第3部 安否不明の邪神って・・・なに?
第3部 プロローグ ずっと、見当違いの所を探してた
〖ナオ〗
長い・・・本当に長い話を終えて、
マカが・・・テーブルの上のカップを手に取って口を付け・・・
「しまった・・・せっかく入れ直したのに、ぬるくなってしまった」
と、呟いた。
「まあ、あとは君達の知っているとおり、私はここオーランでやっと表に出る事ができて、ナオも失っていた記憶を取り戻してくれたわけだ・・・まあ、ずいぶん時間はかかってしまったが、君達と話ができて嬉しいよ」
「それで? マカ王よ」
「なにかな? ミラセアクアラ殿」
「いや、マカ王とナオの目的というのは全て果たされたのか?」
「まあ当初の目的の大体はね。ナオは貴女の呪いを解いて、プロポーズを受けて貰えたわけだし、私の方は、あのクソ野郎に無理やりねじ込まれた、物騒なシロモノを君達に有意義に使ってもらっているのだからね」
「「「「はい、これからも有意義に使わせてもらいます」」」」
ミリオタさん達・・・こういう時は恐ろしく息が合うね。
「ああ、もちろん期待しているよ。次の目的は、そうだな・・・ストレージの中で怒り狂っている
「マカ、僕の顔でやりきった感出してる所悪いけど、まだ話は終わって無いからね」
「私の方は大体話し終えたと思うが、他に何かあったかな?」
「まずは僕が船の中で寝込んだアレ、アレってマカのせいだったの? あの時、急に僕一人だけが頭痛と発熱、それにひどい倦怠感が襲ってきて、すっごく怖かったんだからね」
「ああ、あれはすまなかった。ナオが一人で船室にこもって『もしかしてこの世界の風土病?』とか『それだとサキさんにも免疫が無い可能性がある、もし感染させてたらどうしよう』とか色々と呟いていてたな・・・私も聞いていて辛かったぞ」
「みんなは船酔いだとか今までの疲れが出たとか言ってくれたけど。あんな症状、絶対に何かの感染症だと思ったよ。幸い3日ほどで治ってホッとしたけどね」
「まったく、そのような事になっておったとは。ナオはなんでも抱え込みすぎじゃぞ」
「ごめん、不確かな事でみんなに心配をかけたくなかったからね。でもマカ、ギフトを使って体調が悪くなるなんて、そんなことがあるんだね」
「そうだな、私もあの時が初めてだ」
「他のギフトは大丈夫なんだね?」
「体調が悪くなる前に使えなくなるな。ほら、前に使った【マインド・プランツ】があっただろ?」
「ああ、アートさん『マカ王の恐ろしい策略』って言ってた諜報ギフトだね」
「いや、気晴らしにしか使って無いから。あのギフトは一度使うと翌日まで使えないからね、あんな感じだ」
「そうなんだ・・・それと僕に生えてきたっていうギフトの話、それも早く説明してほしいんだけど?」
「ナオ、その話はもう少し休憩してからで良いか?」
「マカ、まさかと思うけど、そうやって説明せずに終わらせるつもりじゃないよね? そんなに面倒な話なの?」
「いや、どうやったら簡潔に説明できるか、一応は考えてみたんだが難しくてな・・・わかった、そこまで言うなら一度説明してみよう」
「よけいな情報は要らないから、なるべく簡潔にね」
「私の推測も含まれるし、それはなかなか難しいな。
簡潔に・・・言うと、ナオに生えてきたギフトはヒトの深層意識に働きかけるモノのようだ」
「なに・・・それ?」
「そのギフトのせいで、私はナオとの接続を断たれ、
他者の深層意識にしか接続出来ない様に固定されてしまったんだ」
「マカ・・・やっぱり
「だから、説明すると長くなるって言ったろ。まず、ナオのギフトが生まれた切っ掛けなんだが、おそらく
「ああ、ミラセアの呪いを変質させている時にマカがミスったって・・・」
「そうだ・・・ただ実際にミラセアクアラ殿には大した変質は起きなかったろ? 問題は変質させていた時の状況の方だったんだ」
「変質させていた時の状況って?」
「そもそも、あの時はナオが私の中に居て、お互いに口に出さなくても会話が出来てなよな?」
「そうだったね」
「つまり、私とナオが表層意識で繋がっている状態だったんだ。そんな状況で、ミラセアクアラ殿の翻訳ギフトが作用するようないわば深層意識の領域に【カース・ミューテーション】で触れてしまったわけだ」
「・・・よくわからないけど、それで何が問題だったの?」
「ものすごく簡単に説明すると・・・私が混乱した」
「はい?」
「忘れているかもしれないが、私とナオでは使用している言語が違う。だから私の持っている翻訳ギフトによって君と意思疎通をしているんだ」
「そういえば、そうだったね」
「対して私とミラセアクアラ殿は同じ言語を使っているから、翻訳ギフトは必要無い」
「それは、そうだろうね」
「私とナオの表層意識が翻訳ギフトを介して繋がっていた。そんな状態でミラセアクアラ殿の深層意識に【カース・ミューテーション】で触れてしまったんだ。その結果、発動したままの翻訳ギフトの働きで中途半端に接続してしまったんだ」
「接続してしまったんだ」
「そう、しかもこんな中途半端な接続、普通は時間が経てば消えてしまうモノなんだが、おそらくこの接続を保とうとしてナオの中に新しいギフトが生まれてしまったんだと思う」
「なんだろう、なにか納得がいかないような」
「そして最後にトドメになったのが、私が死ぬ前に結んだミラセアクアラ殿との契約だ」
「わらわとの契約か?」
「そう、ただでさえ未調整なナオのギフトを使った中途半端な接続だったのに、ナオとの接続が切れた直後に私自身は本人だと思い込んで貴女の深層意識と契約を結んでしまった。
そのため契約後、私の意識の繋がる先が深層意識の方に固定されてしまったんだ」
「えっ?」
「そのせいで、せっかくナオの中に移動出来たのに、
「どうにもならなかったって・・・マカ、出てこれてるじゃない?」
「ああ、そうだよ。結局のところ翻訳ギフトには何も問題は無くて、私を深層意識に縛り付けていたのはナオに生えてきた、まだ未調整まま発動した〖ヒトの深層意識に働きかける〗ギフトの方だったんだから」
「げっ」
「向こうの世界での7年とこっちに来ての2年、およそ9年の間、
必死にナオに話しかけても答えてもらえず。私は・・・全然違う所を必死に探していた訳だ」
「9年間も探していたんでしょ? 逆に、今になって良く気が付いたね」
「あの【
「アークさんの?」
「ああ、『それって、
「それって・・・ついさっきだよね?」
「ついさっきだな、そして新しく生えたギフトを見つけ出して調整するのに数分。
私の9年間の努力は全て無駄だったようだ」
「・・・なんかゴメン。でも、深層意識に話し掛けるだけのギフトって、そんなギフト何か使い道あるの?」
「そもそもこのギフトが無かったらサキ殿たちとも契約が出来ずにこっちに連れて来れて無いんだぞ」
「そういえば、そうだった」
「しかし、深層意識を介して契約を結ぶ行為がまさか 特殊奴隷 なんて扱いになるとは私も思わなかった」
「「「「「「えっ?」」」」」」
期せずして声が揃った。
「ねえ、マカ・・・さすがにそれは変じゃない? みんな、あの黒い呪いが解けた後で”特殊奴隷”になったんだよ。」
「もちろん憶えているよ、ミラセアクアラ殿の時にひどくうろたえていたからね」
「そりゃ、黒い
「それなんだが、おそらくあの黒い靄のせいだ」
「黒い靄?」
「ああ、ミラセアクアラ殿の契約は靄に覆われた状態だった。他の4人は契約は結んだものの次元の狭間を抜けきる前に黒い靄を被ってしまった。
おそらく黒い靄が原因でこちらの世界での契約の実行が阻害されていたんだ。あの靄が解けた事で、やっとこちらの世界に契約だと認識されてギルド証に表示されたんだろうな」
「それじゃあ、”特殊奴隷”って解除できるの?」
「もちろんだ、深層意識と結んだ契約を完全に解除すれば、それで特殊奴隷の方も解除されるはずだ」
「良かった・・・それなら早速・・・」
「ただ、この世界で生まれたミラセアクアラ殿はともかく、サキ殿達は解除された時点でナオとの繋がりが断たれ、そのまま自分の居た元の世界に送還されることになるだろうな」
「そうか、その方法でみんなを元の世界に帰せ・・・ヒッ」
その言葉は最後まで言えなかった・・・なぜなら、殺気のこもった四人の眼が僕を見つめていたのだから・・・
「あの・・・?」 その殺気は?
「「「「絶対、ヤダッ!!」」」」
※【マインド・プランツ】 過去の章 第4話 僕の初恋 マカが遠方にある
※説明がくどいです。すみません、何度書き直しても
どうしても説明がくどくなりましたm(__)m
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