」


あの時、ミサイルを撃ったのが僕だという事は黙っておこう。


「それに・・・」

サキさんが、言い難そうに・・・それでも、はっきりと


「その契約っていうのを解かれたら、もうこっちに来れないんじゃないの?

それだけは絶対にイヤ」


「すまんサキ殿・・・言い忘れたが、別に契約を解かなくても向こうの世界には戻れる。もちろん、再びこの世界に来る事も可能だ」


「マカ・・・そうなの?」


「ああ、ここに来た時と同じ事をすればいいんだ。先にナオが向こうに飛んで、それから皆を引っ張ればいい。それだけだ」


「そんな簡単な話なの?」


「まあな、ただ、さっきも言ったが・・・前は3人を引っ張り込んだ後で、ナオが寝込んでしまった。今度はそうだな・・・ナオ1人が向こうに跳んで、とりあえず1人を向こうの世界に引っ張り込んでみよう。後は、ナオの体調を見ながら1人ずつかな?」





「ちょっと待って・・・つまり、マカ・・・その”引っ張り込む人数”にだけ注意すれば、特に問題無く向こうの世界に戻るとういか・・・行き来が出来る訳?」


「おそらく、そのはずだ」




僕は真っ直ぐにサキさんに向き合う


「サキさん、自分の意志でこっちに来た僕はともかく、サキさんがこっちに来てもう1年と3ヶ月、西園寺さいおんじさん達だって2ヶ月になる。

結星さん達も皆さんのご家族もきっと心配している、今すぐ帰れとは言わないけど、安全に帰れるなら一度帰った方が良い」


僕の本心からの真剣な言葉は・・・


「やっぱりイヤ!! だって、警察にあの部屋とガレージを家宅捜索されたんだよ。もう向こうの世界には戻らない!! 私はずっとここにいるの」


真っ向から否定されてしまった・・・




「それに、私だって憶えてないけど自分の意志で来たの。そんなに言うなら、だけ帰る。両親に顔だけ見せて、それからスグにこっちに戻ってくる。

それでいいでしょ?」


「そこはせめて何日かくらいは時間取ろうよ・・・結星さん本気で泣くよ」


「娘の趣味を勝手にバラシタお父さんなんか


「でもサキさん。大学の事もあるし、万が一こっちでケガや病気になった時だって、向こうの世界の病院なら助かるかもしれない。だから警察にも行方不明の理由を何とか説明して、サキさんの向こうの世界での立場もちゃんと確保しておいた方が良い」


「イヤよ・・・どうせ向こうの世界での立場なんて、きっとミリオタで警察沙汰になった変な女になってるわ」


「紗希ちゃん、それって単なる事実だよ」


「そっ・・・それでも、それまでは無事に隠せてたの」


「食堂で無事だったのは長谷川さんのおかげだけどね」


「あの時だって結果的にはきっと無事だったの」


「ゴメン・・・そうだよね。後で考えれば、あの床に落ちた拳銃とサキさんの関連なんて落ちた瞬間を見られてない限り、他の人には分からなかったはずだった。僕が拾わないという選択肢もあったんだ」


「「「いや、無理でしょ」」」


「何よ・・・みんな」


「紗希ちゃん、ポシェットの中にあったなのなら、ワルサーPPKだよね?

を食堂の床に放置したまま・・・それを見捨てて外に出られる?」


「そうよ紗希、あれってグリップもかなり加工してたわよね?

あれだけ愛着を持っていた、あの子を見捨てるなんてできるの?」


「そうだな、皮のホルスターに馴染ませるのにずいぶん時間も手間もかけてたよな。

そうか、あの子を見捨てるのか?」


「・・・それは、無理かもしれない」


「紗希ちゃん、私も最初は帰るのに反対したけど。今回は長谷川っちの言う通りだと思うよ」


「椿、あんた裏切るの?」


「そうじゃなっくて、どうせ1度は帰らないといけないんでしょ? それならキチンと計画を立てて使


サキさんがM4カービンを抱きしめながら、首を左右に振る・・・


「何言ってるの椿。この子たちは物理的にも法律的にも日本には持っていけないのよ、 さっさと顔だけ出して帰ってくるわよ」


「やだな、サキちゃん。法律的には無理でも長谷川っちさえいれば

物理的にはなんだよ」



早乙女さおとめさん・・・サキさんに違法行為を勧めるのはやめてください」


「やだな、長谷川っちはで、ずっとバレットやプラスチック爆薬やスティンガー、おまけに次元神メザキユまで背負って大学に行ってたんだよ? 長谷川っちがストレージを放棄出来ない以上、結局同じ事じゃない?」


「僕、行方不明はともかく、銃刀法違反で警察に逮捕されるのは絶対にイヤですからね」


「大丈夫、誰も違法行為なんてさせないし考えてないよ。まず、向こうに行ったらドローンが買いたいな。ほら、あの赤い霧の時だってカメラ付きのドローンがあれば安全に偵察が出来たと思わない?」


「そうだな、無線もこんな旧式のマイク式じゃなくてヘッドセット式があれば両手が使えて便利だよな」


「私も帰れるなら一度帰って、せめて大学には休学届を出したいわね。それと食料品、特に日本食や調味料は大量に欲しいわね。 サキだって欲しいモノがあるんじゃないの?」


「ドワーフの王様からもらった金貨があれば、大抵のモノは買えそうだよね。

ねえ、長谷川っち。向こうでシャワー付きのキャンピングカー買っちゃう?」


「シャワーよりお風呂が欲しいわね。ログハウスにユニットバスを組み込んで丸ごとストレージに入らないかしら?」


「それにリストの解読だって今は私達の記憶頼りだからね。せっかくだから向こうでリストの内容を調べ直そうよ、ついでにノートPCに兵器関連の情報を詰め込んでおけば完璧だ」


戦闘服ファティーグやブーツも自分のを持ってきたいよね」


「綾女ちゃんは自分の下着インナーを持ってこないといけないね」


「それはダメみたい、ロケラン構えてせいかけっこうサイズが変わっちゃってて。

全部新しくしないと、結構大きな出費だわ」


「せっかく向こうに行くならヘリの操縦関連の資料が欲しいな。

どうにかしてOH-58カイオワのマニュアルが手に入ればいいんだけど」


真輝まきちゃん、いっその事向こうでヘリコプターのライセンス取っちゃえば?」


「そうだな、それも向こうで調べてみよう」


「それより、この計画の要、長谷川っちの方が問題じゃないの? 長谷川っちって下手をすると行方不明じゃなくて死亡扱いとかになってない?」


「それは大丈夫じゃないかな。確か2~3年の失踪じゃ死亡扱いにならなかった・・・はず。まあ、長谷川さんの大学の籍がどうなっているか分からないけど」


「盛り上がっている所わるいけど、念のため話しておく。ナオも含めて4人を向こうの世界に戻すのは可能だよ。ほとんど問題無く、向こうに送れるはず」


「マカ、ほとんどって? 何か問題あるの?」


「いや、私も次元の狭間があんな真っ黒だとは思わなかったからね。おそらくあのクソ野郎の影響だと思うけど、あそこを通過するとナオ以外はみんな来た時と同じで ”真っ黒” になってしまう」



「「「「えっ?」」」」


「まあ、それはナオが向こうで解呪すれば良いだけだから大した問題じゃないよ・・・ぐぇ」


いつの間にか、僕の正面に立っていたサキさんが僕の首を両手で絞めていた。


「やっぱりヤダ、私、絶対に帰らないからね」


やめて、首が締まって僕もマカも声を出せない・・・


西園寺さいおんじさんと一条いちじょうさんが両側から

サキさんの腕を引きはがしてくれて助かった。




「長谷川さん、私はもう帰らない。”むこうで解呪”って、あんなのもう無理。

それに、解呪って向こうからこっちに戻る時もだよね?

お父さんとお母さんには手紙を書くからそれ渡しておいて」


「すまない、サキ殿。これだけは言わせてくれ」


「・・・なに?」












「そもそも、あの黒いもやを解呪するのに









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