第6話 あの日の真実・・・
〖マカ〗
ナオは眠っているな・・・
【カース・ミューテーション(変質)】
歴代の王が使ってきたギフト、【デボリューション(継承)】を変化させていく。
この【ストレージ】をはじめとするギフトの継承者を、”器の王冠の装着者” から ”
しかし、このギフト【デボリューション(継承)】。おそらくは初代の王が呪いの中で発現させたと考えるのが自然・・・なんだが、あまりにも都合の良すぎるギフトに何か作為的なモノすら感じてしまう。
すまないな、ナオ、後の事はよろしく頼む。詫びではないがストレージの中に蜜菓子を入れておいた。蜜菓子に合いそうな茶も準備してあるから楽しんでくれ。
アートが皇国から戻ってきたら、蜜菓子を入れた隠しフォルダーの開け方も含めて全部説明するから・・・
・・・・・・しかし、この後、
私が生きている内にアートに会う事は出来なかった。
オーランド王国 王宮 謁見の間
『ねえ・・・マカ・・・マカ・・・聞こえる?』
どこかで、ナオの声が聞こえる・・・・私は・・・玉座に座ったままなのか?
身体が酷く重く感じる・・・
「ナオ・・・私はどうしたんだ? 」
『やっと目を覚ました。ねえ、マカ聞いて・・・何か変なんだ』
「何か変? アートは?・・・いや、アートは皇国に行ったままか?
仕方ない・・・他に誰か呼ぶか?」
『けっこう大きな声で呼んでみたけど、誰も来てくれないんだ。まるで、この王宮に誰もヒトが居ないみたい・・・』
「ちゃんと給金は、支払われているはずだが? 何か待遇面で不満でもあったのかな?」
『そういうのは、もういいから。それより気がついてる? 玉座から動けないんだよ』
玉座のひじ掛けに手をついて立ち上がろうとするが、背中と尻が張り付いて動けない。
「ナオ、どうしたんだ・・・これ?」
『マカ、自分の手を見てみて』
真っ黒な手の形をしたシルエットが見える
「ん? なんだこれ?」
『なんか全身が、この黒いのに包まれているみたい。僕が気がついた時は、背中も尻も腕も玉座に固定されて動けなかったんだ。色々とやってみて、結局【カース・ミューテーション(変質)】を使って両腕だけはひじ掛けから解放できた』
「・・・という事は、この黒いのは呪いなのか?」
『そうだと思う。それよりも僕が背中を解放するから、マカは尻をお願い。僕が目を覚ましてから、さっきマカが目を覚ますまでだけでも、たぶん2週間くらい経っているのに・・・誰もココに来ないんだ』
【カース・ミューテーション】
「尻が貼りついているな・・・ナオ、コレよくはがせたな」
【カース・ミューテーション】
『頑張った、腕が動かせないとストレージからモノが取り出せないんだよ。何とか右手を解放して蜜菓子を口に入れたんだ』
「それは、大変だったな」
『それと3時間ごとの痛みは相変わらずだけど、多分全身の痛覚以外の感覚も鈍くなってるんだと思う』
「思う? 何かあったのか?」
『ゴメン、僕にも3日に1回くらい意識が無くなる時間があるみたいなんだ、3日前にあったから、そろそろ来ると思う。それに前は蜜菓子の味を感じてたけど、今は何の味も感じなくなっている』
「そうか・・・アートも居ないよな?」
『アートさん? 先月皇国に行ったままだよね? まあ、アートさんどころか誰にも会ってないけど』
「尻の方は、まだかかりそうだな・・・・実はな、私が死ぬ前に、ナオに伝言を残すつもりだったんだ」
『こっちも、まだまだだね・・・伝言?』
「ああ、実は・・・アートの予想では、私の死と同時に君が元の世界に戻れる可能性が一番高いらしい」
『僕・・・帰れるの?』
「ああ、もっともこの世界では、君が無事に帰れたかまで、確認する方法はないんだけどね。それで、ナオにちょっとしたプレゼントを渡そうと思って、アートと準備をしてたんだ」
『ちょっとした・・・プレゼント?』
「ああ、とっても便利なストレージをあげるから、悪いけどストレージと中身と一緒に、君の世界に持っていっちゃってくれるかな?」
『ごめん、ストレージは欲しいけど、あんな物騒なオモチャ箱要らな・・・』
その時、身体の中で何かが弾け、衝撃が駆け抜けた・・・と思う。
身体の中で何かが弾けて、またしても私は意識を失っていたらしい。
夜なのか周囲は真っ暗で見えない・・・
「ナオ? ナオ? 聞こえないのか? 意識が無いのかどっちだ?」
これが3日に一度ナオが意識を失っているかもってヤツか? しょうがない、ナオが気が付くまでに尻と背中をなんとかしておくか・・・まずは尻からはがすぞ。
【カース・ミューテーション】
結局、ナオは周囲が明るくなって、しばらくしてから目を覚ました。
『マカ・・・?』
「おはよう、ナオ。君の寝ている間に尻と背中ははがし終わった。これでなんとか立てそうだぞ」
『ありがとう、僕はどれ位意識が無かったの?』
「わからないが、昨夜、私が目を覚ましてから、今は朝かな?」
『それじゃあマカ、王宮の中を探してみようか・・・』
玉座から立ち上がろうとした時、身体に違和感を感じて・・・・
私はとっさに、両手で口押さえて再び座り込んだ。
《マカ、どうしたの? なんで口を押さえてるの?》
〖ゴメン・・・口からナニカ出そうなんだ・・・・〗
《げっ、マカ、まさか昨夜、お酒飲んだの? 飲みすぎじゃない?》
〖ちっ、違うぞ、きっと呪いだ〗
《何もかも呪いのせいにするのは、大人としてどうかと思う》
〖いや、昨夜はな、ナオの言うように本当に酒の味も感じないのかと思って、ちょっと口を付けただけだ。本当に飲んで無いから〗
バターン
今までこの王宮で聞いた事が無い、強引な扉の開閉音だった。
《なんなの?》
〖やっと来たか・・・・って、誰だ?〗
そこに居たのは、弓を持ったひょろいおじさんと斧を持ったでかいプロレスラーと剣をもった金髪の超絶な美人さんだった。
「マカ王だな?」
ひょろいおじさんの問いかけに、マカは答えない。
《マカ、どうしたの?》
〖だから、口を開けるとナニカ出る。国王としてそれはマズイ〗
「聞こえないのか? キサマは何故、呪いをばら撒くのか?」
「ちょ・・・」
マカが口を開けた瞬間、何か黒いモノが噴出して、ひょろいおじさんを掠めるように飛び出した。
〖ヤバイ、口からちょっと噴き出した。よかった、弓の人には当たらなかったみたいだ〗
《マカ、呪いをばら撒くって?》
〖わからん〗
「マカ王よ、なぜこの国を滅ぼしたのだ?」
でかいプロレスラーの言葉に、僕は声を出してしまった。
『マカ、滅ぼしたって・・・・』
僕が思わず口に出した事で、口から出た奔流が今度はでかいプロレスラーにかかってしまった。鎧が黒く変色したのを見て、プロレスラーが叫びをあげながら鎧を脱ぎだす。
僕は慌てて、両手で口を押える。
《マカ、何か大変な事になってるみたい》
〖王宮に人がいないのは、そのせいか。アート以外めったに人が来ないので、こんなモノだと思っていたが〗
「マカ王、あなたは何故、呪いを国の外まで広げようとするの?
この世界を滅ぼすつもり?」
金髪の超絶な美人さんの声に、絶対に答えるわけにはいかない。
≪いや、口を開くと噴き出すから、話せないんだが?≫
〖ねえ、マカ、あの金髪超絶美人にすっごく見覚えがあるんだけど?〗
「やはり何も答えないか、我が名はミラセアクアラ。マカ王、覚悟!!」
僕とマカが混乱している内に、超絶美人はスルスルと近づいて、
次の瞬間には、マカの右胸を剣が刺し貫く。
剣先が玉座に当たり、硬い音をたてた。
『ムッチャクチャ・・・痛い~』
〖あ・・・しゃべっちゃった〗
黒い奔流が、目の前の超絶美人に向けて噴き出した。
美人は奔流をまともに受けて倒れ、真っ黒な塊と化して横たわっていた。
胸に刺さった剣を、もがきながら無理やり引き抜いたが、急に身体にチカラが入らなくなって、その場に倒れてしまった。
倒れたまま、周囲の声だけは良く聞こえている・・・
「おい、ソレガノ、エルフだけが呪いを受けちまったな。こいつ確か王族の関係者だろ、上にどうやって説明する?」
「オレハン、俺に任せておけ、適当に歌を作ってばら撒くさ、俺達のいさおしの歌をな」
「しかし、この強烈な呪いだ、このエルフ死ぬんじゃないか?」
「ああ、馬がすぐに死んだあの呪いだ、普通は死ぬだろうな。だが、なまじ生き残って、こっちに来られても面倒か。そうだ、呪いの解き方でも探させるか? 絶対に解けぬ解き方をな」
「それは良い、どんな解き方にする? とりあえず殺生でも禁じてみるか?」
「
「それは、いい。絶対に不可能な解き方にしないとな・・・・」
《》ナオの声(マカだけに聞こえる)
〖〗マカの声(ナオだけに聞こえる)です。
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