第27話 シーサーペント

「えっ? 船が出せない?」


ところが、大急ぎで港町マーグナスに到着した僕たちが

ファイナ商会で聞いたのは

この港に起きている予想外の問題についてだった。


アマンダさんが言うには、

2日ほど前から湾の入り口付近にシーサーペントが居座って

船が出入り出来なくなっているらしい。


船が近づくと襲って来る為に、

現在、多くの船が湾の外で待っているが、

無理に港に近づいて沈められた船もあるらしい。


もう何日か居座るようなら、湾の外の船は数日かけてでも

他の港に避難する必要があるだろう。


シーサーペントは湾の入り口付近を悠々と泳いでいる様だ。

「アマンダさん、シーサーペントって確か大きな蛇みたいなモノだって聞きました。

ただ、めったにいないと」


「私も見るのは初めてです。遠目で見ても定期船の3倍以上の長さがありましたから

 あれは100m以上あるんじゃないですか」


「シーサーペントって、こんな時どの位居座いすわるの?」


「めったに出ないので、かなり過去に記録になりますが、

 ある島で周辺の魚を食い尽くすのに

 3ヶ月ほど湾に居座った事があるようです」


「3ヶ月・・・」キーラが呆然としている。


・・・これは仕方ないよな

「サキさん、何かいい方法あるかな?」






ギルドにシーサーペントを討伐に挑戦する話を通してから、


サキさんに言われてストレージから取り出したのは・・・


「サキさん、これ?」

どうみても、戦車にしか見えないけど。


「違いますよ、これはM109自走砲です。

 前に使った迫撃砲の親分みたいな物ですよ」


「迫撃砲って、子分なんだ」


「射程距離と威力はそうですね」


「前に使わなかったのは何故なの?」


「さすがに自走砲の取り扱い方法がわかりません、

 これの取り扱い説明書マニュアルがあれば欲しいです。

 これは私が初見で使える物では無いですね。

 今回、相手からの反撃がありませんから、調


「・・・そうなんだ」


「ですから、使い方を調べるので、ちょっと待っててくださいね」


「わかった、サキさんよろしくね」


遙か彼方を見ると、確かに湾の入り口付近を泳ぐ青白い蛇のような影が見える。





そして翌日


「お待たせしました、

サキさんが喜色満面の表情を浮かべ現れた。


「いや~楽しみです」


「それでサキさん、僕は何をすればいいかな?」


「長谷川さん、すみませんが砲弾の装填をお願いします」


「了解、指示お願いね」


「もちろんです、さあ中に入ってください」


自走砲M109の中に入る

バカみたいに大きな砲弾?を指さして。


「まずは、これが弾頭です信管は私が取り付けてあります」


それから、赤い丸の描かれた筒を指さして

「これが薬嚢、ようするに弾頭を飛ばすための火薬です」


「別々なんだね」


「はい、一緒にすると重すぎて持ち上がらないので別々になってます」


「えっと、冗談だよね?」


「腰を痛める人が多いそうなので、注意してくださいね」


「本当みたいだね」


「まず、ここを開けて装填レールをセットします。

 それから、このレールの上に弾頭を置いてください」


いわれた通りに弾頭を持ち上げてレールに置く


「出来ました」


「次にこのスイッチを押すと砲弾が押し込まれます」


ボシュ


「次に薬嚢を砲弾のうしろに手で差し込みます」


「こうかな?」


「はい、それでフタをしてロックします。

 そして、こういう風に発射装置フタを取り付けます。

 これで装填は完了です」


「オッケー、手順は大体わかったよ」


「後は、こちらでシーサーペントまでの距離を測定、

 シーサーペントに照準を合わせますので、

 合図したら、このを引っ張ってください」


「このヒモ、引き金なの?」


「伝統的にそうらしいですよ、

 クリスマスのクラッカーみたいですね」


「こんな物騒なクラッカー、嫌すぎるよ」


サキさんが、ファインダーを覗いて照準操作をしている。


「それじゃあ、長谷川さん・・・合図したらひっぱってくださいね、

 いきますよ~~~せ~の~今! 」


言われた通りにヒモを引っ張った。


ど~~~~ん

すごい音が響き渡った。






「あれ?」


サキさんがファインダーを覗いたまま、疑問の声をあげた。


「サキさん、何かあった?」


「いや、そんなはずは」

 何か焦った様子でファインダーの周りを操作している。


しばらくして、サキさんが

「はあ~」と深くため息をついた。


「サキさんどうしたの?」


「シーサーペント・・・・・・今の1発で死んじゃったみたいです」


「・・・・・・・・・・・」


「シーサーペントの根性無しめ」


「せっかく説明受けたの無駄になっちゃったね」


「次の時に使いましょう」


自走砲の外にでて、ギルドの職員に声を掛ける


「すみません。おそらく、あのシーサーペントは死んでいると思いますが、

 念のため確認をお願いします」


船を出して確認に行ってくれるようだ。






「サキさん、自走砲ってすごい威力だね」


「本当ですね、って使用禁止されるだけありますね」


え?


「サキさん、あれクラスター弾なの?」


「リストには155mmHE ICM-DPと書かれていたので、

 おそらくそうだと思います」


「クラスター弾って何で使用禁止になったんだっけ?」


「あれ、何十という小さな爆弾の集まりなんですが、

 一定数の不発弾が残ってしまって、

 地雷と一緒で戦後復興に問題が出る、

 大変迷惑な兵器だからですよ」


「じゃあ、使っちゃダメじゃない!!」


「コレは恐らく大丈夫ですよ、

 ストレージの中の物は不発どころか

 作動不良さえ起きない謎アイテムなんですよ、

 こんな変な所だけ不発弾にならないでしょう」


「それでも万が一があるなら止めておこう、

 僕達で不発弾の確認が出来る訳じゃあ無いんだから」


「わかりました、威力があり過ぎますし、今後は封印します」


「くれぐれも、お願いします」


そうしている内に確認に行った船がズタズタになった

シーサーペントの一部を曳いて帰って来た。


これでやっとマルザムに行ける。


あれ? 今湾に入って来た船の帆、あれ見覚えがあるな

あの船【麗しきカーミラ】だ。






【麗しきカーミラ】の入港を待って、髭の船長に声をかけた。


「お~い、マイラス船長」

「なんだ、ドラゴンスレイヤーの兄さんじゃないか」

「船長、マルザムに行くなら乗せて行って」

「おお、あんた達が一緒なら安心だ、ぜひ乗って行ってくれ」

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