第2話 ストレージ

親父さんの店を出てから

僕は安宿に泊まって、冒険者ギルドの仕事を受けるようになった。


得意な書類整理は時期によって差が大きい、しかも大体依頼が重なる。


つまり暇なときは本当に暇になった。


そこで僕は、その暇な時に

今までやって無かった季節の採取依頼をやってみる事にした。


大きなかごを背負って、特定の木の実を取ってくる依頼だ。


もちろん野生動物が怖いので奥には行かない。


採取用のナイフ1本では、どっちにしろ逃げるしか無いんだけどね。







「さて、困ったどうしよう」うれしいことに困っている。


目的の果物のスイルベリー、目の前に


採取をはじめて・・・とりあえず、籠一杯になった。


担いでみる・・・うん無理だ、とてもじゃないが立ち上がれない。


さて、コレを置いていくのか、もったいないな。


「これがゲームなら、アイテムボックスやストレージに大量に持てるのにな」


その時 ヴォン と音がして僕の右前50cmに黒いもやが現れた。

頭の中にが流れ込む、急な事に驚いて僕は思わず頭を抱えた。


「何だったんだ、今の?」

前を見ると、未だに黒いもやが浮かんでいる。


「ゲーム」 変化は無い


「アイテムボックス」 やっぱり変化は無い


【ストレージ】 ヴォン♬ 今度は黒いもやが消えた。


「マジか?」


深呼吸をして、落ち着いてみる。


【ストレージ】 ヴォン♬ 黒いもやが現れた。


スイルベリーを1房摘んで、黒いもやに入れてみる

抵抗無く入って、頭の中のリストに

【スイルベリー1房】と表示された。


今度は木の枝を持って、黒いもやに差し込んで抜いてみる。

木の枝に変化は無い様だ。

意を決して、右手をもやに入れてみる、スイルベリーを意識すると

右手には1房のスイルベリーが掴まれていた。


「このタイミングで見つけた事を喜べば良いのか?

それとも今まで気が付かなかった事を悔やむべきか?

まあ、後悔はあとにして。輸送に問題が無くなった事を喜ぶとしよう」


中身の詰まった籠ごとストレージに入れてから、

全ての採取を終えるのに、もう2時間が必要だった。

さて、冒険者ギルドでもこんな事聞いたこと無いな。

とりあえず、そのまま人に見せるのは危ないから。


【ストレージ】 ヴォン♬

籠を取り出して、中身のスイルベリーを半分にする。

よし、これで担げる。

残りをストレージに放り込んで、ひとまずギルドに向かう事にした。





ギルドに到着して、受付に並ぶ。

僕の番が来た

「スイルベリーの買取をお願いします」

籠を渡す

「はい、確認させて頂きます」

「おねがいします」


「確認いたしました。スイルベリー 銀貨1枚と銅貨3枚になります」

感覚としては、銀貨1枚1万円、銅貨1枚千円だから、いい稼ぎだ。


「はい、それでお願いします」

「では、ギルドカードをお願いします」

「これです」

「確認しました。銀貨1枚と銅貨3枚 ご確認ください」

「確認しました。ありがとうございます」

「すみません、明日もスイルベリーの依頼を受けたいのですが大丈夫ですか?」

「はい、大丈夫です。では依頼書を出しますね」

「はい、お願いします」


よし、これで明日も大丈夫だな。

ギルドの帰りに行きつけの店で夕食をとって、宿に帰る。

水を貰って身体を拭いて今日はもう寝よう


横になって、明日の計画を考える

スイルベリーはすでに確保してあるから、ストレージの検証だな

どれ位入るか?、液体を入れたらどうなるか?

明日、色々考えながらやってみよう。






翌朝、籠を背負ってスイルベリーを探しに向かった。

森に入った所で、周囲に人が居ないか確認する。


「よし、誰もいないな。では」

【ストレージ】 ヴォン♬ 黒いもやがあらわれた。

「よかった、ちゃんと出た」

中からスイルベリーを出して、籠に8割程入れてみる。

それを、担いで・・・重いけど、なんとか担げそうだ。

これを持って帰るとして次はストレージの検証か


水とか入れたらどうなるんだろうか?

とりあえず、籠をストレージに仕舞ってから近くに水場を探してみる。


「無いな」


諦めずに、探していると



「スイルベリーの群生地・・・だと」

いつもは探しても見つからないのに、まあ、こんなもんか

諦めて、スイルベリーを摘みだした。

摘んだスイルベリーをどんどんストレージに入れていく

機械作業のように手だけが動いていた、でも僕は忘れていた

なぜ、スイルベリーの群生地が少ないのかを・・・・




「ギュオ?」

スイルベリーはメインベアたてがみぐまの大好物だと言う事を・・・


全長2mを軽く超える熊と鉢合わせした僕は、とにかく逃げた。


ありがたい事に手ぶらだ

メインベアは、意地汚く手に持ったスイルベリーを食べ終わってから、

こっちに向かって走って来た。


それでも、メインベアの方が早い。


パニックになった僕は、逃げる判断を間違えた。

そう、木に登っちゃったんだ。

木に登ってから気が付いた、何してるの僕、熊は木に登るよね


でも、もう変更は効かない、

僕は自分でも信じられない程の速さで上へ上へと昇っていった・・・


すぐに限界がくるのは判っているのに。


僕は何も持ってないよな、考えろ、採取用のナイフと

あと何を持っている・・・籠とスイルベリー

バカか僕は、他に何か方法は・・・あれ? ストレージの中 初めて開けた時に頭になにか情報が流れてきたよな


ストレージの中って空じゃなかったの? 思い出せ・・・るな、目次がある


下からメインベアが来てる、なんでもいいから出して落とせ


【ストレージ】 ヴォン♬


もやに右手を入れて、引っ張り出した。「何だコレ?」


何か大きな物が出てきて、落ちて行った。


 メキッ    メインベアに当たって一緒に落ちて行った。


バキャメキ うん酷い音だな。


下を見るとの下敷きになったメインベアがいる、動いていないな。


僕は今、左腕は幹に抱き着いた状態で右腕を伸ばしている状態だ、

ゆっくりと右腕をもどして、しっかりと幹に抱き着いて深呼吸する。


よし、降りるぞ。


そう決心して・・・ゆっくり、ゆっくり降りて何とか地面に降りられた


「何だこれ?」


メインベアを押しつぶしている物を見たが、なんだっけコレ?


「昔の望遠鏡かな? 筒と三脚と丸い板? どこかで見たような気がする」


とりあえず、ストレージに回収してみた


「ん? 81mm Mortar って何?」


次にメインベアをストレージに回収してみる、

「メインベア(死体)」これは普通に回収できた。


さて、どうしよう。ダメだ考えがまとまらない・・・


スイルベリーでも摘みながら考えるか


作業をしながら考える、これが一番考えがまとまるかもしれない。

メインベアは結構高額だった気がする、でもこんな目に会うのは勘弁して欲しい。

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