第1部 エピローグ 最悪の想像
そうして数日後、僕たちは無事【麗しきカーミラ】の乗客となっていた。
海風が実に気持ちいい。
さ~て、
「キーラ、
もう奴隷でいる必要も無いから解放で良いかな?」
「だめ、キーラはナオの奴隷、ミーラに奴隷の仕事を教える」
「いや、キーラ、君、奴隷の仕事って何するの?」
「まかせて、ナオの1番の奴隷だから大丈夫」
「キーラ、その1番の根拠は何かな?」
「キーラ、ナオの最初の奴隷、だから1番」
キーラが胸を張って宣言する。
「キーラよ、すまぬがそれは違うぞ」
「ミラセア様、何?」
「ナオのギルドカードを見ればわかるが、
一番初めに奴隷になったのは、わらわじゃぞ」
「えっ?」
ああ、キーラが泣きそうだ、話題を変えよう。
「そういえばサキさん、ハンヴィーの
「それが見つからないの、どうしよう?」
ハンヴィーはカンカレラから王都に行く途中で燃料切れになって
ストレージに戻した。
その後は、ハンヴィーに比べると小さな車に乗り換えている。
なんでもUAZ-3151という、ロシア製の車らしい。
幾つか車を出してみて、使えそうなのがこれだけだった。
なんとこれ、5人乗れる上にガソリンが使えるんだ。
僕には抱えていた問題点が全て解決した気がしたんだけど・・・
「当面、あの小さい車で良くない?」
「カッコよさが足りないです。テンションが上がりません。
長谷川さん、リストの続きお願いします」
せっかくだから、この機会に話してみようか・・・・
「リストと言えば、サキさん・・・実はね。
リストに赤いモザイクで見えない文字があるんだ。
みるからに警告なんで、今まで言えなかったんだけど」
「へー、そんなのがあるんだ。でも多分言わなくて正解ですね。
長谷川さんが書いてくれたリストの中にも
けっこう危ないのがあるから、私も読むの避けている位だし」
「え~、そんなのがあるの危ないな」
「まあ、全く関係のない冷蔵庫とかスキューバダイビングの道具とかも
ありましたけどね」
「冷蔵庫? いいじゃないの」
「使うなら、発電機が回しっぱなしになるから、かなりうるさいですよ」
「それはダメだね」
「でも、長谷川さん」
「何、サキさん」
「リストの中にNBC防護服があったんだ」
「何、それ?」
「核兵器・生物兵器・化学兵器 が使われた所で着る防護服」
・・・・・本気で身体が硬直した
「うわ~ ごめん。今、背筋がぞっとした」
「だから、それに類するものが入っている可能性もあるからね。
その赤いモザイクの文字、絶対に手を出しちゃだめだよ」
「うん、わかった。それは想像した中で2番目に悪い内容だな」
「長谷川さん、もっと酷い内容を想像してたの?」
「想像と言うか、今でもたまに夢に見るんだ」
「聞きたくないけど、聞いちゃおう・・・どんな夢」
「ある日、請求書が送られて来るんだ」
「へっ? 請求書?」
「このストレージの持ち主から・・・今まで僕たちが使った分の明細と一緒にね」
あ、サキさんの顔色が青くなってる。
「それは、さすがに思いつかないわ。最悪の想像だね」
第1部 完
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