第3話 検証

とりあえず、安全な場所でストレージの中に何があるか確認しないと。


宿に帰ってから・・・いやダメだ、何が出るか判らないんだ

もし出した物が大きかったり、重くて床が抜けたら大騒ぎになる。




しかし、安全な場所か? 街が見えてすぐに逃げ帰れる方がいいか?


僕は、街のすぐ北にある森にやってきた。

ここなら何かあれば街まで逃げ帰れるだろう。


少し情けないが、大声で叫べば誰かムキムキが来てくれるかもしれない。


そう考えて、それでも周りに誰もいないか確認してからストレージを開けた。


【ストレージ】 ヴォン♬


頭の中のインデックスを見てみる、英語かな?英文字と数字だけだ、

ありえないくらい大量な上に非常に読みにくい。


しかし、これが僕の命綱になると自分に言い聞かせて、頑張ってみる。


「Handgun ・・・ハンドガン、拳銃か」


一つ選んで、取り出して見る。黒くて重たい金属の塊が現れた。

手の中の冷たさと、ずっしりとした重さがコレが本物だと言う事を実感させる。


「・・・・・取り扱い説明書・・・無いの?」


色々いじってみた、ボタンを押すと弾倉というのか、弾を入れるのが出てきた、

中に弾は入って無いみたいだ。


拳銃の側面に入っている刻印や弾倉の文字をヒントに

ストレージから弾丸を出してみる。


たぶんコレかな? 


45ACPと書かれた100個入りの紙箱を取り出した。


箱を開けて、弾を出して弾倉に押し込む、弾倉を差し込んでみる。


「さて・・・・・これからどうするんだ?」


試しに引き金を引いてみるが発射する気配は無い。


色々ガチャガチャやっている内に、拳銃の上の方がスライドして、

弾がセットされるのが見えた。


大きな樹に向けて引き金を引いてみる。


大きな音がして、拳銃を持っている手が跳ね上がる、

弾は当たらずに樹をかすめたようだ


「よくわかった・・・・・僕には無理な事が」


自分でも、今、どう操作したか分からない物を、

逃げる時に使えるか?  それに重すぎる。


パニックを起こして拳銃を投げつけている未来がありありと見えた。


「・・・・別のにしよう」


Handgunをストレージに放り込んだ。


あ~でもない、こ~でもないと、色々とストレージから出していたが、

とりあえずコレに決めた。


とりあえず、、5発弾を入れた回転式拳銃というやつだ

日本の警察官も似たようなのを持ってた気がするし、これでいいだろ。


「名前はS&W M36か、これを覚えておけばすぐにストレージから出せるな」


5発撃ってみた、たぶん、これでいいだろ。

「さて、帰るか」







ギルドに到着した僕は、ギルドの受付に並ぶ。


今度は男性が良いな。僕の番が来た

「すみません、採取したスイルベリーと情報提供があります。

 情報は、私の特殊技能についてなんですが

 ギルドに情報を提供した場合

 他の冒険者に秘密にすることは出来ますか?」


「そういう方も、いらっしゃいますから隠す事はできますよ、

 ただギルド職員とギルド上層部には知られますから

 機密という事なら開示しない方が良い場合もありますが?」


「それで、十分です。どこでお話しましょうか?」

「では、裏口から解体施設がありますので、どうぞ」

「はい、よろしくお願いします」


裏口から別の倉庫の様な所に通される。


「ここなら、他の冒険者はいません」

「はい、まず特殊能力ですが、僕は大量の荷物を持てます」


【ストレージ】 ヴォン♬ 「スイルベリーです」


およそ、籠3個分のスイルベリーを取り出す。


「なるほど、大量ですね」


「はい、それとさっき森でこれと遭遇しました」


メインベアを取り出す


「メインベアですか、よく倒せましたね」


「いえ、逃げるのに間違って樹にのぼってしまって一緒に落ちそうになって、

メインベアだけが落ちました。おそらく二度とできません」


「なるほど、この特殊能力を他の冒険者には秘密にするわけですね」


「そうです、スイルベリーとメインベアの買取もお願いします」


「わかりました、査定しますので、少し待ってください」


「査定出来ました、メインベアが金貨5枚 スイルベリーが銀貨5枚になります」


「はい、ありがとうございます」


これで、僕の所持金が合計で金貨8枚ほどになった。







バールキナ冒険者ギルド


「ギルド長、よろしいですか?」


「ん、カークかどうした」


「実はギルドのメンバーに特殊能力ギフト持ちが見つかりまして、

 その能力の検証をしたいんですが

 口の堅いパーティーって、今誰が来てました?」


「そいつのランクは? 戦えるのか?」


「いえ、Fランクですが、事務作業に定評があります。

 大量輸送に使えそうなギフト持ちです

 戦闘にはおそらく向いてません」


「だとすると、商隊の護衛に混ぜてみるか」


「ギルド間の書類配達に見せかけて、商品を持って行って貰いましょうか、

 何かありました?」


「荷物なら、今、大蜥蜴の肉の塩漬け樽が20個ほどあったろう、

 あれを持てるだけマーグナスに持って行かせてくれ」


「では、帰りに塩を同じ樽数買わせないといけませんね」


「そうだな、あっちに行くなら、トキラスの所のパーティーはどうだ」


「そうですね、あの人なら口止めしておけば大丈夫でしょう」


「ところでマーグナスへの商隊はあるのか?」


「まだ掲示を貼ってませんが、3日後に出る、サグナス商会のがありますね」


「サグナス商会ならいいだろう」


「では、トキラスさんとナオさんに話をしておきます」


「そうか、特殊能力持ちはナオと言うのか」


「はい、礼儀正しさでは商人でもめったにいないタイプですよ」


「そんな奴が、そんな能力持っているなら、

 持っていける量が多ければ、貴族相手をさせても大丈夫そうだな」


「はい、数字にも強いので安心して任せられますし」


「そんなに数字に強いのか?」


「決算時は各商会で取り合いになってますね」


「商会って、おい」


「そういえばそうですね、サグナス商会の仕事もやってます」




 ギルドカウンター


 【トキラス】


 「カークさん、俺を呼んでいたみたいだけど、なんだ?」


 「トキラスさん、3日後にマーグナスに向かう商隊の護衛大丈夫ですか?」


 「ああ、それなら大丈夫だよ」


 「あと、すみません、それに若い冒険者1人連れて行って欲しいんです」


 「なんだ? ワケアリか?」


 「いえ、内緒ですが、運搬のギフト持ちみたいなんで、

  ギルドでも、どれだけ持てるか調べたいんです」


 「そいつのランクは?」


 「一応Fですが、あまり戦闘は得意じゃないですよ」


 「まあ、若いのに変に暴れられてもなんだしな」


 「その辺は、問題ないですよ、表向きは、

  マーグナスギルドへ書類配達になってます。

  他所に取られると困るので内緒でお願いします」


 「あいよ、荷主にも他のメンバーにも黙っとくよ」


 「ありがとうございます」


 「それで、若いのの名前は」


 「ナオです」





【ナオ】


 ギルドから呼び出されて、カウンターにやってきた。


 「ナオさん、待ってましたよ」


 「カークさん、お呼びですか」


 「はい、ギルドから依頼なんですが、

  3日後に出発する商隊の護衛に入ってもらいます」


 「え? 私がですか?」


 「すみません、ギルドで内々にナオさんの能力について知りたいとなりまして。

  表向きは、マーギナスギルドへの書類配達ですが、

  実際にはナオさんの能力検証です」


 「なるほど、何を運ぶのですか?」




 ギルドの裏の倉庫に案内される、そこにいくつもの樽が置かれていた。


 「こちらです、この樽をいくつ運べますか?」


 「入れてみますが、中身はなんですか?」


 「大蜥蜴の塩漬けです、港町から外国に運ばれます」


 【ストレージ】 ヴォン♬


  1つづつ樽を入れていく・・・・20個か?


 「全部入りました」


 「すごいですね、まだ大丈夫そうですか?」


 「おそらく大丈夫です」


 「でしたら、帰りは塩の樽を20以上で40樽まで入るだけ買って来てください」


 「了解です、ところで、どこの商会ですか? 他の冒険者は?」


 「はい、サグナス商会です、あと冒険者はトキラスさんの所です。

  すみませんが、トキラスさん以外はナオさんのギフトについて知りません。

  トキラスさんには口止めしていますので、くれぐれも内緒でお願いします」


 「もちろんです」


 僕にとっても命綱ですから。


 「では、3日後の朝ギルドに来てください」


 「すみません、カークさん、僕はマーギナスに行ったことがないのですが、

  馬車で何日位でしょうか食事は用意していったら良いのでしょうか?」


 「ああ、そうでしたね。

  マーギナスはこの街から南西方向にある港町です。

  マーギナスまでは馬車で5日です。

  食事は商会持ちで、帰りもトラキスさん達と一緒に

  サグナス商会が帰って来るのにあわせて帰ってきてください。

  あと、表向きの報酬は書類配達の金貨1枚、実際は追加で金貨5枚です。

  塩樽の代金は直接うちのギルドに請求されますので、

  マーギナスの塩商人に、この書類を渡してサインをもらってきてください」


 「わかりました」


 「そういえばナオさん、サグナス商会の仕事もよく受けていませんでしたか?」


 「はい、書類仕事はよく受けさせて頂いてます」


 「それなら、知っている方が来るかもしれませんね」


 「はい、護衛任務も初めてですし、けっこう楽しみです」







  さて、出発は3日後か、それまで何をしようか?


  と言う訳で、森に来ています。


  ストレージの検証中


  「Handgrenade ハンドグレネード? これって手榴弾だよな」





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