第2部 第22話 対蜃竜作戦会議
アイロガ王国 王都オリハガーダ 王宮内会議室
昨夜は、赤い粘液と目玉が夢に出てきて、よく眠れませんでしたが、
それは、僕だけだったみたいです。
テーブルの上には
「サキさん、なぜ手榴弾なのかはあえて聞かないけど、あの赤いのと黒いの、
もうあれが
あれだけのロケットと榴弾の中でも生きてたわけだね」
「紗希ちゃん、あの黒いフジツボみたいなの、何ヶ所か割れてたね、あれが
「いや、椿、あの2日間、155mm
それで有効だったのが、あの何ヶ所かというのは無理がないかな?」
西園寺さんが ”あくまで想像だけど” と前置きしてから
「もともと、全部、土の下に埋まってたんじゃないかな?
「そこに
「綾女ちゃん、155mm
「口径の5~8倍を貫通するって聞いた事があるわね、それだと75cm~120cmの装甲を貫通するはずだけど、分厚い土の層やあの黒い外殻相手ならどうかしら? 貫通力に関してはTOWミサイルと大して変わらないんじゃないかな?」
「狙うとしたら、黒いフジツボか、その周辺部分だね。まずは、霧を押さるのが前提だけど」
「紗希ちゃん、この
サキさんが地図の上の手榴弾を少し持ち上げて、コンと音を立てて
同じ場所に置き直した。
「有効な攻撃方法を考えると、
「おいおい、確かにアレなら地下30mまで貫通するけど、そもそもリストに無いだろ?」
「はいはい、紗希ちゃん、もしリストにあっても、アレを使うなら爆撃機とパイロットとついでになが~い滑走路が必要よね」
「まあ、使えないのも分かってるけど、近づかずに土の中を攻撃する方法か~」
話が行き詰まってきているようなので、この機会に気になっている事を聞いてみた。
「サキさん、僕達が見た赤い粘液と黒いフジツボだけど、赤いのが本体かな? それとも黒い方だと思う?」
「なんせ”
「
「あれも確か、古代中国で竜かハマグリで揉めてませんでした?」
「そんな話だったっけ? あの甲殻竜みたいに、黒い殻ごと地中から立ち上がったりしないよね?」
僕の頭の中には、まだアノ甲殻竜のイメージが強烈に残っている、
あのフジツボの集合体は、僕には甲羅にしか見えていない。
「いくらなんでも、無理だと思いますよ? 上に乗ってる土砂だけで、数万とか数十万トンあるんじゃないですか? まあ、立ち上がって土砂が無くなれば
「赤い霧を使って、生き物を呼び寄せる事から考えても、動けない?」
「その可能性もありますね。赤い粘液は触腕でしょうか?」
「触腕って蛸なんかの獲物を捕る為の腕だったっけ?」
「眼みたいなのがありましたし、どこかに耳もあるのかな? 腕以外に感覚器官も兼ねてそうですね」
「アレ・・・教会からも出てきたよね」
「そういえば、どうして教会だけだったんでしょう? 地下で繋がってるとか?」
「教会と湖跡が地下で? そういえば、ミーラがもう一ヶ所見つけてたよね」
「はい、ギワノ山の裾野の霧が消えていた場所に、確かに赤いモノが見えました」
「霧が消える場所、地形的に風が吹き込む場所か、もしくは吹きだす場所かな?」
「吹きだすだと、紗希ちゃん、あれかもしれないね、富士に行った時に聞いた風穴」
「温度の関係で、風が吹き出す洞窟だっけ?」
「その洞窟の中にも、赤い粘液がいる可能性があるわけですか?」
「余計に殲滅は難しそうだね」
色々と話をしている内に、サキさんが何か思いついたようだ。
「あまり綾女の案を使いたくは無いんですが、こういうのはどうでしょうか?」
「西園寺さんの案?」
「紗希・・・私は何も言ってないけど?」
バレットの弾丸2本を指さしながら
「まずは、この2基のロケット砲で赤い霧を払います、それぞれ2回も撃てば大丈夫でしょう」
「それは、今まで通りだね」
残ったバレットの弾丸の横に、どこから出したのか、新たな弾丸を2本立てて
「綾女の提案通り、M109を3台並べて、湖の底が抜けるまで155mm
「紗希・・・私はM109を3台並べるしか言ってないわよ」
今度は、山の上に置いた
「それから、120mm迫撃砲を山の上に並べてグズグズになった外殻の上に
榴弾を落とし続けます」
「それで、大丈夫かな?」
「いえ、この迫撃砲は赤い粘液を外に出さない為の牽制です。そこまですれば殻から出てこれないでしょう」
「それが牽制なの? それじゃあ本命は?」
「別働隊が目標2kmまで近づいたところで、見えている黒い外殻に向けてTOWミサイルなりジャベリンなりミランなりを撃ち続けます」
「じゃべりん? みらん? なにそれ?」
「リストの中にあった、とってもいいモノです」
「まあ、とにかく、ちゃんと見ながら攻撃する訳ね?」
「長谷川さん。できれば、一緒に戦車砲も撃ち込みたいのに、リストに戦車が見つからないんです」
「ごめんね、それについては何とも言えません」
「ただ、問題もありますね」
「何かな?」
「人員です。迫撃砲の扱いはドワーフさんが慣れてきましたが、それでも
それと、目標から2kmの位置で、あの教会のように湖以外の方向から襲われた場合を考えると、ミサイルの発射役と装填役以外に車両の守備要員が欲しいですね」
「迫撃砲弾はあらかじめ山の上に準備しておくとして、僕が目標近くに居れば、車両を出して逃げ込めるし、ミサイルの弾切れも無くなるよね?」
「それはそうですが・・・・・・」
「キーラは前から
「ん」
「おそらく、大丈夫だと思います」
「それじゃあ、2人に迫撃砲はまかせようか?」
「紗希、今回私は車両の守備要員に廻るわ」
「綾女が守備に廻ってくれるの?」
「わらわも一緒に守備に廻ろう」
「そうなると、紗希と椿がミサイルの発射担当で、私と長谷川さんが装填担当かな?
2人いればミサイルの装填作業はだいぶ楽だと思うよ」
「サキさん、この5人で行くわけだけど、車両はどうしようか? またBMP-1?」
「赤い霧対策を考えるとBMP-1なんですが、昨日は1回もハッチを閉めてないんです。何かあった時に、ハッチを閉めた状態で逃げられるかどうか」
「小さな覗き窓からだけの視界になるわけか、あの教会の異変だと気が付けて無いかも。周りがよく見えないのは怖いね」
「今回は、車両の位置が湖畔からは、少し離れた場所になりますから、赤い霧の警戒だけしておいてハンヴィーのTOWミサイル搭載車両で行きましょうか?」
「わかった、サキさん、後でどのハンヴィーか教えて」
「了解です」
翌日から、今回の作戦準備に取り掛かった。
ウーバン王に、今、M109を設置してある周辺に、もう2基分の整地をお願いして。それと今回は、ロケットコンテナ用に2t程の荷物を積んでも大丈夫な荷車を4台用意してもらう。
環状山地の峰に登って120mm迫撃砲の隣に、新たに2基の迫撃砲を設置した。
近くにいくつもの天幕が張られ、その中にストレージから取り出した迫撃砲の砲弾を並べていく。それが合計600発 およそ12tだそうだ。
その作業を終えて山から降りてくると、M109周辺の整地が終わっていた。
【ストレージ】 ヴォン♬
そこに、ストレージから、新たにM109を2台を設置した。
「ナオ殿、荷車の準備が出来たぞ」
「ウーバン王、ありがとうございます。すぐにロケットコンテナを乗せに行きます」
荷車の上にロケットコンテナを出していると、今度はサキさんに声を掛けられた。
「長谷川さん、M966のハンヴィー出して」
僕が、そのハンヴィーを取り出すと
「あと・・・装填用のTOWミサイルとジャベリンとミランを・・・・」
「サキさん、ごめん、わからないから、リスト指さして教えて」
「長谷川さん、ハンヴィーに積むのでM202のロケット弾も出してください」
「西園寺さん、どっちのロケットか教えてくれる?」
もう少し、準備にかかりそうだ・・・
※
航空機から落として30mの土の層または6mのコンクリートを
貫通してから爆発します。
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