第2部 閑話 ウーバン王の見た光景

※時系列としては、対赤い雲作戦と作戦のお話しになります。


【ウーバン王】


あの、赤い雲海を見せたとき・・・


「国王陛下、この状況で僕達に何をしろと?」


「甲殻竜の時も、赤翼竜の時も、かなり離れた所から仕留めたと聞いている。

 君達なら、あの中に入らずに、ここからでも何か出来ないか?」


「いったい何を仕留めるんですか? 甲殻竜も赤翼竜も目に見えてましたよ。

 あの雲海の下の、いったいどこに竜がいるんですか? 

 僕が町の生き残った人々を殺しかねません」




あの時、ナオ殿も私と、判断したのだろうな・・・これはもうダメだと。


そして、あの少女たちが、好き勝手に話し始めた時の・・・






「ウーバン王、少し、内密に話をしたいのですが?」


その、ナオ殿が私に話がある・・・か






天幕の中に招き、人払いをして2人で話をする。


「ナオ殿、話とは?」


「いきなりですが、ウーバン王は、あの赤い雲海の中で、どれくらいがいると考えていますか?」


「それを・・・この国の王である、私に聞くのかね?」


「すみません、あの赤い雲海を見て、何も聞かずにこの国を立ち去るつもりだったのですが、そうもいかなくなりましたので」


「ナオ殿はどう思う?」


「僕には・・・絶望的に見えますね」


「私と同じ・・・結論だな」


「まったく、大変な事にくちばしを突っ込んでくれたものです」


「何故、止めなかったのかな?」


「こちらにも、少し事情がありまして、止められないんです」


「それは、大変だが、我が国としては助かったのかな?」


「まだ分かりません。 まあ、あの達に感謝してください。僕だけなら逃げてましたから」


「それでは、あの、お嬢さん方に感謝を」


「先に謝っておきますが、あの娘達がをしても、笑って許して頂ければ有難いです」


「変な行動? 我が国の恩人をそのような事でとがめたりはせんよ」


。あと、もう一つ、これだけは約束して欲しいのですが」


「何かな、ナオ殿」


「ああして攻撃目標を湖に限定しても、すでに湖の中に住民の遺体がある可能性もあります。それに何かの影響で攻撃が湖を外れる可能性もゼロでは無いです。

その結果、万が一被害者が出たとしても、すべてはリーダーである僕の責任ですので

そのように取り計らって頂くよう、お願いします」


「私は王として、これ以上の被害を出さない為とはいえ、生存者は諦めて封鎖を命令したのだ。その責任を今さら、人に押し付ける訳にはいかんよ」


「・・・ありがとうございます」


「ナオ殿、君は大丈夫なのかな?

 聞けば、あの娘達に色々と働かされるそうではないか?」


「まあ、僕は真っ先にあきらめましたから。少しくらい手伝いはしますよ」


「難儀なことだな・・・」


「まったくです」





そして、ナオ殿の言う、あの娘達の攻撃が始まり・・・


地獄とは、こういう光景なのかもしれない・・・・


双眼鏡というのを覗くのをやめて、自分の目で見てみるが

小さく見えるだけで、大して変わらないモノが見える


「これが、ヒトに起こせる光景なのか?」


12本の柱の様なモノが次々に飛んで行き湖の場所を目指して落ちてゆく


色々な赤いモノがはじけ飛んで、霧を消し飛ばした後に残ったのは

湖だった窪みにいる赤いナニカ・・・


次は前に見た炎の雨を降らせるモノだ。


それが次々に飛来して、大地には赤いウネリの様なモノが生じている。


何本かわからない、立て続けに柱が湖に落ちて弾け飛び

さらに霧が消し飛んで湖のおよそ半分が見えるようになっていた・・・・


「赤い・・・蠢く沼?」


あの美しかったルゼル湖の面影は、もう残っていない。


あれは、もう湖などでは無い・・・蠢く沼の上に、赤い炎の雨が落ちて行った。




沼の上で次々に花が開く様に炎の雨が広がっていく


それに応えるように大地を覆う赤いウネリが大きくなっていった。






「綾女、弾着位置を奥に500修正」


そして、私の隣では冷静な声で指示を出す少女の姿があった。


「紗希、風で右に流れた、次はチョイ左」


「真輝、そっちは照準固定で、何もしなくても弾着範囲は結構広がる」


「綾女、手前に1000修正」


しばらくすると、湖の上の霧は晴れていた。

しかし、そんな事は、少女は淡々と指示を出していく


「紗希、少し手前を狙える?」


「真輝、奥300辺りを重点的に」


「綾女、左200手前400」


隣にいた、同じくらいの歳のメイド服の少女が声を掛けた


「ツバキさん、赤い霧が湖の内側から濃くなっていきますね?」


指示を出していた少女の口元が笑った気がした。


このような少女たちを率いている、ドラゴンスレイヤーか

ナオ殿が言う ”変” という程ではないと思うが?


ナオ殿に会った時に、そんなに念を押す程はしなかったぞ・・・と

肩を叩いておいた。





午後からの指示役は、見た目は華奢で可憐な少女にしか見えない・・・・が


「さあ、ひとかけらも残さず、焼き尽くすのよ!!」


「微塵ものこさず(霧を)吹き飛ばして!!」


「のこのこ顔を出してきた事を後悔させてやる!!」


「フフフフフ、対戦車榴弾HEATの威力見せてやるわ」


「中身をぶちまけろ!!」




なるほど、これがナオ殿の言っていた、

この少女とは少し距離を取ろう・・・・




そして、陽が落ちてから。呪姫様の指示で明りが打ち出される


環状山地リングの内側が、まるで、昼間の様に明るくなった。


「ああ、照明弾に照らされたフィールドに、降り注ぐ焼夷弾ロケットの雨」


「ああ、そうよ。なんでリストにカメラが無いの? こんなの永久保存でしょ。

 みんな、今夜からカメラを探すわよ。

 リストの中にカメラらしきモノを見つけたら即報告ね」


よくわからない言葉を呟きだした・・・そして


「長谷川さん、今の話、そっちに帰ってから、ちゃんと聞かせてもらうね」


ナオ殿、よくわからんが・・・君の無事を祈ろう







【ナオ】


「ねえ、サキさん、ちょっと聞きたいんだけど、いいかな?」


「何かな? 長谷川さん」


「この間、言ってた気密処理をした装甲車って、結局あったの?」


「まあ、あったというか・・・無かったというか・・・どうして?」


「いや、この攻撃の後、あの赤い雲海が消えて、もし、あの中に入るなら、

 その気密処理をした装甲車の方が良いかなと思って、

 結局リストの中には無かったのかな?」


「実はね・・・マルスって、その気密処理というか、対BCRフィルター装備の車両だったの」


「それじゃ、あのマルスって赤い雲海の中に入っても大丈夫だったかもしれないんだ」


「乗員3人だし、あの中で何時間保つか分からないけど、他の車両よりは安全性は高いと思う」


「それじゃあ、もしあの中に入る時はマルスを使うかな?」


「さすがに長距離攻撃専門の車両で、あの中に入るのは怖いかな? ちょっと待ってね。みんな~ 集合!!」


西園寺さん、一条さん、早乙女さんに声を掛けて集める。


「対NBCフィルターがもしくは対NBC対策がされている車両を、リストからいくつか出してみて、実際に現物の内部を確認してみましょう」


4人で集まって、よく解らない話し合いをしている・・・そして


「長谷川さん、この4台を出して貰えますか?」


サキさんのリストに4つ〇がついていた。


【ストレージ】 ヴォン♫


4台の鉄の箱を被った車両が目の前に並び、1台づつ色々なパネルやハッチを開けては4人で相談している・・・・


「結局、見つかったのは、この1台だけね」


サキさんが、の大砲をつけた、小型の戦車を指さした。

大砲?に並んで取り付けられた剥き出しのミサイルが

ミリタリーに詳しく無い僕にも古い時代を感じさせる。


「長谷川さん、これが BMP-1歩兵戦闘車、乗員3名、後ろに歩兵を8人も乗せられる、ソビエト連邦で初めての歩兵戦闘車です」


小さな大砲の説明や、ミサイル、砲台と後部席の両側に機関銃がついている事なんかを説明されたけど・・・


「・・・サキさん、やっぱりマルスで行っちゃダメかな?」






※対NCBフィルター N(核兵器)C(化学兵器)B(生物兵器)汚染地域での活動を想定した気密処理が行われています。

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